アウディ車から新たなディフィートデバイスを発見!?

不正・不祥事,批評

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アウディのディーゼル車およびガソリン車から、これまでに報告されていない新たなディフィートデバイスが発見されたと、独紙Bild am Sonntagが報じています。少なくとも今年の5月までは装着されていたと見られ、事実ならば2015年9月の「ディーゼルゲート事件」後も、相変わらず不正なデバイスを使用していたことになります。


新たなディフィートデバイスの詳細

Bild am Sonntag紙によると、CARB(カリフォルニア大気資源局)がアウディ車からディフィートデバイスを発見したそうです。

ディフィートデバイスは「AL551」という型式のトランスミッションに装着されていたとのこと。このオートマチック・トランスミッションは、アウディA6、A8、Q5などに使われているものです。また、ディーゼル車とガソリン車のどちらにも、ディフィートデバイスが装着されていました。

偽装工作

ディフィートデバイスは「ウォームアップ機能」として偽装されていました。この機能がオンの状態が続く限り、トランスミッションは「ロー・レヴ・モード」に固定され、燃料を節約──つまりCO2排出量も減少──します。

このモードに入るのは排ガステストのときだけです。ステアリングの舵角が15°以上になると、自動的にキャンセルされます。

排ガステストはシャーシダイナモ(タイヤを載せるローラーの付いた計測台のこと)上で行われるため、舵角が付くことはありえません。試験をすり抜けるという意味では、まさしく「チートデバイス」なわけです。

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アウディが不正をした動機

VWのディーゼル排ガス不正では、NOx排出量をごまかすのが目的でした。ディーゼルの排ガスをクリーンにする触媒は高価なので、NOx排出量自体をごまかして、高価な触媒を使わずにやり過ごそうとしたわけです。

一方、今回のアウディの不正は、CO2排出量をごまかすことが目的だったと見られています。なぜCO2排出量の虚偽報告をする必要があったのでしょう?

CO2と税金

EUでは多くの国が、CO2を多く排出する車ほど、税額が高くなるシステムを採用しています。

よってCO2排出量を過少申告すれば、税額の安い車として消費者にアピールでき、売上も伸びるというわけです。アウディが不正を行う動機は、十分にあったといえるでしょう。

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アウディに与える影響

報道の通りに不正が行われていたとすれば、アウディのブランドイメージが大きく傷つくことは確実です。

VWの排ガス不正発覚以降、フォルクスワーゲン・アウディ・グループ(VAG)の業績を牽引してきたのはアウディ・ブランドでした。アウディの業績が好調なおかげで、2016年には販売台数世界一の座をトヨタから奪還するのが確実視されていたほどです。

しかしアウディも不正となると、VAGの先行きも怪しくなってきます。プレミアムブランドの顧客は対外イメージに敏感なので、アウディの業績低下は避けられないでしょうし、VWのブランドイメージは地に堕ちたままだからです。

またCO2排出量の過少申告=税金の過少申告であり、しかも悪意をもって課税額の小さく見せていたわけですから、明らかな脱税とみなされるでしょう。この場合は本来の税額を納付するだけでなく、何らかのペナルティ(日本だと重加算税など)を課せられるので、アウディは財務的なプレッシャーにも晒されることになります。

モータースポーツから撤退もこれが原因?

VWがWRCから撤退アウディはル・マン24時間レース及びWECから撤退と、VAGがモータースポーツから矢継ぎ早に撤退発表を行いました。

彼らの撤退理由は、昨年のディーゼルゲートにあると思われていました。アメリカだけでも1.5兆円もの賠償金を支払わなければならず、その資金を捻出するために撤退するのだと考えられていたわけです。

しかし彼らはディーゼルゲート発覚後もモータースポーツ活動を継続していましたし、VW・アウディともに、2017年仕様のワークスマシンを開発済みでした。賠償金が相当な額に上るであろうことは昨年の段階でわかっていましたから、撤退するなら昨年末の段階でした方が、無駄な開発費を使わずに済むので良かったはずです。

にも関わらずVAGがモータースポーツ活動を継続していたのは、ディーゼルゲートの賠償金だけなら乗り切れると考えていたためではないでしょうか。そして今回の事件発覚前に、まるで潮が引くかのようにモータースポーツから撤退したのは、彼らがいよいよ危機感を覚え始めたからなのかもしれません。

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