マクラーレン・ホンダMP4-31の詳しい解説と補足
細部の変更点をピックアップ
motorsport.comに、MP4-31の詳細な解説記事がアップされました。とはいえ専門用語が多く、ただ読んだだけではわからないので、補足情報と画像を付け加えまとめてみました。
目次
ノーズ、フロントウイング周辺
motorsport.comによると、取り付けられているフロントウイングは昨年型のものではないかとのことです。今年用のフロントウイングは、2月22日からのバルセロナテストで見られるかもしれません。
突き出たノーズの根元は、よく見ると小鼻のように盛り上がっています。ウイングステーは昨年型同様に、前端だけでウイングを支えるメルセデス方式です。ステーに空いた穴はマクラーレンオリジナルですが、効果のほどはまだわかりません。追従するチームが出てくるかどうか注目しましょう。
フロントのブレーキダクト、ホイール、サスペンション周り
先が二叉に割れた形状のブレーキダクトがついています。昨年メルセデスも同様の形状のブレーキダクトを試しましたが、結局板のような形状のブレーキダクトに変えてしまいました。
ブレーキダクトから取り入れた空気は、中空の車軸を抜け、穴の空いたホイールナットから排出されます。
フロントダブルウィッシュボーンサスペンションのアッパーアームは、前側より後ろ側の方が低い位置にあるようです。空力を考えてのことだろうと、motorsport.comでは推測しています。
Sダクト
ノーズ下面の空気流を、バルクヘッド前のダクトを通してモノコック上面へと引き抜くのが「Sダクト」です。
ノーズには傾斜がついており、バルクヘッドとの角度差があるため、ノーズ上面の空気流はそのままだと車体表面から剥離しやすいです。
Sダクトはノーズ下面の速い空気流をノーズ上面から放出し、ノーズ上面を通ってきた空気流を引き寄せ、剥離を防ぐ効果があります。
サイドポッド開口部周辺
サイドポッド開口部周りは、空力的にはほとんど変更点がないみたいです。
スポンサーロゴは変わりましたね。LVMHグループのシャンパンブランド「モエ・エ・シャンドン」、スイスの高級腕時計ブランド「リシャール・ミル」のロゴがそれぞれ加わりました。
酒類メーカーのシャンドンが加わったことで去就が注目されていた「ジョニーウォーカー」は残留したものの、ロゴはミラーに貼れるほど小さくなってしまいました。
リアセクション
リアタイヤの前のフロアに、ギザギザのスロットがついています。これは昨年のシンガポールGPから導入され、MP4-31に引き継がれたものです。つまり効果があるとマクラーレンは確信しているわけです。
エンジンカバー周辺
エンジンカバー周りは、サイズゼロらしくスリムな造形になっています。逆にいうと空力デザインにおいて冷却面に配慮した形跡がないわけですから、ホンダが冷却性能を飛躍的に向上させなければ、昨シーズンの悲劇が繰り返されてしまうでしょう。
メルセデスやフェラーリと同じく、マクラーレンのエキゾーストも2本出しです。どちらかがメインの排気管で、もう一つはウェイストゲートにつながっています。
リアサスペンション
リアサスのジオメトリーは標準的なものに変えられましたが、オフセットされたサスペンションアームは継続されています。ギアボックスは新たにデザインされ、サスペンションのピックアップポイントが変更されました。
MP4-29で導入された「バタフライ・サスペンション・ブロッカー」は、今シーズンも利用されるとのことです。
リアサスアームに取り付けられるこの装置は、断面がマッシュルームに似ているので「マッシュルーム・サスペンション」と呼ばれることもあります。バタフライと呼ばれる所以は、車体後方から見ると蝶に見えるからだとか。
バタフライ・サスペンション・ブロッカーは、後方に渦流を作り出すことでガーニーフラップのように機能し、ディフューザーの効果を高めるとされています。
レーキ
レーキ(路面に対し前傾となったフロアの角度)をつけると、ダウンフォースを発生させやすくなります。
レーキをつけて走るためには、リアサスが重要です。ストレートではリア荷重になるので、リアサスを上手く設計しないと、リアタイヤにネガティブキャンバーが付きすぎてしまうからです。レッドブルはリア・アッパーアームを長くして対応しているようです。
マクラーレンはというと、MP4-31のリアサスは、フェラーリSF16-Hとあまり違いがありません。ロアアームの角度は違いますが、アッパーアームはほとんど同じに見えます。これで十分なのかどうかはわかりませんが、テストが始まれば自ずと明らかになるはずです。
サスペンションや空力周りは複雑ですが面白いので、よかったらAUTO SPORT 2月26日号の「F1ニューマシン 知ったかのツボ」を読んでみてください。浜島裕英氏、森脇基恭氏、川井一仁氏のお三方が、技術面での注目点をわかりやすく解説してくれています。
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