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スカイアクティブディーゼル 他とは何が違う? 欠点は無いの?

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スカイアクティブD_エンジン

素晴らしい技術だけど気になる点も

国交省と環境省が国内メーカーのクリーンディーゼル車両について、路上走行時の排ガス試験を実施し、このたびその結果が公表されました。

国交省と環境省、国産ディーゼルモデル6台の排出ガス路上試験結果公表

シャシーダイナモ上で実施された従来の試験結果と比較すると、NOx排出量が規制値の10倍を越える車両もあったそうです。

ところが路上走行時の排ガス試験においても、規制値をクリアしているディーゼルエンジンがありました。マツダのスカイアクティブディーゼルです。

トップ画像の出典: mazda.com

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目次
  1. スカイアクティブディーゼルとは
  2. なぜ圧縮比を下げるのか?
  3. 低圧縮比ディーゼルのメリット・デメリット
  4. 低圧縮比を可能にしたマツダの技術力
  5. スカイアクティブディーゼルの欠点

スカイアクティブディーゼルとは

一般的なディーゼルエンジンとくらべると、圧縮比が低いのが特徴です。

圧縮比を低くしたことで、排気ガスがクリーンになりました。また、燃焼圧力が下がるためにエンジンの内部パーツを軽量化でき、高回転まで気持ちよく伸びるエンジンになったとマツダは主張しています。

素朴な疑問

ディーゼルエンジンの圧縮比を低くすると良いことづくめですね。ではなぜマツダ以外の自動車メーカーは、圧縮比を低くしないのでしょう?

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なぜ圧縮比を下げるのか?

実はマツダ以外のディーゼルエンジンも、圧縮比は年々低くなっています。その流れの中でマツダが、極端に低圧縮比(14.0:1)のディーゼルエンジンを出してきたというだけです。

高圧縮ディーゼルの功罪

では高圧縮比のディーゼルエンジンに存在価値が無いのかといえば、そうとも言い切れません。基本的には、高圧縮比のエンジンの方がより多くの仕事を取り出せます。

ところが排気ガス浄化の観点からすると、高圧縮比のディーゼルエンジンは、NOxやススが発生しやすいという弱点を抱えています

黒煙の正体

高圧縮比のディーゼルエンジンでは、シリンダー内で空気と燃料が均一に混じり合うまでの時間が稼げず、シリンダー内に局所的な酸欠状態が発生し、燃料を燃やしきることができませんでした。

この燃やしきれなかった燃料がススになります。昔のディーゼル車がもうもうと吐き出していた黒煙の正体です。また、高圧縮比のエンジンは燃焼温度が高くなりがちなため、NOxが発生しやすいという問題もあります。

高圧縮に耐えるためのエンジン

高圧縮比にすると、燃焼圧力が大きくなります。よってそれに耐えられるだけの強度が必要です。

強度を上げるにはパーツの厚みを増したり、径を太くしなければなりません。よって高圧縮比のエンジンは、必然的に重くなります。また、パーツ同士が触れ合う面積が増えるため、摺動抵抗(滑りながら動く部分の抵抗)も大きくなります。

圧縮比を落とすのは、これらの問題に対応するためなのです。

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低圧縮比ディーゼルのメリット・デメリット

コロンブスのたまご

高圧縮比のディーゼルエンジンはリタード燃焼(点火時期を遅らせること。ディーゼルの場合は燃料の噴射タイミング)によって、NOxやススを抑制してきました。

しかしピストンが上死点(上まで目いっぱい上がった状態)を過ぎた後で燃料を噴き点火していたのでは、有効膨張比が低下し、せっかくの高圧縮比が活かせません。

だったら最初から低圧縮比にして、有効膨張比を大きくとった方が効率的です。

スカイアクティブD_有効膨張比

画像の出典: mazda.com

しかも低圧縮比だと着火までの時間を長く取れるため、ピストン上死点付近で燃料を噴射しても、空気と燃料が均一に混ざるまでの時間を稼ぐことができます。よって排気ガスもクリーンになるわけです。

そのうえ低圧縮比だと燃焼圧力が小さくなるため、エンジン重量を軽減できます。エンジンの軽量化は、燃費やハンドリングにメリットをもたらします。

湿気たマッチ

しかしディーゼルエンジンには冷間始動時用の余熱用グロープラグこそあれど、ガソリンエンジンのような点火用プラグはありません。低圧縮比のディーゼルエンジンは、湿気たマッチのごとく着火しづらいエンジンなのです。

