自動車メーカー各社のEV関連動向まとめ
猫も杓子も電気自動車
テスラ・モデル3の人気ぶりを見た自動車メーカー各社が、矢継ぎ早にEV計画を発表しています。そこでそれらの動きを簡潔にまとめてみました。
トップ画像の出典: netcarshow.com
目次
- ドイツ
- VW・アウディ・グループ(VAG)
- BMW
- メルセデス・ベンツ
- その他ヨーロッパ
- ルノー・日産・三菱
- プジョー・シトロエン(PSA)
- ボルボ
- アメリカ
- ゼネラル・モーターズ(GM)
- フォード
- 日本
- トヨタ
- ホンダ
- スバル
- リチウムが足りない!?
ドイツ
VW・アウディ・グループ(VAG)
排ガス不正スキャンダルから立ち直るためにも、EVで成功してクリーンなイメージを取り戻したいVAG。そのEV計画が次第に明らかになってきました。
まずVWは、2020年頃までに「MEB」と呼ばれるEV向けアーキテクチャを投入することがすでに決定しています。このMEBを用いて、VWはEVを現行の9車種から20車種まで拡充する予定です。
アウディも2018年から毎年EVの新車を発表するとしています。最初に発表されるEVはSUVとなる予定で、航続距離は500kmオーバー。名前は「e-tron quattro」が有力視されています。
BMW
i3やi8で、レンジエクステンダー(以下、REx)やPHV市場に先鞭をつけたBMWですが、EVに関してはやや慎重派のようです。iNEXTと呼ばれる自動運転機能を備えたEVが登場するのは2021年になると、BMWは株主総会で明らかにしました。
i5というSUVのRExが準備中との噂もあるのですが、出るとしても2020年頃になるといいます。2018年にはi8ロードスターが発売されるとはいえ、BMWのEVラインナップは他社と比べると見劣りするのは否めません。
しかもUS仕様のi3 RExにはEVからエンジンへと切り替わる際に失速する不具合があるとして訴訟沙汰になっていたり、日本市場からはiシリーズを撤退させるとの観測もあるなど、EV戦線でのBMWは旗色が悪いです。
メルセデス・ベンツ
メルセデスは2020年までに4つのEVモデルをリリースする予定です。ドイツ政府がEVに補助金(約1500億円)を出すことを決定したため、それを利用して販売台数を一気に伸ばそうという魂胆でしょう。
サルーンはCクラスとSクラスに、SUVはGLAクラスとGLCクラスに該当するEVを、それぞれ2車種ずつ計4台出す予定だそうです。
EV用アーキテクチャ「MEA」を採用し、後輪駆動と4WDのどちらにも対応します。モーターのパワーは102ps〜543psを予定しているとのことですから、もしかしたらAMG仕様のEVも用意されるのかもしれません。航続距離は400kmを目指しています。
その他ヨーロッパ
ルノー・日産・三菱
ルノー・日産アライアンスは、ルノーの小型EV・ZOEが累計生産5万台、日産・リーフが累計販売20万台と、すでにEVで大きな実績を残しています。そして日産の傘下入りした三菱も、EVに力を入れてきたメーカーです。
資本提携したばかりの日産と三菱ですが、「EVパワートレインの共有」という具体的な話がすでに持ち上がっています。ルノー・日産・三菱の3社は、EV市場において大きな存在感を発揮するに違いありません。
プジョー・シトロエン(PSA)
ルノーと同じく、来るEV社会を他社との提携で乗り切ろうというのがPSAです。中国市場進出の際に資本提携した東風汽車と、EV用プラットフォーム「e-CMP」を共同開発します。
しかし実際にEVがリリースされるのは2019年以降になるそうで、出遅れ感は否めません。
ボルボ
ボルボもパワートレインの電動化に積極的な会社です。すべての車種に2種類のハイブリッドモデルを投入する、野心的な計画を持っています。しかしバッテリーEVの投入は2019年頃になる予定です。
2025年までに電動化車両(EV・PHEV)を累計で100万台販売したいというボルボですが、果たして上手くいくでしょうか。
アメリカ
ゼネラル・モーターズ(GM)
2016年10月から、シボレー・Bolt EV(PHVのVoltではない)の生産を開始するGM。このアメリカ最大の自動車メーカーは、テスラやルノー・日産としのぎを削るEV市場のトップランナーです。
レンジエクステンダーEVにも参入していましたが、その第1弾であるキャデラック・ELRの生産中止が早くも決まっています。次期型も作らないそうです。バッテリー性能の向上したため、もはやレンジエクステンダーは不要とGMは考えているのでしょう。BMWとは対照的ですね。
フォード
フォードは「スマートモビリティ計画」を掲げ、2020年までに45億ドルを電動化車両に投資する予定です。ラインナップの40%以上に、EVやPHVが設定されます。
でもフォードの重役が、「EVは100マイル(160km)走れば十分」「車両価格は3万ドル台をキープする」などとコメントしており、ちょっと心配になってきます。これから登場する「フォーカス・エレクトリック」の航続距離も、ぴったり100マイルだそうです。
その理由についてフォード側は、「航続距離の長さとバッテリーのコストは比例するため、あまり航続距離を延長すべきではないから」と答えています。
しかしテスラ・モデル3が大ヒットした理由は、航続距離と低コストの両立に他なりません。フォードの発想は時代遅れだと思います。
韓国
ヒュンダイ・キア
ヒュンダイは、「プリウスキラー」のハイブリッドカー「アイオニック」のバリエーションのひとつとして、EVを設定します。
ただ、このアイオニックEVもフォードと同様の考え方に囚われているようで、航続距離は176kmに留まっています。
日本
トヨタ
燃料電池車に注力しているトヨタですが、現在の主力車種がHVやPHVですから、バッテリーの開発においては世界の最先端を突っ走っています。
2016年3月には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトにおいて、トヨタと東京工業大学の研究グループが、リチウムイオン電池の3倍以上の出力特性を持つ全固体電池の開発に成功したと発表されました。
リチウムイオン伝導率を上回る超イオン伝導体が発見されたことで、リチウムイオン電池では実現できなかった高速充放電が可能になるとのことです。
ホンダ
ホンダは燃料電池車「クラリティ」に、EVとPHVバージョンを追加すると発表しました。
クラリティは燃料電池セルをボンネット内に収めてあるため、EVやPHVへのコンバージョンが容易なのだとか。航続距離等は不明ですが、「クラリティ エレクトリック」は2017年に登場する予定です。
スバル
スバルは「際立とう2020」という経営ビジョンに基づき、2018年にPHVを、そして2021年にはEVを投入する予定だと明らかにしています。PHVやEVの投入時期が遅すぎると思いますが、スバルの経営規模では仕方ないのでしょう。
とはいえ新型インプレッサから導入されるSGP(Subaru Global Platform)
は、きっちりEVにも対応しています。開発面での出遅れは無いはずなので、前倒し投入もあるかもしれません。
リチウムが足りない!?
電気自動車の普及を阻む最大の要因は、充電インフラだと常々言われてきました。しかし今後はリチウム不足がそれに取って代わるかもしれません。
炭酸リチウムは高騰し続けており、現在では2015年の平均価格よりも47%上昇しているそうです。炭酸リチウムの需要は2025年までに現在の3倍に膨らむと予想されています。
ただしリチウムは賦存量が豊富なので、足りなくなるということはなさそうです。しかしリチウム価格の上昇で電池価格が高止まりする可能性は高く、EV普及のブレーキ役になるかもしれません。
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