【不正】 スズキと三菱で何が違う?

不正・不祥事,批評


決定的な違いはユーザーに被害があるかどうか

スズキが燃費試験で不正を働いたという一報が入った際には、「やっぱり三菱以外もやってた」という反応が大半でした。

しかしスズキ側の会見後は、冷静な見方が広まりつつあります。スズキの不正は三菱とは質の異なるものだったためです

今回の不正における、スズキと三菱の違いとはなんでしょうか。ひとつひとつチェックしてみたいと思います。


目次

  1. 走行抵抗値測定方法の違い
  2. 悪意の有無
  3. 期間の長さ
  4. 燃費を巡る不毛な争い

走行抵抗値測定方法の違い

惰行法とは?

国が定める走行抵抗値の測定方法は「惰行法」です。

惰行法は、特定の車速区間でギアをニュートラルにし、10km/h減速するのに何秒かかるかを計測します。国の定める惰行法では、10km/h刻みで時速20〜90km/hまでの間を計測しなければなりません。

10km/h刻みといっても、20-30km/h、30-40km/hという区切りで行われるわけではないので注意が必要です。たとえば10km/hの走行抵抗値を惰行法で取る場合は、15km/hで走行中にギアをニュートラルにし、5km/hに減速するまでの秒数を計測します。プラスマイナス5km/hの範ちゅうで計測するわけです。

計測は3回行い、その平均値を採用します。しかし無風の日でも突如として風が吹くことはありますし、気温の変化でも計測結果にバラつきが生じることから、4回、5回と計測し直すこともあるようです。

スズキの場合

スズキは惰行法による走行抵抗値の計測も行っていました。しかし計測を行う相良テストコースが海に近く、風の影響でデータにバラつきがあったため、タイヤ・ブレーキ・トランスミッションなどの部品ごとに室内計測した走行抵抗値を積み上げたものを採用していたといいます。

惰行法は90km/hという高速域でも走行抵抗を計測しますから、風の影響が強い場所では、計測作業が困難を極めたのでしょう。スズキ側の主張によると、軽量化や転がり抵抗の低いタイヤなどのせいで、最近の自動車は風の影響を受けやすいそうです。

三菱の場合

三菱の場合は、そもそも惰行法による試験を行っていませんでした

三菱の計測方法は「高速惰行法」というものです。150km/hから90km/hの車速で、1秒ごとに何km/hずつ減速するかを計測します。アメリカで採用されている方法です。

しかし会見で三菱側は「高速惰行法に類するもの」とコメントしていますから、実際はどの国の法令にも合致しない、三菱オリジナルの測定方法だった可能性があります

また、三菱の不正には机上の計算だけで済ませていた車種もあるなど、データの計測自体を行っていないケースも含まれています

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悪意の有無

スズキの場合

スズキ側は会見で、「燃費を良く見せようという意図はなかった」と繰り返し主張していました。惰行法で新たに追加調査した実測データと、既存の申請値との差は5%以下で、惰行法で認められている誤差の範囲内に収まっていたからです

ちなみに惰行法での誤差は、一般的に10%程度と言われています。

三菱の場合

三菱は「高速惰行法に類する方法」で計測した走行抵抗値を、意図的に小さくとっていました。通常はデータの近似曲線の中央値を取るらしいのですが、三菱はあえて下の方を取って誤魔化していたといいます。

日産側の調査では、実際の走行抵抗は7%高かったとのこと。三菱はその7%を、走行抵抗の実測方法とデータの操作で稼いでいたのです。

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期間の長さ

スズキの場合

2010年ごろから不正が始まったとスズキ側は主張しています。

しかしその根拠は「タイヤなど部品ごとの試験設備がそろったのがその時期だから」というだけで、社内調査の結果として出した結論ではないようです。

三菱の場合

1991年ごろから不正に手を染めていたようです。しかも2001年1月には高速惰行法と惰行法との比較試験を社内で行っており、「高速惰行法だと、結果に最大で2.3%の差が生じる」と知っていたのです。

しかし2015年11月に日産が指摘するまで、惰行法が使われることはついにありませんでした。

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燃費を巡る不毛な争い

スズキ側の会見で「惰行法の誤差は一般的に10%程度」と聞いたとき、筆者は耳を疑いました。だって三菱が誤魔化していた走行抵抗は7%でしかないのですから。

三菱が違法行為を働いたのは事実です。しかし誤差レベルの不正でここまで叩く必要があるとは思えません。少なくとも、株価が半分になるような問題ではないと思います。

VWのスキャンダルが発覚してからというもの、自動車メーカーにまつわる不正・不祥事が次々と発覚しています。それらで必ず目につくのが、行政の怠慢です。

不正を"させない"ことこそ国の利益

VWのディフィートデバイスにしろ、三菱・スズキの違法な計測方法にしろ、行政がちょっと工夫すれば防げるような不正ばかりです。

VWの排ガス不正は、民間のNPOと大学が暴きました。少なくともNPOや大学は、行政ほどには予算も人員も潤沢ではないはずです。

今回のスズキの不正は、海外では行われていないといいます。例えばインドでは行政の担当者が計測に立ち会うので、不正を行いようがないそうです。なぜ日本ではメーカー任せなのでしょう。

人間は追い詰められれば誰もが不正を働く、弱い生き物です。日本の経済状況が厳しさを増す中、性善説では企業の不正を防げないでしょう。不正防止の手段を整備しなければ、日本ブランドの信用失墜が続くだけだと思います。それは日本の損失以外の何ものでもありません。

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