ポルシェ タイカンの販売台数が2万台突破! EV時代に日本は出遅れ

テクノロジー・業界分析

Porsche Taycan Turbo S 2020

ポルシェのEVセダン「タイカン」の2020年の年間販売台数が、2万台を超えたそうです。
販売初年度ゆえに特別好調だった可能性もありますが、だとしてもエポックメイキングな出来事だと言えるでしょう。

量産EVの先駆けであるテスラ モデルSの販売が開始されたのは2012年のことですが、ここに来て高級車市場ではEVが完全に市民権を得た感があります。
特にポルシェのようにハイパワーな内燃機関をウリにしてきたメーカーが、EVで成功したのは象徴的です。

高級車市場で発生したEV化の波はさらに大きくなり、その他の低廉な市場にも広がっていくでしょう。
今回はEVに関する各メーカーの動向をご覧ください。


EVに関する各メーカーの動向

ポルシェ

タイカンの販売台数がボクスター/ケイマンにほぼ並ぶ

Porsche Taycan Turbo S 2020

タイカンは2020年に20,015台を販売したそうです。
一方、ポルシェのエントリースポーツカーである718ボクスター/ケイマンの販売台数は、21,718台でした。

タイカンは4人乗りのセダン、ボクスター/ケイマンは2シーターのスポーツカーという違いはありますが、販売台数がほぼ並んだのは興味深い事実です。
特にタイカンが1,448~2,454万円と高額な車であることを考慮すると尚更といえます。

タイカンはステーションワゴン仕様の「クロスツーリスモ」の発売が控えていますから、今後さらに販売台数を伸ばしてくるはずです。
現在開発中のEVマカンが発売されれば、ポルシェのEVブランド化にますます拍車がかかることでしょう。

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アウディ

内燃機関を廃止して完全なEVブランドに

Audi e-tron S Sportback
アウディ e-tron S Sportback

アウディは持続可能な高級ブランドになることを目指しており、そのために内燃機関(ICE)を完全に廃止するそうです。

EVへの移行は段階的に行われるそうですが、今後10~15年でICEを完全に廃止するとアナウンスされています。
もちろんICEの廃止には技術的課題もありますし、政治的問題も立ちはだかることになるでしょう。

EVはパワートレインのコンポーネントの数が少ないので、工場労働者の数もICEほど必要ではありません。
仕事を失った工場労働者をどうするか考えなければなりません。

また、EVの数が増えれば電力会社の発電量が足りなくなる可能性もありますし、充電インフラの一層の充実が不可欠です。
これらは自動車メーカーだけで解決できるものではないので、各国政府のリーダーシップが必要になってきます。
内燃機関自動車をEVに置き換えるという作業は、自動車メーカーだけではできないのです。

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テスラ

格安EVで内燃機関自動車のシェアを奪う

Tesla 25000 dollar car
テスラ 25,000ドル車の予想CG

創業者のイーロン・マスク氏が資産額19兆円超で世界首位に立ったことが話題になりましたが、それを可能にしたのはテスラ株の高騰です。
テスラの将来性に期待する投資家が数多くいるということでしょう。

そのテスラは25,000ドル(約259.7万円)で購入できるEVを計画中です。
新しいバッテリーセルと、上海ギガファクトリーでの生産により低価格を実現するというもので、早ければ2022年にも登場するのだとか。
実現すればゲームチェンジャーとなるのは確実でしょう。

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日本メーカー

自工会会長が政府方針を批判

Toyota Mirai 2nd Gen
トヨタ ミライ

日本政府は2030年代にガソリン車の新車販売を禁止する方針ですが、日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長がこの方針を批判、「自動車の電動化とEV化を混同すべきではない」と苦言を呈しました。

豊田会長の発言をまとめると、「日本は火力発電が約77%」「そのため日本で自動車生産をしつつカーボンニュートラルを実現するのは難しい」「もし全部EVになったら、電力ピーク時の日本の発電能力を10~15%増やす必要がある」「発電能力10~15%というのは、原発10基、火力発電なら20基分」などといったもので、政府方針通りだと日本で自動車を作れなくなるというのが発言の主旨です。

発言内容自体は正しいと思うのですが、あまりにも日本の事情に囚われすぎている気がします。
日本の自動車メーカーは世界で大きなシェアを持っているわけで、日本での生産に固執する必要はありませんし、EV化を遅らせる理由にもなりません。

また、都市交通インフラの充実やカーシェアなど、自動車の保有台数自体を削減する動きも活発ですし、何より日本の人口はこれから減っていくわけで、ガソリン車をEVに置き換えたら電力が足りなくなるという指摘には疑問が残ります。

テスラのようなEVの先駆者が中国で生産しようと動き始めているのに、日本の自動車メーカーは日本の事情に囚われてEVラインナップの充実に二の足を踏んでいるのは残念です。
このままだと日本の家電メーカーと同じ道を辿るような気がしてなりません。
技術はあっても市場シェアの獲得やブランドイメージの構築で出遅れると、日本企業の保守性ゆえに既存の利益を守ることが優先され、新規分野に大規模な投資ができず、後手後手になってしまうんですよね。

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出典・参考サイト

Porsche Taycan Sales Nearly Matched The Boxster And Cayman Combined – motor1.com

Audi’s Tesla Pursuit More Aggressive Than We Thought – carbuzz.com

Tesla’s $25,000 electric car could be coming sooner than we thought – electrek.co

自工会 豊田章男会長 、カーボンニュートラルと電動化を語る 「自動車産業はギリギリのところに立たされている」 – car.watch.impress.co.jp

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