なぜセダンは売れなくなったのか? 日本だけでなく米国でもセダンが販売不振に……
昔は日本の街中を走るほとんどの車がセダンでしたが、近年はSUVやハッチバックが大半を占め、セダンは肩身の狭い思いをしています。
ところがアメリカでは、つい最近までトヨタ・カムリやホンダ・アコードといった中型セダンが人気でした。
少なくとも1〜2年前までは。
しかしここにきて日本と同様に、米国でもセダンの販売台数が減少しつつあるようです。
フォードも主力だった中型セダン「フュージョン」の販売を終了するかどうか検討しています。
時間差があったとはいえ、なぜ日米両方でセダンは人気を失ってしまったのでしょうか?
今回は、その理由を考察してみます。
セダン販売台数の推移
日米における主要なセダンの販売台数を見ていきます。
アメリカ
2017年の数値は、1〜11月までの販売台数に、同期間の平均を12月の販売台数として加えて算出した予想値です。
とはいえ当たらずといえども遠からずだと思います。
アメリカでは2014〜2015年辺りまでカムリとアコードが圧倒的な販売台数を誇っていましたが、昨年・今年と勢いを失っています。
カムリは今年新型に切り替わったにもかかわらず、販売台数はほぼ横ばいなのが、事態の深刻さを物語っています。
アメリカの2017年1〜11月の販売台数において前年比でプラスだったセダンは、ホンダ・シビックと日産・マキシマの2車種だけだそうです。
中型からコンパクトなセダンへと、ダウンサイジングが進んでいると考えられます。
日本
日本でもセダンの低落傾向は変わりません。
新型が出ると販売台数が一時的に回復するものの、その勢いを持続できずにまた元のレベルに戻ってしまっています。
唯一健闘しているのがトヨタ・クラウンですが、そのクラウンですら新車効果は一時的です。
トヨタ・マークXなどは、長期低落傾向から抜け出せずに苦しんでいます。
フォードの苦悩
フォード・フュージョンの販売台数は、ここのところ右肩下がりです。
2017年の1〜11月の販売台数は、前年同期比で22%も減少しました。
フォード・フュージョンの販売台数は、3年連続で減少する見込みです。
しかし利益率の高いクロスオーバーSUVの販売は好調です。
フォード・エッジは2017年1〜11月の間に128,943台を販売しました。
これは同期間に192,179台を販売したフュージョンの、およそ67%です。
フォード・エスケープは例年通りに今年も年30万台ほどの販売台数をキープできそうですし、フォード・エクスプローラーも前年比でプラスになるのは確実となっています。
そのため利益率が低く、販売も減少傾向にあるフュージョンは、廃止される可能性が高そうです。
なぜセダンが売れなくなったのか?
セダン不振の理由を、フォードのCEOであるジム・ハケット氏は以下のように分析しています。
つまり、燃費の違いが無くなると消費者はセダンとSUVを区別しなくなるため、どちらを選ぶかとなれば、室内が広く荷物も積めるSUVが選ばれるということです。
フォード車を例に取ってみると、フュージョンとエッジの燃費は、高速道路での燃費でわずかにフュージョンが上なだけで、ほぼ同等なのだそうです。
このことが他社にも当てはまるとすれば、トヨタ・カムリ(EPA燃費で46mpg)やホンダ・アコード(同48mpg)がそれなりの販売台数を維持できているのは、トヨタ・RAV4(同32mpg)やホンダ・CR-V(同30mpg)の燃費がセダンに追いついていないため、ということになります。
セダンの販売不振が日本市場で先に起こった理由
アメリカでは2014〜2015年くらいまで、セダンの天下が続いていました。
しかし日本ではとうの昔にセダンは凋落していたのです。
日米において、なぜこれほど大きな違いが生まれたのでしょうか?
上記の燃費の話や、カムリやアコードからカローラやシビックへとダウンサイジングが進んでいることを踏まえると、日本市場で早期にセダンが凋落したのは、燃費が良好な乗り換え候補が多数あったためだと考えられます。
具体的には、軽自動車やコンパクトなハッチバック、中・小型のミニバンなどです。
燃費が同等ならば、使い勝手の良い車が選ばれるのは必然ですから、代替候補の多い日本では、セダンの販売不振が先に起こったのでしょう。
自動車ローンもセダン販売不振の原因!?
フォード・フュージョンはエッジやエスケープよりも安価なのですが、長期のローンを組むと、価格差はほとんど目立ちません。
ちなみにアメリカの平均的な自動車ローンの長さは、なんと69.3ヶ月に達しているそうです。
新車の平均価格は35,309ドルで、購入者は平均して30,945ドルほどを借り入れて購入しています。
月々の平均支払い額は519ドルとなっており、期間でも額でも記録更新中だそうです。
新車ローンの内28.4%は、84ヶ月(7年)間という長期ローンになっています。
また、中古車ローンでも10%が73〜84ヶ月という長期ローンです。
これほど気前よく貸し出されている最大の理由は、低金利の長期化・常態化でしょう。
FRBは政策金利をここ1年間で0.75%引き上げ、1.50%としましたが、アメリカの堅調な景気からするとまだ低いようです。
金利が上がればセダンは復活するかもしれませんが、自動車市場は全体的に冷え込むでしょう。
結局セダンが生き残る道はなさそうに見えます。
出典・参考サイト
Why Ford might kill the Fusion, and why there are problems with that | autoblog.com
US car sales data | carsalesbase.com
The official U.S. government source for fuel economy infomation | fueleconomy.gov
最後まで読んでいただきありがとうございます。以下の関連記事もぜひご覧ください。