メルセデスがDTMから撤退! スーパーGTへの影響は? 今後はフォーミュラEが一人勝ちか

SUPER GT,モータースポーツ

メルセデス・ベンツが、ワークス参戦しているドイツツーリングカー選手権(DTM)から、2018年シーズン限りで撤退すると発表しました。
フォーミュラE(FE)にスイッチするそうです。

DTMといえば、スーパーGT(SGT)とも提携しています。
今回はSGTへの影響と、DTMやFEの今後について考えてみようと思います。


普通の撤退とはワケが違う

自動車メーカーがワークス活動していたモータースポーツから撤退するというのは、これまでも繰り返されてきました。
撤退の理由として最も多いのは、モータースポーツにかかる巨額のコストです。

しかしメルセデスによる今回の撤退劇は、これまでのものとは性質が異なります。
というのも、DTMはコスト削減を徹底してきたシリーズだからです。

アウディ・モータースポーツの前代表であるウォルフガング・ウルリッヒ氏は、「アウディのDTM予算は3000万ユーロ(2012年当時)」で、「2013年からの新レギュレーションによってそれを50%削減すること目指している」としており、「DTMは費用対効果のベンチマーク」だと、インタビューで語っていました。

現在のDTMのコストは、おそらく1500〜2000万ユーロ/年くらいでしょう。
大きな金額ではありますが、世界的な自動車メーカーに負担できないようなコストではありませんし、何より世界を転戦するフォーミュラEも同等以上のコストがかかるはずなので、1500〜2000万ユーロのコスト負担が問題だったわけではないのです。

よってメルセデスが撤退したのは、内燃機関を使用するモータースポーツに、やる意義を見出だせなくなったからとしか考えられません。

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スーパーGTへの影響

SGTはDTMと提携しています。
2014年からは車両レギュレーションを統一すべく、DTMモノコックがSGTにも採用されました。

なぜ提携したかと言えば、SGT側は海外市場に進出するため(国際化戦略)であり、DTM側は車体の共通化によりコスト削減するのが狙いでした。

しかしSGTの国際化戦略は上手くいっていません。
タイ王国での観客動員数は年々低下していってますし、海外でのレースが増えるという話も無いようです。

SGTを運営するGTアソシエーション(GTA)は、国際化戦略の失敗を隠すためか、最近しきりに「世界選手権化」を語っていましたが、メルセデスのDTM撤退によって、その夢も潰えてしまいました。

また、DTMの存続も危うくなってきたため、DTMの先行き次第では、共通化した車体レギュレーションが裏目に出るかもしれません。
現在のSGTマシンには、ドイツ製のパーツが数多く使われています。
よってDTMが潰れた場合には、パーツの供給が打ち切られるリスクがあるのです。

パーツの供給が打ち切られた場合には、SGTが独自に新たな車体レギュレーションを策定しなければなりません。
その際には当然追加コストがかかりますから、それを嫌ってトヨタ・日産・ホンダのいずれかが、SGTから撤退する可能性もあります
メルセデスと同様に、内燃機関を使用するモータースポーツにコストを支払う価値が無いと考える日系メーカーが現れるかもしれないからです。

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DTM、そしてフォーミュラEの未来

DTMがアウディとBMWの2社だけで存続できるとは到底思えません。
今季から各メーカー6台に参戦台数を削減したのを、8〜9台に増やさなければならないからです。
新たな参戦メーカーが現れない限り、DTMの存続は非常に厳しいと言わざるをえません

一方、FEには、ドイツ御三家を始め、ルノーやDS(シトロエン)といったフランス勢、イギリスのジャガー、そしてマヒンドラやNEXT EVなど、先進国と新興国の自動車メーカーがひしめき合っています。
一見すると将来有望なシリーズに見えますが、ワークスチームが多すぎる状況は危険です。

どれほどワークスが居ようと、勝てるのは1チームだけですから、勝てないチームは追加で資金を投入して開発を進めるか、撤退するかの2つに1つとなります。

ワークスチームは巨額の資金をレースに注ぎ込めるので、経営陣が撤退するという決断を下すその日まで、資金を投下し続けるのです。
そうなると例えワンメイクレースであったとしても、開発コストの高騰は避けられません。

それでも勝てないと見るや、ワークスチームはいきなり撤退します。
彼らはレースをするのが仕事ではなく、自動車を売るためにレースをしているだけだからです。
残されるのは開発コストが高騰したシリーズと、貧乏なプライベーター、そして勝ちまくる一握りの(撤退しなかった)ワークスチームだけとなります。
F1みたいな状況になるわけですね。

今のFEはルノーが突出して強く、アウディがそれに続いています。
規制が厳しくレギュレーションの変化が少ない(つまりFEのような)カテゴリーでは、ノウハウを蓄積している先行者が圧倒的に有利なので、ルノーやアウディが強いのは当然と言えます。
それを裏付けるように、今季から参戦したジャガーは現在最下位です。

不利な立場である新規参入組のメルセデスやBMWに勝ってもらうには、現在の強豪であるルノーやアウディが不利になるようなレギュレーションを導入しなければなりません。
それができなければ新規参入組が撤退しますし、それができても強豪メーカーが撤退するリスクをはらむため、どちらにせよワークスチーム数の大幅な減少は避けられないのです。
FEに参戦する自動車メーカーは、今後数年間で激減するでしょう。

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