自動車文化

自動車・F1関連でおすすめの本

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2016/09/02

本とエスプレッソ

祝・F1中継継続決定!

先日、日本でのF1中継が2016年も継続されるとの発表がありましたね。フジテレビの実況・解説陣には不満がありますが、とりあえずはよかったと思います。

とはいえ、一昨年や昨年のようなメルセデスの圧勝が続けば、視聴者は興味を失い、やがて日本でのF1中継は無くなってしまうでしょう。「日本のF1離れ」を防ぐには、やはりホンダが大活躍するしかありません。

しかし、かつての「ホンダ無双」から既に20年以上が経過していますから、F1でのホンダの活躍を知らない世代も増えているのも事実。ホンダがF1で成功する姿をイメージできず、第4期ホンダに期待感を持てない人も多いと思います。

F1自体にも、同じ構図が当てはまります。F1ブームを知らない世代にとってF1は、「金がモノを言う世界」「結局マシン性能で勝敗が決まる」という程度の認識しかないと思われます。実際にはスタッフ同士の非常に高度な連携が要求される「スポーツ」なのですが、そうは思われていないのが現状です。

今回はF1の「ヒト・モノ・カネ」についてわかる書籍を選んでみました。「ヒト」はドライバーやチームオーナー、FIA会長やバーニー・エクレストンのことですね。「モノ」はマシンやタイヤ、「カネ」はF1と自動車メーカーにまつわるビジネスの話です。第2期・第3期のホンダF1についても知ることができるので、今年のホンダF1に感情移入して楽しみたいならおすすめです。

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目次
  1. F1ビジネス ──もう一つの自動車戦争(田中詔一・著)
  2. F1ビジネス戦記 ホンダ「最強」時代の真実(野口義修・著)
  3. 世界最速のF1タイヤ ブリヂストン・エンジニアの戦い(浜島裕英・著)

F1ビジネス ──もう一つの自動車戦争(田中詔一・著)


F1ビジネスを理解するのに最適な一冊

第3期ホンダF1を舵取りした経験談を骨格に、F1ビジネス(とF1村の政治)の仕組みや、著者が考える理想のグランプリ運営を肉付けする形で書かれています。

「第二章 F1のステークホルダー」「第三章 F1の収入」「第四章 F1の支出」を読めば、F1ビジネスのおおよその流れをつかむことができます。F1のビジネスモデルは今も変わっていないので、F1の裏側を知りたいなら参考になるはずです。

でもこの本の白眉は、「F1分裂騒動」に関する記述でしょう。コンコルド協定の契約内容をめぐる自動車メーカー連合(GPMA)とFIAの対立を、「中の人」の視点で書いた本は他にありません。

個人的に感心させられたのは、著者の反骨精神ですね。

余談ではあるが、在任中の私は彼に面と向かって「バーニー」とファーストネームで呼ばないように意識してきた。(中略)つまらないこだわりかもしれないが、私はこの業界の多くの人間が「バーニー」と呼んで、この巨大権力者との親しさをほのめかし、いかにも業界のプロのような振る舞いをするのが気になっていたからだ。そんな仲間には入りたくなかっただけである。

このように気骨のある著者が、GPMAの活動に参画していったのは必然だったのかもしれません。

バーニーの人柄に関しても詳しく書かれています。グランプリのパドックで自らゴミを拾い歩いているとか、意外にユーモアがある一面など、「F1の支配者」の実像を知ることができます。

著者の田中氏はバーニーに対し距離を置きつつも、公平な視点でバーニーの人となりを観察していることに好感が持てます。ホンダという枠組みを越え、より大きな視点でグランプリが語られているのは、著者の人柄によるところが大きいと思います。

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F1ビジネス戦記 ホンダ「最強」時代の真実(野口義修・著)


正確なタイトルを付けるなら「ホンダF1のビジネスマン奮戦記」

「F1ビジネス」とタイトルが付けられていますが、先述の田中氏の著書とは異なり、こちらは「ホンダの視点」で書かれています。つまり「F1に参戦する自動車メーカーが、ビジネス面でどのようなことをしたか」という本です。バーニーのこともさらりとしか触れられてません。

著者の野口氏がF1に関わっていたのは1983〜1992年まで。つまり第2期ホンダF1の全期間に関与していたことになります。

当時の「熱さ」が伝わってくる本

「第1章 アイルトン・セナとの出会い」では、著者の見たセナの人となりが詳しく描かれています。「第2章 F1グランプリの内幕」では、自動車メーカーとコンストラクターの一枚岩ではない関係性が明らかにされています。