低圧縮比だと未燃分が増え、排ガス中の炭化水素や一酸化炭素が増える問題もあります。圧縮比を下げるだけで全て解決とはいかないのです。

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低圧縮比を可能にしたマツダの技術力

燃料噴射の精密制御

低圧縮比でも確実に着火させるためには、細かな燃料噴射制御が欠かせません。出来る限り酸素と混ぜ合わせて、燃えやすい状況を作り出すためです。

その対策としてマツダは、スカイアクティブディーゼルにピエゾインジェクターを採用しました。

ピエゾ素子は圧電素子とも呼ばれ、力を電圧に、あるいは電圧を力に変えることができます。そのピエゾ素子で燃料噴射弁を制御するのが、ピエゾインジェクターです。

ピエゾインジェクターによる多段噴射によって、耐失火性能、NOx低減、燃費の向上を実現しました。

高過給・高EGR・エッグシェイプ燃焼室

SKYACTIV-D 2.2」にはツインターボが、「SKYACTIV-D 1.5」にはバリアブルジオメトリーターボが搭載されています。目的は高過給の実現するためです。

排気ガスをシリンダー内に戻す再循環システムのことを、EGRといいます。排気ガスには酸素が含まれていませんから、シリンダー内に戻しても、わずかに残る未燃焼ガスが燃えるだけです。

なぜそんなことをするかというと、燃焼温度を下げるためです。EGRは排気ガス中のCO2をシリンダー内に戻すことで比熱を増大させ、熱量に対し温度が上昇しづらい環境をつくりだします。

けれどシリンダー内が低酸素状態になると、未燃焼分が増えてしまいます。そこでターボチャージャーによる高過給の出番です。酸素を含む空気をシリンダー内に押し込んで、燃焼を促進させます。

そして噴射された燃料が空気と混ざりやすいように、ピストン頭部の断面はエッグシェイプに加工されています。

スカイアクティブD_エッグシェイプ燃焼室

画像の出典: nedo.go.jp

高過給・高EGR・エッグシェイプ燃焼室は、燃焼温度の低下と空気と燃料の均一な混合を可能にし、クリーンな排気と着火しやすさを実現したのです。

触媒の活性化

しかし低圧縮比だけでなく高EGRによっても未燃分が増え、それに伴い排ガス中の炭化水素と一酸化炭素も増加します。燃焼温度の低下で排気温度も下がり、触媒が活性するまでの時間が長くなる問題も出てきます。

そこで触媒をエキゾーストマニホールドに近い位置に配置。さらには排気温度を上げるためのD-AWSというシステムを採用し、炭化水素や一酸化炭素を20〜40%削減しました。そのおかげで触媒の貴金属量も低減されています。

暖気時の失火対策

先述のEGRを利用して排ガスをシリンダー内に戻すことで、シリンダー内部の温度を上昇させ、暖気時の失火を防いでいます。排気側の可変バルブリフトを利用したシステムです。

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スカイアクティブディーゼルの欠点

数々の困難を乗り越え低圧縮比ディーゼルの実用化にこぎつけたマツダの企業努力は、大いに讃えられるべきでしょう。しかしスカイアクティブディーゼルに欠点がないわけではありません。

低圧縮比によりエンジン内部パーツを軽くできた結果、確かにスカイアクティブディーゼルは高回転まで伸びるエンジンになりました。

しかし所詮ディーゼルエンジンなので、高回転の伸びは限定的です。けれどそのせいで最大トルク発生回転数が2000rpmと高めになってしまい、街乗りではディーゼルらしい怒涛のトルクを味わえません

エンジンをアルミブロックにせず、低回転のトルクを追求するやり方もあったはずですが、マツダはあえて高回転型のエンジンにすることを選びました。

搭載するシャシー側の技術的な制約から、スカイアクティブディーゼルを軽量化せざるを得ない事情があったのかもしれません。コスト面の制約も考えられます。けれどディーゼルエンジンとしてみると、スカイアクティブディーゼルは非常に中途半端な印象があります。

参考文献・サイト様

2012年マツダ技報 SKYACTIV-Dエンジンの紹介

NEDO実用化ドキュメント

Yell! - Design:Diary

Yahoo!知恵袋

長文を最後まで読んでいただきありがとうございます。お疲れ様でした。気力・体力が回復したら、以下の記事も読んでみてください。

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