ロータスが約40年ぶりに営業黒字を計上か
ロータスは、イギリスの由緒正しきバックヤードビルダーです。
コーリン・チャップマンの独創的なアイデアの数々を形にし、F1で何度も栄光を勝ち取ってきました。
しかしチャップマンの死後はF1の成績も下降線の一途を辿り、1994年シーズン限りでチームは消滅。
市販車部門の業績もさえず、ここ40年間は一度も営業利益を出せずに低迷したままとなっていました。
そのロータスが営業黒字になるかもしれない! という衝撃的なニュースが飛び込んできたので、今回は最近のロータスの動向と、今後投入予定のニューモデルについてまとめてみました。
ロータスの経営体制の推移
チャップマンが死去した後、ロータスの所有者は次々と変わりましたが、1996年以降はマレーシアの国営自動車メーカー・プロトンが所有しています。
しかしプロトンが親会社になった後も、ロータスが年次営業利益を計上したことはただの一度もありませんでした。
95年に発売されたロータス・エリーゼは同社としては久々のヒット作でしたが、小型・軽量を旨とするライトウェイトスポーツカーだけでは、経営状態の改善には至らなかったのです。
プロトンは世界的に見るとマイナーな自動車メーカーですから、「ロータス」という名前に惹かれて投資したのでしょう。
ところが待てど暮らせど利益を得られず、ロータスは次第にプロトン・グループのお荷物と化していきました。
ラインナップの拡大を計画
しびれを切らしたプロトンは、ロータスのラインナップ拡大を計画します。
つまり安価で軽量なライトウェイトスポーツカーだけでなく、高級スポーツカーにも手を伸ばす決断をしたのです。
ロータスの路線変更を実行に移すべく、プロトンはラグジュアリーカー・ブランドのプロフェッショナルに白羽の矢を立てました。
それが元フェラーリ社の副社長(グローバル・ブランド部門担当)の、ダニー・バハーです。
バハーはフェラーリで働く以前はレッドブルでCOO(最高執行責任者)を務めていた人物で、レッドブルのF1進出にも関わっていたほどですから、プロトンの人選は納得できるものでした。
拡大=散財??
ロータスのCEOに就任したバハーは、エスプリやエラン、エリートなど、かつての名車の名前に現代的なデザインを与えたコンセプトカーを、一度に5台も発表し、新時代の到来を印象づけました。
モータースポーツへの関与も拡大され、インディカーにはロータスエンジン(開発はジャッド)を投入、F1やル・マンのLMP1-Lクラスにも車名スポンサーとして参入するなど、ド派手なプロモーション活動を行うようになります。
ところがバハーは何を勘違いしたのか、赤字企業のCEOであるにも関わらず、プライベートジェットやヘリコプターの費用、腕時計10本の購入代金、さらには自宅の修理費までをもロータス社に負担させるという公私混同ぶりを見せ、従業員から総スカンを食らう失態を演じてしまいました。
インディカーに投入されたロータスエンジンはまともに走るものではなく、ロータスのドライバーとしてレースに復帰したジャン・アレジに恥をかかせただけでした。
ル・マンではマシンの差し押さえを食らってフリー走行を走れない(決勝は走行、エントリーした2台ともリタイア)という醜態を晒し、その後ロータスのモータースポーツプロジェクトはナシのつぶてとなります。
親会社のプロトンが、マレーシアのコングロマリット「DRB-ハイコム」に買収されると、バハーはすぐさま会社を追われました。
バハー時代にはロータスは混乱の極みにあり、金融の問題から、エヴォーラの生産ラインは2年間ほとんど止まっていたと言われています。
販売急回復の理由
ロータスが立ち直り始めたのは、2014年にジャン・マルク・ゲールズCEOが就任してからです。
ゲールズCEOはプジョー・シトロエンの両方でトップを務めたことがある人で、ダイムラーやVW、GMなどでも働いていたことがあります。
自動車業界を知り尽くしている人物と言っても過言ではないでしょう。
そのゲールズ体制で一躍売れ筋モデルに躍り出たのが、エヴォーラ400です。
エヴォーラ400は、世界最大のスポーツカー市場である米国でヒットし、ロータスの経営状態を劇的に改善させました。
エヴォーラ400は今年8月に米国で発売されたばかりですが、瞬く間に売り切れてしまい、米国の顧客は来年3月まで待たなければならないとのことです。
今後発売されるロータスの新型車
新型エリーゼ
ゲールズ氏は、2020年に新型エリーゼをローンチすることを明らかにしています。
エキシージはその2年後だそうです。
新型エリーゼは全幅がやや大きくなるものの、それ以外は現行型とほぼ同じサイズで、車重は1000kg以下に抑えるそうです。
そして次期エリーゼには、ついにパワーステアリングが搭載されます。
ただしダイレクトな操作感を失わないために、油圧式が採用される予定です。
また、アルミバスタブモノコックも見直されるとの噂もあります。
アメリカの衝突安全基準を満たすためです。
カーボンモノコックになるかどうかは不明ですが、軽量・高剛性なものになるのは確実でしょう。
サイドエアバッグも装備されるとのことです。
新型SUV
2016年のロータスは、年間生産台数が2000台に届く見込みですが、ゲールズCEOは将来的に、それを4000台に引き上げたいと考えています。
4000台という目標を達成する切り札として、SUVの販売も視野に入れているようです。
とはいえロータスが作るわけですから、コーリン・チャップマンの信念「シンプルかつ軽量」は守ると、ゲールズCEOもコメントしています。
往年のファンをガッカリさせるようなSUVにはならないはずです。
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