テクノロジー・業界分析 批評

FreeValve(フリーバルブ)とは?

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2016/11/27

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ケーニグセグ(スウェーデン)の子会社、FreeValve社が開発したフリーバルブ技術について解説します。
その名のとおり各バルブを独立して自由に動かせる画期的な技術であり、しかもカムシャフトが不要なので軽量化できます
でも、恩恵はそれだけじゃないんです。

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フリーバルブの仕組み

フリーバルブの恩恵を説明する前に、まずはフリーバルブの仕組みを理解した方が良いでしょう。まずは以下の動画をご覧ください。英語ですが、大事なのは図の方です。

フリーバルブはカムシャフトではなく、空気圧と油圧でバルブを制御します。

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空気圧というと、F1などで用いられているニューマチックバルブ(空気バネのバルブスプリング)が思い浮かびますが、フリーバルブの場合はバルブを閉じるだけではなく、開くためにも空気圧が使われているのが特徴です。
また、バルブを閉じるためのバルブスプリングには、コンベンショナルな金属バネも併用されています。

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油圧はバルブリフトを制御するために使われているようです。
油圧でピンを調整し、バルブステム側をロックすることで、バルブリフト量が一定以上にならないよう、バルブの動きを制限します。

ニューマチックバルブの弱点を克服

なんでこんな複雑なことをしているかと言うと、ニューマチックバルブは高回転・大リフト量のときにしか上手く機能しないからです。
圧縮特性が金属バネとは異なるため、中回転・中リフト以下だと、逆にニューマチックバルブの反力の方が、金属バネよりも小さくなってしまいます。

フリーバルブは金属バネを併用することでニューマチックバルブの弱点を克服しました。バルブ作動系の摩擦損失はそれほど大きくないため、金属バネを追加したことによるデメリットも少ないと思われます。

ただし空気圧でバルブを押し下げるわけですから、反力(空気バネ+金属バネ)よりも空気圧が高くないとバルブを開けません。
しかし空気(おそらく窒素ガス)は流体ですから、アクチュエーターによる空気圧の調整だけで、バルブのリフト量を正確に管理するのは難しいのだと思います。
だから油圧でピンを調整し、バルブリフト量をコントロールしているのでしょう。

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フリーバルブの恩恵

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軽量・コンパクトであること

カムが無いので、その分シリンダーヘッドを低く作れます。
それによって50mmほどエンジンの重心が低下するようです。

また、カムを駆動する部品(タイミングベルトなど)も必要ありませんから、エンジンを横置きしたときの左右方向の長さを短くできます。
ケーニグセグが開発中の1.6L・直列4気筒ターボエンジンは、他社のものよりも70mm短いそうです。

パーツ点数が少なくなれば、重量も軽くなります。排気量・気筒数・エンジン形式(直4・V6など)が同じならば、15〜20kg軽く作れるそうです。

ミラーサイクルにうってつけ

ミラーサイクルとは、圧縮行程においてカムを遅閉じして、膨張比>圧縮比となるようにしたエンジンのことを言います。
膨張比を大きくして、熱エネルギーをより多く取り出すための技術です。
プリウスなどのエンジンに使われていますよね。

ミラーサイクルは、簡易版アトキンソンサイクルと言えます。
本来のアトキンソンサイクルはクランク周りに複雑なリンクが必要なため、自動車用エンジンとしては実用化されていません。
ミラーサイクルはアトキンソンサイクルと類似した効果をもたらします。

ところがミラーサイクルは、圧縮比が高くないと上手く機能しません。
バルブを遅閉じにして圧縮比を下げることで、膨張比の方を高くする技術であるため、もともとの圧縮比が高くないと、低速域でトルクが不足してしまうのです。

ですが、おいそれと圧縮比を上げられるわけではありません。
ノッキングが発生するためです。
でもフリーバルブならバルブタイミングやリフト量を自由自在に変えられるため、高圧縮比を実現できます
ケーニグセグが開発中の1.6Lターボの圧縮比は、14:1だそうです。

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触媒を暖めやすい

触媒は排ガス中の有害物質を分解してくれますが、暖まっていないと機能しません。
そのため現代のエンジンには、コールドスタート時にアイドリング回転数を上げて、触媒をすばやく暖める機能が付いています。

最近では排ガス規制が厳しいため、触媒を2つにわけ、第1触媒をタービン直後に設置するのがトレンドとなっています。
第1触媒を暖めやすい場所に設置することで、アイドリング回転数の上昇幅を抑える(=燃費改善)のが狙いです。

しかし触媒を2つに分けると、排気抵抗が増えてしまいます。
排ガスの浄化性能と燃費は改善しても、パワーとトルクが減ってしまうのです。

フリーバルブはエキゾースト側のバルブを自由自在に制御できますから、燃焼室内の高温ガスを、排気管へ上手く導くことが可能です。
よって触媒を2つに分けずとも、触媒を素早く暖められます

そのためフリーバルブを採用すると、コールドスタート時の有害物質を、35%も削減できるそうです。

触媒を暖め活性化させやすいため、フリーバルブはディーゼルエンジンでも効果を発揮することでしょう。

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スロットルボディが要らない

BMWの技術に「バルブトロニック」というものがあります。吸気バルブのバルブタイミングとリフト量を無段階に制御して、スロットルバルブに頼らずエンジン出力をコントロールするものです。

フリーバルブもバルタイとリフトを自由に制御できますから、スロットルボディが要りません
しかもバルブトロニックのように複雑でかさばる機構も要らないので、重量やスペース効率の面では、フリーバルブの方に優位性があります。

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簡単に気筒休止システムを実現できる

気筒休止システムはすでに普及していますが、フリーバルブならよりシンプルに実現できます。特定のシリンダーのバルブだけ閉じられるのですから。

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直噴システムが要らない

フリーバルブはエキゾーストバルブの細かな制御により、燃焼ガスをキレイに排気できます。
そのためシリンダー内の温度が上がりにくいそうです。

直噴はポート噴射よりも燃料冷却(噴射された燃料自体が、シリンダー内の温度を吸収すること)に優れており、それゆえに耐ノック性に優れています。
しかし高圧噴射システムは高価なため、使わずに済めばエンジンの低コスト化が可能です。

直噴の代替にはならない

直噴が耐ノック性に優れるもう一つの理由は、ディーゼルエンジンと同様に、燃料噴射の直前までは空気のみを圧縮できる点にあります。

この点はフリーバルブにしたからといって、代替できるわけではありません。
ケーニグセグ側は「直噴は要らない」と主張していますが、直噴にして高圧縮比にした方が、ミラーサイクルの効果をより引き出せると思います。

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フリーバルブの効果

燃費は15%改善。
パワーとトルクは30%アップ。
燃費も30%改善し、有害物質に至っては50%も減少するとか。
数字が事実ならば、フリーバルブは革命的な技術といえるでしょう。

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搭載車種

中国の自動車メーカー・Qorosが採用する予定です。ただしコンセプトカーの段階なので、実用化までにはもう少し時間がかかるでしょう。

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最後まで読んでいただきありがとうございます。以下の関連記事もぜひご覧ください。

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