この本はかなり「熱い」本です。「第4章 日本がF1グランプリで戦うということ」から、著者野口氏の言葉を引用します。

「ホンダがレースに参戦すると、そのレースはなくなる」という意見もあった。「ホンダの歩いた後にはペンペン草も生えない」という陰口も聞こえたが、勝って、勝って、勝ちまくることが重要と思っていた私は、悪い気はしなかった。

(レースは勝ったり負けたりだと中村良夫氏に諭されたことに対し)当時の我々は「とんでもない、全戦全勝だ!」と息巻いていた。(中略)レースを興業する立場の人からすれば、ホンダはとんでもない思考回路の集団に映ったことだと思う。

今のホンダに足りないのは、こういう「熱さ」だと思います。

ロン・デニスが好きになる本

この本の特徴は、著者が「最も多くの交渉をこなした」相手であるロン・デニスに関する記述が豊富なことです。

ロンは今もマクラーレンの代表としてホンダと関わっていますが、大抵の人にとっては「ムスッとした顔でチームの仕事ぶりを睨みつけている怖そうな人」というイメージしかないと思います。私もそうでした。

しかしこの本に出てくるロン・デニスは、柔軟な思考を持つ先進的な人物であり、非常に魅力的です。

個人的には、ホンダ・アメリカの社長が工場のゴミを拾っているのを目にしたロン・デニスが驚いていたというエピソードが面白かったですね。その後ロン・デニスも自社工場のゴミを拾い歩くようになったそうです。

同様の「ホンダ化」はウィリアムズでもあったそうで、著者の野口氏は「いつのまにか彼らもホンダの影響を受けていたのかもしれない」と述懐しています。バーニーがパドックのゴミを拾うようになったのも、もしかしたら「ホンダ化」したせいなのかもしれません。

フランク・ウィリアムズとのやり取りについても書かれています。たびたび激論を交わした仲だそうです。

けれど著者をやり込めたのはフランク自身ではなく、イギリスメディアでした。ウィリアムズからマクラーレンに鞍替えした際に「ホンダ・バッシング」が巻き起こったからです。当時ウィリアムズに所属していたナイジェル・マンセルからホンダエンジンを取り上げたことで、裏切り者扱いされてしまったようです。

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世界最速のF1タイヤ ブリヂストン・エンジニアの戦い(浜島裕英・著)

今年からセルモの総監督としてレースの現場に復帰する浜島裕英が、F1の現場で働いていた2005年に執筆した本です。

タイヤ・エンジニアである浜島氏ですが、タイヤの話ばかりが書かれているわけではなく、グランプリ・チームの仕事ぶりや自身の半生などについて読みやすい筆致で書かれているため、技術に興味が無くても楽しめます。

就職・転職する人にこそ読んでもらいたい本

私もそうでしたが、就職先で希望しない部署に配属されたり、無意味に思える研修や仕事などをやらされると、「なんでこんなムダなことやらせるんだ」と考えてしまいがちですよね。

大学院で高分子を研究していた浜島氏も、新人研修では工場勤務させられたり、支店でサービスマンをやったり、設備関係の部署に回されたりと、材料開発や製造技術関係の部署を希望していた氏には全く関係無さそうなことばかりをやらされたそうです。

しかも配属先は希望と異なる「タイヤ基礎研究部」。地道なデータ取りと、実験用タイヤの製造を依頼する職人さんにひたすら頭を下げる日々だったそうです。

プラス思考が人を成長させる

しかし浜島氏は、「関係ない部署で研修したおかげで人脈が作れた」「支店でお客様と直接会ったことで、何のために技術開発が必要なのか理解できた」「設計図通りにはいかないと職人さんに叱られたことで、現場を重視するようになった」と、全てのことをプラス思考で前向きに捉えています。

モータースポーツ部門に配属が決まったときも、浜島氏はモータースポーツに関して何も知らなかったそうで、かなり落胆したとのこと。

ところがモータースポーツ部門の実態を知るにつれ、「タイヤ設計の制限がほとんどなく、自由度が高い」「聞いたこともないような材料を使える」「どんどんゴムを作り変えていくから、ゴムの勉強ができる」「モータースポーツ部門の権限が強いから、工場の職人さんもすぐに対応してくれる」と、やはりプラス思考で仕事に打ち込んでいくわけです。

浜島氏がフェラーリから招聘されるほどのエンジニアになれたのも、このプラス思考があったからだと思います。自らの境遇を悲観するより、自分の置かれた環境を前向きに捉えて楽しんだ方が、仕事の生産性も向上するに決まっていますからね。

ミハエル・シューマッハー

ミハエル・シューマッハーの人柄についても詳しく書かれています。F1ビジネス戦記 ホンダ「最強」時代の真実に描かれているセナの姿と比べると、重なる点が多いのが興味深いです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。以下の記事もぜひご覧ください。

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