VWの排気ガス不正問題を報じない老舗自動車メディア

不正・不祥事,批評

ある老舗自動車情報サイトがある。自動車関連メディアとしては雑誌から始まり、テレビ、そしてウェブへと進出してきた会社だ。

歴史のある会社だから、彼らの試乗記やニュースを信用している人も多いだろう。筆者もその一人だった。過去形なのは、彼らがVWの排気ガス不正問題について無視を決め込んでいるからだ。

VWの不正に関する第一報が報じられたのは9月18日で、9月21日 にはVWのアメリカ法人のCEOが事実を認め謝罪している。この時点で既にVWの株価は急落しており、日本でもトップニュースとしてこの事が取り上げられていた。だが件のサイトでは第一報から10日間が経過した9月28日になっても、VWの不正について一切報じていない。これが報道しない自由というものなのだろうか。

10月15日追記: 10月5日になってようやく、外部のモータージャーナリストの声という形で、VWの不正について取り上げたようだ。遅きに失した感は否めない。

ちなみに他の自動車情報サイトでは一般メディアと同様に、VWの不正について事細かに取り上げている。自動車専門メディアなのだから、それがあるべき姿だろう。

件のサイトはユーザーの利益よりもスポンサーマネーを取ったとしか思えない。だがそれは、彼らが今まで掲載してきた試乗記の信用性を著しく損なわせる自殺行為だ。自動車メーカーに都合の良い記事しか書かない自動車批評なんて、ユーザーはカタログを読まされているのと変わらない。

これが一般的な自動車専門メディアの体質とは思いたくはない。けれどVWの不正について報じたメディアが、もし他メーカーが不正を働いたときに同じように報道するだろうか? それぞれが自動車メーカー各社の「お抱えメディア」になっているのではないか?

今回の不正事件に対する件のサイトの振る舞いからすると、当たらずといえども遠からずだと思う。とある自動車評論家(以前からVWを絶賛しており、今回も「人が死んだわけじゃないから大したことない※1」などと見当違いの擁護をしている人物)が言うように、所詮はエビ・カニで決まる、つまり接待で物事の決まる業界なのだろうか。

救いはないんですか!?

※1 WHOによると、2012年には世界で700万人が大気汚染に関連する病(心臓疾患、脳卒中、肺疾患、肺がんなど)で命を失った。WHOは、大気汚染が今や最大の環境健康問題であるとの見方を示している。