Uberはタクシー業者にひどいことしたよね(消費者にひどいことしたとは言ってない)

テクノロジー・業界分析,批評

自動運転が導入されたらラッダイト運動が起きそう


フランスでタクシードライバーたちの抗議が過激化し、逮捕者が出る騒ぎとなっています。彼らを駆り立てているのは、Uberに対する怒りです。

Angry French taxi drivers block Paris road to protest Uber | autoblog

「(Uberは)ルールを尊重し、税金を収めているタクシー運転手を破壊している!」抗議に立ち上がった1200人のタクシー運転手のひとりはインタビューにそう答えたそうです。

高速道路を行進しようとした彼らは、結局警官隊の催涙ガスで排除されたようですが、デモを阻止したところで問題が無くなるわけではありません。そしてUberのようなサービスが消えて無くなることもおそらくないのです。

トップ画像の出典: autoblog.com


目次

  1. Uberって何?
  2. Uberの起こしたイノベーション
  3. 日本におけるUberの存在意義
  4. 閑話休題 映画TAXI NY
  5. 既存のタクシー会社はどうなるのか?

Uberって何?

日本でのUber(ウーバー)はタクシー配車アプリとして知られていますが、本来のUberは、タクシーサービスを簡単に利用できるだけでなく、誰もがタクシービジネスに参入できるようにするプラットフォームです


つまり自分の車と運転免許さえあれば、空き時間を利用して一般人でもタクシービジネス、すなわち「ライドシェア」を提供できるところに特徴があるのです。

日本に進出したUberも福岡でライドシェアのテストを行っていましたが、いわゆる「白タク(違法なタクシーのこと)」ではないかと国交省から指摘され、サービスの提供を中止してしまいました。

筆者個人としては、無料で客を乗せるドライバーに限定してサービスを継続してもらいたかったです。無料なら単なる「ヒッチハイクアプリ」になるはずなので、国交省も白タク扱いできないはず。大規模イベントの開催時には渋滞緩和の役に立つと思うのですが……。

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Uberが起こしたイノベーション

どの国でもタクシーは規制産業であり、サービスの供給量を行政が制限してきました。


ニューヨークの道端で客を拾えるのは、イエローキャブだけと定められている。

これまでは「管理されていない車両やドライバーが客を輸送するのは危険」「自由化すれば犯罪(ぼったくり、誘拐など)の温床になるかもしれない」という懸念が市民に広く共有されていたため、行政の管理に意義を唱えるものはいませんでした。

しかしUberは──

  1. アプリを使って目的地までの見積もりを出せるようにし、明朗会計を実現した。
  2. 客とドライバーが金銭を直接やり取りしなくて済む仕組みを提供し、客とドライバー双方の安全性を確保した。
  3. 客とドライバーが相互に評価し合う仕組みを作り、悪質な客およびドライバーを追放した。

──などの施策により、行政の規制に頼らずサービスの品質を向上させることに成功したのです。

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日本におけるUberの存在意義

日本では上述のようにライドシェアが禁止されてしまい、Uberの革新性は弱まってしまいました。

しかしタクシー配車アプリとしては、客がどこにいても近くの車両を呼び出してくれますから、車を探す手間をかけずにすぐ乗れて便利ですし、サービスの質も高いので、それだけでも利用するメリットはあるといえるでしょう。

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閑話休題

リュック・ベッソンの映画「TAXI」のNY版。見どころは3つ。

  1. フランス版より増量されてるカーチェイス
  2. スーパーモデルであるジゼル・ブンチェンの美貌
  3. コメディ要素満載

フランス版はスゴ腕タクシードライバー・ダニエルがダメ刑事・エミリアンをなじると、エミリアンの立つ瀬が無かった。けれどNY版では主人公の黒人女性・ベルの愛嬌のおかげで、ダメ刑事・ウォッシュバーンとの掛け合いが明るくていい。何も考えず楽しめる良作。プライムに入ると無料で見れます。→Amazonプライム・ビデオ

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既存のタクシー会社はどうなるのか?

Uberや類似したサービスは世界中で普及しつつありますが、その過程で冒頭のフランスのように反対運動も起こっています。

また、カリフォルニアではUberのドライバーは請負業者ではなく、Uberの社員であるとみなす動きがあり、保険等の社会保障コストをUber社側に負担させようと州政府が躍起になっています。

ウーバーの「二枚舌」にNO! カリフォルニア州労働委員会が「運転手は、社員だ」と判断 | Market Hack

他にもドライバーの報酬が安すぎてUberだけでは食べていけないなど、問題は山積しています。

権力が既得権者を保護する

とはいえ既得権益を持つ側が、イノベーションを起こした側に競争で勝つことはまずありません。しかし政治権力の介入があれば話は別です

日本では国交省の介入がありました。民主主義国家においては、集票装置となり得る組織および集団は、投票する見返りに自分たちの既得権益を政府に保護してもらえます。タクシー業界もその力を行使したといえるのです。

日本のタクシー業界は自動運転で滅び、Uberは自動運転で繁栄する。

権力に保護された日本のタクシー業界は、数年間は生き残るでしょう。しかし自動運転が実用化されたなら、彼らは滅んでしまいます。日本のタクシー業界はUberと異なり、テクノロジー企業ではないためです

UberのCEOであるトラビス・カラニック氏は、将来的な自動運転車の投入をすでに明言しており、車両の開発に入っています

一方、日本のタクシー業界はあくまで業界保護を目的としており、戦略的には数周遅れにされていると言っても過言ではありません。日本交通・川鍋社長のインタビューを引用します。


川鍋:よく見ると、確かに自動運転になると最終的にはいらなくなるかもしれないですけど、実はそこにいくまでって、タクシー産業のために事故防止とかで機械が進化していくんです。ですから、当面は追い風だぞと。結局、ものすごくシンプルな移動はなくなったとしても、逆に移動のコストが下がれば下がるほど、高齢者の方が移動するとか、それこそ子どもだけで移動するとか、そういうニーズが出てきたときに(価値が出てくる)。オックスフォードのリサーチで、一番なくならない産業って「セラピスト」とかなんです。

聞き手:なるほどね。心、マインドの話ですよね。

川鍋:結局、心と愛を注ぐっていう。じゃあ、我々はそういう存在になればいいじゃないかと思うんですよね。

聞き手:ホスピタリティ・ビジネス。

川鍋:ホスピタリティ。移動でもまったくいらないっていうのはたくさんあるけども、移動のピラミッドがあるとすれば、やっぱりそういう人(のところ)に行って移動してもらう。完全自動運転の途中までは、まず高速(道路限定)とかになるでしょうから。高速の乗り口まで、そして降りたら代わるとかね。そういう意味で、タクシー産業自体はそうそうなくならないと思います。

自動運転でタクシーはなくなる? 日本交通・川鍋社長「なくなりません、進化します」

ホスピタリティ・ビジネスに転換すれば、自動運転時代にもタクシー会社は無くならないと主張しています。

しかしお年寄りを送迎する自動運転タクシーに乗り込むのは手の空いている介護士であって、タクシードライバーではないのです。その介護士もアプリで集められるわけですから、タクシー会社は存在意義を失います。

ところが存在意義の無い集団こそ、もっとも厄介な政治集団になることが多いのです。権力に保護されたタクシー業界が税金を無駄遣いするだけでなく、日本の自動運転技術の進歩にまで悪影響を及ぼさないかと、フランスの大騒動を見ていて少し不安になりました。

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