F1が速くなっても面白くはならない

F1,モータースポーツ

F1_2015_フェラーリvsメルセデス

画像の出典: autosport.com


ファンはバトルが見たい

近い将来、F1のタイムが3秒速くなるという記事。

17年のタイヤワイド化で3秒速くなる」とピレリ – AUTOSPORT web

世界的に下落傾向にあるF1の人気を取り戻す施策のひとつらしいのですが……今のF1に必要なのはバトルであって、より速いマシンや、迫力のあるエキゾーストノートではありません。

バトルに必要なのは「コンストラクターズ」タイトル争い

タイトルを争えるようなマシンが2台しかない場合、つまりチームメイト同士でタイトル争いをする場合は、どうしても消極的なバトルになりがちです。今年のメルセデスが典型例ですね。

ハミルトンがちょっとロズベルグの前を抑えただけでも騒ぎになり、チーム側が火消しに追われる。その後はドライバー間に遺恨が残らないように、問題の発生を事前にマネジメントする。そして観客は、高速パレードラップを見せられるのです。

しかしドライバー間のマネジメントに失敗すると、チームメイトを追い出すまで確執が続きます。レッドブルはベッテルがウェバーを追い出し、そのベッテルもリカルドに追い出されてしまいました。セナとプロストも激しくやり合いましたが、結局プロストはマクラーレンを出て行ってしまいました。

チームオーダーの存在

もしドライバー同士が積極的にオーバーテイクを仕掛けるようなバトルを展開しても、チームオーダーが出される可能性が高いです。チームオーダーは禁止されていますが、レッドブルの「マルチ21」のように暗号で伝えたり、どちらのドライバーをあえて不利にするピット作戦を用いることでチームオーダーを実行できますから、完全に禁止することは難しいでしょう。

ライバルチームが必要

つまりドライバーが積極的にバトルをするには、チーム側がリスクテイクせざるを得ない状況を作り出さなければならないのです。そしてチーム側がリスクを許容するのは、コンストラクターズランキングの順位が下がることが懸念される場合です。

コンストラクターズランキングに応じて分配金が支払われますから、チーム側は、少なくともライバルチームのマシンに対しては、コース上でアグレッシブに仕掛けるようドライバーに指示するでしょう。それがコンストラクターズタイトル争いをするチーム間で行われるときこそ、人々の記憶に残るようなバトルが生まれるのです。

結局は戦力均衡に行き着く

スーパーGTは重量ハンデがあるので、「プロレス」だの「やらせ」だのとマニアから批判されています。しかし現代のスポーツイベントにおいては、戦力均衡は必須です。

戦力均衡は社会主義ではない。

例えばアメリカの4大スポーツでは、徹底した戦力均衡策が取られています。なぜ戦力均衡策が取られるかというと、フランチャイズする都市の経済規模によって有利なチームと不利なチームに分かれてしまうためです。

全国的な人気を獲得するためには、全土にくまなくチームを配置した方が効果的です。けれどただチームを配置しただけでは、経済規模が大きい大都市のチームが、田舎のチームを圧倒してしまいます。それだと全国的な人気には繋がりません。

都市チームと田舎チームを戦力均衡させれば、田舎チームが優勝できるようになります。やがて都市チームと田舎チームがライバル関係となり、ファンは我が事のように熱心に応援するでしょう。そのようにして全国的な人気が形成されれば、巨額のスポンサーマネーや高額な放映権料収入を見込めるようになります。戦力均衡は社会主義などではなく、市場拡大のために資本主義の要求によって導入されたのです。

F1も戦力均衡が必要

戦力均衡はライバルを生み出し、ファンの数と市場を拡大します。来季からエンジン開発規制が緩和されるのは吉報ですが、相変わらずワークスとプライベーターの間には、予算の面で大きな開きがあります。F1にも、MLBのような贅沢税が必要かもしれません。