フィアットもディーゼル排ガス試験でチートしてた可能性が浮上

不正・不祥事,批評


キレイなのは最初だけ

最近は自動車メーカーの不祥事発覚が相次いでいるので、クルマ好きとしては気が滅入ってくるのですが、また残念なお知らせをしなければなりません。フィアットが「排ガス試験時のみ」機能するソフトウェアを用い、不正に試験をすり抜けていた疑惑が浮上しているのです。


目次

  1. 排ガス試験におけるフィアットの不正疑惑
  2. なぜ不正が相次ぐのか?
  3. 2-1. 競争が激しすぎる
    2-2. 各国で異なる環境基準が大きな負担に

排ガス試験におけるフィアットの不正疑惑

ドイツの排ガス試験は、排気ガス中の有害物質を20分間に渡り計測するやり方だそうです。

autoblog.comの記事には、ドイツの排ガス試験の内容について詳しく書かれてはいないものの、おそらくはシャシダイ上で実走行を再現しながらの排気ガス計測だと思われます。

VWの「ディフィートデバイス」は、この計測中だけ排ガス制御装置オンにすることで試験を突破し、それ以外では制御装置をオフにし、ハイパワーで低燃費、しかもクリーンなディーゼルエンジンに見せかけていました

一方、フィアットのやり方は時間を用いたものです。排ガス試験の計測時間が20分であるのを悪用し、NOx排出制御システムを最初の22分間だけ動作させていた容疑がかかっています。

フィアットの不正を報じたドイツのBild紙によると、この「タイムベース・メソッド」の存在をドイツ当局に明かしたのは、世界最大の自動車部品メーカーであるボッシュだといいます。

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なぜ不正が相次ぐのか?

VW、三菱、そしてフィアットと、自動車メーカーの不正が次々に発覚しています。メルセデス・ベンツなど他のメーカーにも、ディーゼルエンジンの保護システムを悪用していた疑いがかかっていますし、不祥事はとどまるところを知りません。

なぜ世界中の自動車メーカーは、このような不正な手段を取らざるを得なかったのでしょうか? 考えられる理由をまとめてみました。

競争が激しすぎる

まず思いつくのは、自動車業界における競争の激しさです。

日本だと自動車メーカー=安定しているというイメージがあると思います。大企業ですし、国産自動車ブランドの消滅をリアルタイムで体験した年代の人は、すでにご高齢のはずですから、現役世代の大半は、自動車製造業が不安定な業種だなんて思っていないはずです。思っていたとしても、「技術力の無い会社が潰れただけ」だと考えているでしょう。技術力のある日本には関係ない話だと。

しかし世界を見回してみると、かなりの数の有名自動車ブランドが消滅しています

2000年以降に消滅したブランドだけでも、ローバー、オールズモビル、ポンティアック、サターン、ハマー、大宇、プリムス、マーキュリーなど、数多くの伝統あるブランドが失われてしまいました。

テスラのような新興メーカーを見ればわかるように、大企業の市場を奪うために必要なのはイノベーションです。技術力やデザインではありません。

日本の自動車メーカーは生産工程においてイノベーションを起こしたので、20世紀後半の自動車産業をリードできました。しかしその優位性は失われつつあるのが現状です。自動車製造業は安泰な業種では決してありません。一寸先は闇なのです

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各国で異なる環境基準が大きな負担に

1997年12月の京都議定書採択以降、地球規模で環境運動が盛り上がりを見せました。

その盛り上がりの中で、温室効果ガスの元凶である化石燃料、そしてその化石燃料を大量に消費している自動車が、環境保護団体の槍玉に上げられたのは言うまでもありません。

また、イラク戦争が開戦して以来高騰し続けていた原油価格は、消費者の生活を直撃し、愛車のガソリン代に対する不満が高まりつつありました。

人々の不満をメディアが取り上げると、その尻馬に乗る政治家が必ず現れます。「燃費が良くて、排気ガスもキレイな車を作れ!」いつだって政治家の言葉は立派です。

でも運動の音頭を取っていたのは技術的知識の無い人たちが大半でしたから、環境基準にしろ低燃費車の優遇税制にしろ、科学的な根拠が曖昧で政治的な色彩の強いものになっていきました。

ヨーロッパでは「CO2排出量が少ない」としてディーゼルの普及が促進されましたが、同時期の日本ではハイブリッドこそが未来の車という扱いでした。

アメリカでは他国よりもガソリンが安いこともあり、燃費は消費者の関心事ではありませんでしたが、リーマン・ショック以後は車に経済性を求める声が高まり、フォードのエコブーストに代表されるダウンサイジングターボがシェアを伸ばしました。

環境保護と産業保護を両立させようとした結果、各国で異なる対応がなされました。どの国も相手の土俵では戦いたくなかったのです。

しかしその代償として、燃費や排ガスに対する取り組みが各国で異なってしまったために、国際的な自動車メーカーは多大な負担を強いられることになりました。激しい販売競争を行いながら、各国別の環境基準や優遇税制にも対応しなければならないのです。コストダウンのために不正を行う動機は十分にあったといえるでしょう。

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