日体大のドライバー養成プログラムやTGRFの無意味さ

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相変わらずやることがズレている

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画像の出典: By The359 (Own work) [GFDL or CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons


当初トヨタの名前が上がっていましたが、オートスポーツによるとまだ決定事項ではないとか。

日体大がレーシングドライバー養成講座を開設

トヨタにしろ他のメーカーにしろ、日本のレース関係者のやることは常にズレています。マーケティングの意識が無く、供給サイドの都合だけで話を進めてしまうからです。


なぜドライバーばかり増やそうとするのか?

モータースポーツはチームスポーツであり、ドライバーだけ居ればどうにかなるものではありません。自動運転技術が現実になりつつある以上、将来的にモータースポーツの主役がエンジニアに交代する可能性すらあるのです。

にも関わらずドライバーの育成ばかりが行われるのは、目につきやすくわかりやすいポジションなので、既存のモータースポーツファンにアピールしやすいというメリットがあるためでしょう。

しかしいくらドライバーを増やしても、マーケットの需要が無ければシートの数は増えません。自動車メーカーがお金を出してシートを確保することも可能ですが、彼らは景気が悪くなれば支援を打ち切ります。モータースポーツをサスティナブルなものにするには、ファンを増やすしかないのです。

ドライバーが増えたらファンも増えるのでしょうか? もちろんそんなことはありません。

高性能な車でレースすればファンが増えるのか?

ドライバー育成ばかりに金を使う自動車メーカーに対する反論として有名なのは、レーシングカーコンストラクター・童夢の創業者である林みのる氏の持論でしょう。彼は「日本製の高性能な車でレースをやれば、客は自然と増える」と言っています。

モータリゼーションの時代やバブル華やかなりし頃ならば、林氏の意見も正しかったと思います。しかし車を所有する必要性そのものが揺らいでいる今の日本では、「日本製の高性能な車で行われるレース」という記号性に、大した訴求力は無いでしょう。

イベントでファンは増えるのか?

先日、TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL(TGRF)というイベントが、富士スピードウェイで開催されました。トヨタのモータースポーツファン感謝祭のようなイベントです。

しかしその内容はパレードランや同乗走行が主体で、モータースポーツの楽しさを伝えるイベントというよりも、とりあえずレーシングカーを沢山走らせているだけに見えます。

お台場で毎年行われている「モータースポーツジャパン」も、レーシングカーを見せびらかすイベントにすぎません。「モータースポーツ」の「スポーツ」の部分が、全く訴求されていないのです。

自動車メーカーはモータースポーツを牽引できない。

極論になりますが、車の作り手である自動車メーカーやコンストラクターが日本のモータースポーツを主導している限り、これ以上の発展は望めないと思います。彼らは自分たちの作った車を発表したいだけで、スポーツをやりたいわけではないからです。

モータースポーツをスポーツたらしめているのは、戦略や戦術であり、コース上でドライバー同士が繰り広げる駆け引きです。車はあくまで道具であって、主役ではありません。

「車の性能で勝敗が決まるレース」を他の競技に置き換えると、「スパイクの性能で勝敗が決まるサッカー」「ラケットの性能で勝敗が決まるテニス」です。車が主役のレースが、いかにおかしなことかわかるでしょう。

自動車メーカーは「モータースポーツ」の「スポーツ」の部分には、全く興味がありません。「スポーツ」の部分に光を当てられるのはレースの運営団体ですが、残念なことにそこでも自動車メーカーの出身者が幅を利かせています。

モータースポーツを製造業からサービス業へ

よって日本のモータースポーツは衰退の一途を辿ると思います。車を速く走らせること自体には、何の意味も無いからです。自動車メーカーは「燃費」や「環境」をキーワードにしてレーシングカーを開発していますが、レースを止めるのが一番環境に優しいのは自明の理です。

ボールを蹴ったり投げたりするのも無意味なことですが、スポーツとして認知されているために、世間一般からは必要だと判断されています。スポーツの駆け引きや戦略・戦術には人を夢中にさせる要素があり、夢中にさせること自体が「サービス」と見なされているのです。

日本のモータースポーツは相変わらず「製造業」のままです。作った車を見せびらかす見本市です。車という道具を使うスポーツを見せる「サービス業」に転換しなければ、やがて消滅するでしょう。

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