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日産がトヨタを打ち負かす!? ゴーンCEOはビッグマウスか検証

ルノー日産カルロス・ゴーンCEOが、「ミッドイヤーには世界1位の自動車メーカーになると期待している」と、ルノーの株主総会で発言したそうです。

ミッドイヤーというのは文字通り1年の真ん中あたりですから、ゴーン氏は1〜6月までの世界販売台数で、フォルクスワーゲン(VW)やトヨタを追い抜き、トップに立つと予想していることになります。

これまで世界の自動車販売では、VWやトヨタが1000万台程度で拮抗し、ゼネラル・モーターズ(GM)がそれを追う展開となっていました。
なのになぜ、ルノー日産が突如としてライバル各社を一気に追い抜くという話になるのでしょうか?
今回は、ゴーン氏のビッグマウスについて検証します。

トップ画像の出典: Nissan Motor Co. Ltd [CC BY-SA 3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons

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ルノー・日産の現状

市場調査会社のJATO Dynamicsによると、今年の1〜4月の世界販売台数は、VWが332万台、トヨタが306万台なのに対し、ルノー・日産は302万台と、かなりトヨタに接近しています。

順位メーカー名販売台数(万台)
1VW332
2トヨタ306
3ルノー日産302

ルノー日産は2016年に世界で852.8万台を販売し、ブランド別ではGM(同984万台)に続いて4位でした。

そのGMを追い抜き、今年1〜4月にルノー日産を3位へと押し上げた最大の要因は、三菱自動車の買収です。
2016年に934,000台を販売していた三菱自動車を吸収したことで、ルノー日産は世界販売1000万台を狙えるポジションへと飛躍しました。

また、ルノー日産が保有する各ブランドの販売が好調なのも影響しています。
4月のグローバル売上高は、VWは1%減、トヨタは6%増だったのに対し、ルノー日産は8%増ともっとも好調でした。
買収した三菱自動車も5%増、ルノー傘下のダチアも7%増、高級車ブランドのインフィニティにいたっては何と24%増という、劇的な伸びを見せています。

したがってルノー日産の躍進は、決して企業買収によるものだけではないのです。
では、なぜこれほどまでに彼らの車が売れているのでしょうか? 次の項では、その理由について分析します。

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なぜルノー日産は販売好調なのか?

大きく分けて3つの理由があると考えられます。

SUVブーム

新型キャシュカイ

最大の要因は「SUVブームにいち早く乗れたこと」でしょう。

たとえば日産の「エクストレイル(米国名:ローグ)」は、世界で最も売れているSUVですし、「キャシュカイ(米国名:ローグスポーツ)」はヨーロッパでベストセラーとなっています。

ルノーも「カジャール」などのSUVが絶好調で、昨年はSUVの販売台数が28.1%増となったほどです。

三菱自動車もエクリプスクロスなどのSUVラインナップが充実しています。
ルノー日産グループは、SUVでは圧倒的な商品力を有しているのです。

ルノー日産はSUVの世界シェアで12%を占め、世界最大のSUVメーカーとなっています。

新興国市場での強さ

ルノーKwid

日産の低価格ブランドであるダットサンは相変わらず苦戦しているものの、ルノーやダチアは新興国において大きな存在感を放っています。

ルノーのコンパクトSUVである「Kwid」は、昨年インドにおいて146%増というとんでもない伸びを記録し、将来の巨大市場で足がかりを得ることに成功しました。

また、ダチアの「Duster」や、日産の「KICKS」なども、中東やブラジルといった新興国市場で人気を博しています。

さらには買収した三菱自動車も、東南アジアで人気のブランドです。
直近のデータを見ると、フィリピンではシェア2位、タイとインドネシアではシェア4位と、日産以上に売れています。

伸びざかりの新興国市場での強さは、ルノー日産の成長を支える原動力となっているのです。

EV・PHEVでの優位性

ルノーZoe

電気自動車(EV)の開発に早くから着手してきた日産は、この分野のパイオニア的な存在です。
2代目にモデルチェンジする新型リーフの発売も控えていますし、EVのSUVを計画しているとの情報もあります。

ルノーも小型EVのZoeがヨーロッパで大ヒットし、ヨーロッパのEV市場でルノーはシェア1位となりました。

また、ルノー、日産、三菱自動車の各ブランドは、EVのプラットフォームを共通化することをすでに発表しています。
三菱からも新しいEVが発売されるはずです。

2025年には、EVと内燃機関自動車とのコスト差が無くなると見られており、今後EVはさらに販売台数が増えていく公算が高いです。

PHEVに関しては、三菱自動車が先行しています。
イギリスやノルウェーでは、アウトランダーPHEVが大人気です。
また、PHEVの市場自体も伸びていて、ドイツにおける5月のPHEV販売台数は、前年同月比でほぼ3倍という記録的な伸びとなっています。

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トヨタが日産に負ける日

画像の出典: motortrend

日産と対照的なのがトヨタです。
ハイブリッドで成功したトヨタでしたが、典型的なイノベーションのジレンマに囚われ、EV開発で出遅れてしまいました。
燃料電池自動車は画期的ですが、インフラが未整備なので収益化は難しいでしょう。

新興国市場でもトヨタは苦戦続きですし、SUVブームには完全に乗り遅れ、C-HRでようやく巻き返しを図っているところです。

そして日産が力を入れている自動運転に関しては、トヨタはいまだ市販化にこぎつけていません。
トヨタは今年になってNVIDIAと提携し、シリコンバレーで自動運転システムの開発を始めました。
しかし日産がシリコンバレーに開発拠点を築いたのは2013年2月のことです。
オープン・イノベーション(自社だけでなく、他の組織の技術やアイデアを取り入れていくこと)という観点からすると、トヨタは日産に対し圧倒的に遅れています。

おそらく今年の世界販売台数で、トヨタは日産に負けてしまうでしょう。
それはトヨタの提唱する「良い車」が、「最新のテクノロジーとトレンドを詰め込んだ新規性のある車」に敗北するということを意味します。

かつて日本の家電メーカーも、職人技のような「優れた技術」をウリにしていましたが、アップルのiPhoneのような「最新のテクノロジーとトレンド」を詰め込んだ新規性のある商品に敗北を喫しました。

初代iPhoneが発表されたとき、日本の家電メーカーの経営者が「あんなのはウチでも作れる」と豪語していたのを、筆者はハッキリと覚えています。
でも結局は追いつくどころか、韓国や台湾のメーカーにも追い抜かれてしまったのです。

技術やデザインのトレンドに一旦乗り遅れると、それを取り戻すのはかなり難しいということを、日本の家電メーカーの失敗は教えてくれました。
トヨタが躓きつつあるように見えるのは、筆者だけでしょうか。

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参考サイト

Ghosn sees Renault-Nissan passing VW, Toyota as global No. 1 this year | Automotive News

2016年グローバル市場新車販売台数 | JATO

三菱自動車が「拠点再編」で攻める市場は? | 東洋経済オンライン

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