これからはEVトラックの時代!? ニコラ・ワンが7000台を受注
テスラ・モデル3は発表直後に37.3万台もの予約を受注し、世間の話題をさらいました。モデル3は約400万円なので、およそ1兆5000億円分の予約がなされたわけです。
そのモデル3ほどではありませんが、金額ではそれに次ぐ規模の予約を集めているEVがあります。ニコラ・モータースが開発中のEVトラック、ニコラ・ワンです。同社によればニコラ・ワンはすでに7000台の予約を受注、その価値は23億ドル($1=¥105で2415億円)を越えると主張しています。
トップ画像の出典: nikolamotor.com
目次
ニコラ・モータースとは?
ユタ州・ソルトレイクシティにある、EV製造のベンチャー企業です。創業者は現CEOのTravor Milton氏。会社名はテスラ・モータースと同じく、Nikola Tesra技師にちなんでつけられました。
現在の製品ラインナップはEVトラックの「ニコラ・ワン」と、電動UTVの「ニコラ・ゼロ」だけです。
ニコラ・ワンのスペック
EVトラックのニコラ・ワンは、いわゆるトレーラーヘッドです。パワーは2000ps、トルクは510.6kgf・mというモンスターで、同じくらいのサイズのディーゼルトラックと比較しても、4倍のパワーと2.2倍のトルクを誇っています。
長大な航続距離を実現した秘密
EVでもっとも気になるのは航続距離ですが、ニコラ・ワンは1280〜1920kmと、普通のディーゼルトラックよりも長い距離を走ることが可能です。
航続距離の秘密その1 大容量バッテリー
18650バッテリーを32,000個つなぎ、320kWhの大容量バッテリーとしています。320kWhというと、テスラ・モデルS P90Dの3倍の容量です。
航続距離の秘密その2 タービンによるレンジエクステンダー
400kWタービンで発電することで、航続距離を伸ばしています。このタービンは1秒以内にオン/オフを切り替えられるとのことです。燃料は天然ガス・ディーゼル・ガソリンのいずれかを選択可能ですが、標準仕様では天然ガスとなっています。ガスタンクの容量は約380Lです。
レンジエクステンダーと聞くと、「もっと多くのバッテリーを積んで、完全なEVにすればいいのに」と誰もが思います。ツイッター上でもその質問をしたユーザーがいたのですが、公式アカウントは「1600kmの航続距離をバッテリーだけで達成しようとすると、積載量が2/3になってしまうんだよ」と答えていました。
航続距離の秘密その3 軽量な車体
ニコラ・ワンは同クラスのディーゼルトラックと比較しても、450〜900kgほど軽量です。
大容量のバッテリーを搭載しているのに軽いわけは、アルミやカーボンを多用しているからです。フレームはスチールとアルミを組み合わせたものですし、フィフス・ホイール(トレーラーを連結する部分のこと。牽引できる重量に大きく影響する重要な部分)はフルアルミ製、人間が乗るキャビンはフルカーボン製となっています。
EVトラックの採算性
ニコラ・モータースのプレスリリースによると、ニコラ・ワンと同クラスの平均的なディーゼルトラックは、100万マイル(160万km)あたり40万ドルの燃料費と、10万ドル以上の修理費がかかっているそうです。
ニコラ・ワンのようなトラックは、アメリカではクラス8に分類されます。クラス8トラックは、平均すると1年あたり6.9万マイル走る※1そうなので、100万マイル走るまでには14年半かかる計算です。
ニコラ・ワンの燃料コストは、同クラスのディーゼルに対し半分だと同社は主張しています。つまり100万マイル走ると20万ドルの燃料費が節約できるわけです。
ニコラ・ワンの新車価格は37.5万ドル。一方、ディーゼルのクラス8トラック(寝台付き)の新車価格は、12〜15万ドル程度ですから、100万マイルあたりの総コストを比較すると……あれっ? ニコラ・ワンの方が割高ですね。
※1 oilgasmonitor.com Natural Gas Fuel for Class 8 Trucks より
軽いトラックは儲けやすい
しかし公道を走るトラックの最大重量は法律で決まっていますから、軽量なトラックならばより多くの荷物を運べるというメリットがあります。そしてニコラ・ワンは、同クラスのディーゼルトラックよりも450〜900kgも軽量です。
アメリカの運送業者は、平均して1ポンド(0.45kg)で50セントの売上を得ているそうです。よってニコラ・ワンは1回の輸送につき、ディーゼルトラックよりも売上を最大1,000ドル増やせます。
ニコラ・モータースによれば、月の売上を最大3万ドル増やせるそうです。ということは年間で36万ドル、14年半=100万マイル走ると、なんと522万ドルも売上が増えることになります。
もちろん上記の計算は、取らぬ狸の皮算用でしかありません。貨物を常に満載できるわけではありませんし、電池の劣化等の問題が発生すれば、増えた分の利益は消し飛んでしまうでしょう。ニコラ・モータースは電池を7年もしくは100万マイルまで保証するといいますが、はたして上手くいくのでしょうか。