ダウンサイジングターボ+PHEVの最強コンビ

テクノロジー・業界分析,批評


画像の出典: carview.yahoo.co.jp


小さくなるエンジン、大きくなるモーター

アウディのPHEVが、いよいよ日本に上陸したみたいですね。

アウディ初のPHEV「A3スポーツバック e-tron」に試乗。その実力はいかに? – carview

上の記事から引用します。

プラグインハイブリッドは、ハイブリッド車には必要のない高出力モーターや大容量バッテリー、EVには必要のないエンジンやトランスミッションを積む必要があるため、どうしてもコスト高になる。

本当にそうでしょうか?


PHEVの強み

同じ距離を走るならガソリンエンジンの方が低コスト

PHEVは普通のハイブリッドカーより高価です。しかしPHEVと同等の航続距離を持つEVの価格は、PHEVよりも高くなるでしょう。航続距離を長くするために高価なバッテリーを沢山積むよりも、ガソリンエンジンを載せた方が低コストだからです。

PHEVとダウンサイジングターボの相性は抜群です。コンパクトでハイパワーなエンジンが、モーターやバッテリーを搭載するスペースを生み出してくれるからです。A3スポーツバックのようなコンパクトな車をPHEV化できたのは、ダウンサイジングターボのおかげでしょう。

PHEVとEV、ホントはどっちが重い?

ランニングコストの面でも軽い車の方が有利なのは言うまでもありません。アウディA1の1.0L・3気筒エンジンの単体重量は88kgです。上記のアウディA3スポーツバックe-tronは1.4Lの4気筒なので、エンジン単体重量は単純に1.4倍すると123.2kg。実際には140kg前後でしょう。

日産リーフのバッテリー重量は200㎏以上と言われています。リーフは24kWh、A3 e-tornは8.7kWhのバッテリーを搭載しています。これまた単純に比較すると、A3 e-tornのバッテリー重量は72.5kgということになります。モーター出力は若干リーフの方が大きいですが、モーター重量は両車同じく60kgということにします。A3 e-tronに搭載されている6速DSGの重量は93kgです。両車のコンポーネント重量を比較してみましょう。

コンポーネント 日産リーフ アウディA3 e-tron
エンジン なし 140kg
ギアボックス なし 93kg
モーター 60kg 60kg
バッテリー 200kg 72.5kg
260kg 365.5kg

PHEVの方が重い! と思われるかもしれません。ですがA3 e-tronの航続距離は、JC08モード燃費で932km。対するリーフの航続距離は、同じくJC08で228kmです。リーフの航続距離をA3 e-tronと同等にするためには、バッテリーを4倍積まなければなりません。800kgものバッテリーを積めば、街乗りでの電費も悪化するでしょう。同じ航続距離ならば、PHEVの重量はEVの半分で済むのです。

どこでも使える。すぐ使える。

PHEVはインフラに左右されません。またEVの場合は、どんなにバッテリー容量が大きくなろうと一定の充電時間が必要です。テスラの急速充電システム「スーパーチャージャー」でも、モデルSのバッテリーをフルチャージするのに1時間かかります。けどPHEVなら、5分ほどのガソリン給油で走り出せます。

技術の進歩により、電池のサイズは小さく、容量は大きく、コストは小さくなっていきます。なのでEVが主流になると考えがちです。しかし技術革新のスピードに比べてインフラ整備が遅々として進まないため、EVはなかなか普及しません。PHEVならばインフラというボトルネックに悩まされることはありませんから、技術の発展が、PHEVの普及速度に直接反映されます。

いいとこ取りのPHEVが、やがて自動車の主流になる。

市場ではガソリンエンジンが主流です。なのでガソリンエンジンの開発には今後も巨額の資金が投じられることでしょう。PHEVは、その技術的な恩恵を受けることができます。EVの開発が進んでも、やはりPHEVは恩恵を受けます。

ガソリンエンジン車の最大の弱点は、街乗りのストップ・アンド・ゴーで極端に燃費が悪化することです。ハイブリッドカーはモーターとエンジンを切り替えることで、ガソリンエンジンの弱点を克服しました。けれど如何にハイブリッドカーといえども、ガソリンを使わずに街乗りをこなすことは出来ません。でもPHEVなら、それも可能です。