EVはオワコン!? なぜ急に販売不振に陥ったのか? 不振は今後も続く?

テクノロジー・業界分析

トヨタ bZ4X(2023年モデル)

EV(電気自動車)の販売不振が顕著になってきています。ドイツでは補助金が打ち切られたことで、2023年12月のEV登録台数が前年同期比で半減してしまいました。また、スウェーデンやオランダ、クロアチアなどでもEVの登録台数が減少しており、ドイツだけが減少しているわけではない点も気がかりです。

EV販売の不振は長引くのでしょうか。今回は最近のEV販売に関するニュースから、EVの先行きについて考えてみたいと思います。

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2024年初頭におけるEV販売の状況

ドイツでは補助金が打ち切られた

ドイツのEV補助金は、ユーザーに最大4,500ユーロ(約72.4万円)が支払われる他に、メーカーに対しても2,250ユーロ(約36.2万円)が支払われてきました。つまり合計6,750ユーロ(約108.6万円)も税金で値引きしていたわけです。

この補助金の財源となっていたのは、気候変動基金(KTF)でした。しかしKTFには新型コロナウイルス対策予算の600億ユーロ(約9.65兆円)が転用されており、これは違憲であると憲法裁判所が判決を下したため、返還しなければならなくなりました。

ドイツでは2016年以降、約210万台のEVの購入に対し、100億ユーロ(約1.6兆円)の補助金が拠出されています。ドイツでのEV需要は、この「大盤振る舞い」があってのものだったわけです。

テスラやフォルクスワーゲンなどは、補助金との差額を補償するとしていますが、メーカーがこの負担をいつまで続けられるかは不透明です。

2024年1月の世界EV販売台数

2024年1月の世界EV販売台数が明らかになりました。前年同月比だと69%成長していますが、前月(2023年12月)比だと26%の減少となっています。販売台数の半分以上を中国が占めている状況に変わりはなく、中国経済の減速が今後もEV販売に悪影響をもたらすことは避けられないでしょう。

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テスラの2023年第4四半期決算が予想を下回る

テスラ モデル3(2024年モデル)

テスラの販売台数は伸びており、2023年は前年比38%増の181万台を販売しました。しかし2023年第4四半期の営業利益は、前年同期比47%減という大幅な減少を記録。営業利益率も8.2%と、前年同期の16.0%から大きく悪化してしまいました。

利益率が悪化している原因は、テスラが大幅に値下げしているためです。中国製の安価なEVの台頭が、その背景にあります。

中国製EVには、テスラ以外のメーカーも頭を悩ませています。VW ID.3のドイツ本国での価格は40,000ユーロ(約643万円)なのに、中国では16,000ユーロ(約257万円)で販売しているのです。そのくらい安くしないと中国では売れないということなのでしょう。

フォルクスワーゲン ID.3(2024年モデル)

ドイツの高級車ブランドがEVラインナップを充実させたことで、テスラは高価格帯でも思うように販売台数を伸ばせていません。アメリカでは2023年に、テスラ モデルSが26,700台(推定)販売されましたが、同期間のBMW i4の販売台数は22,583台であり、モデルSに肉迫しています。もはやテスラ1強の時代は終わったといえるでしょう。

BMW i4(2022年モデル)

テスラの販売台数が伸びているのも、結局のところ大幅な値下げがあったからです。薄利多売で業績を伸ばすには、モデル3よりもコンパクトなモデルを投入するしかありませんが、期待のモデル2(と呼ばれることになるであろう新型車)の登場は、2025年後半に生産ラインに登場する予定だとイーロン・マスク氏はコメントしました。となるとデリバリーが開始されるのは2026年になります。テスラの苦境はしばらく続きそうです。

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ユーザーはEVよりもハイブリッドを選んでいる

フォードもEV販売が減少したが……

フォードもEVに力を入れてきたブランドですが、やはりEVの販売は減少しています。フォードの2024年1月のEV販売台数は4,674台で、前年同月の5,247台から10.3%減少しました。しかしハイブリッドの販売は好調で、前年同月比で実に43%も増加(7,816台→11,157台)したのです。
フォードはEV(マスタング マッハEとF-150ライトニング)の生産を削減することを余儀なくされています。

フォード マスタング マッハE GT(2021年モデル)

GBK Collectiveの調査によると、アメリカ人の半数以上がEVに興味を持っているようですが、真っ先にテスラに飛びついたアーリーアダプターたちとは異なり、この潜在顧客たちは保守的で堅実です。価格や労力の面でガソリン車に近いレベルをEVに求めており、より現実的な視点を持っています。そして「EVを検討するとしたらどのブランドか?」という質問に対し、この潜在顧客グループの47%が選んだのは「トヨタ」でした。ちなみにテスラは41%で2位、3位はフォードです。ハイブリッドを重視するトヨタの保守的なアプローチは、それ自体が自動車メーカーとしての姿勢を示すメッセージとなり、保守的な顧客層に訴えかけているのかもしれません。

実際、ガソリン車の所有者は、EVよりもハイブリッドに移行しています。S&P Global Mobilityの調査によると、2023年10月には、ガソリン車を所有する世帯の9.9%が、次の車にハイブリッド車またはPHEVを購入したそうです。一方、EVに移行したのは5.7%でした。
原因として考えられるのはコストです。アメリカにおけるガソリン車の平均月々支払額は675ドルなのに対し、ハイブリッド車は670ドルとわずかながら安くなっています。しかしPHEVは798ドル、EVにいたっては828ドルとかなり高価です。

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トヨタが販売台数の記録を更新。世界最大の自動車メーカーに

レクサス RZ 450e(2023年モデル)

トヨタは2023年に1,123万台を販売し、過去最高を更新しました。2位のVWは924万台なので、大差をつけています。

北米で7.0%増、欧州で9.1%増、そして日本では29.8%増という大幅な伸びとなりました。一方、競争が激化している中国では1.7%減となっています。

販売台数のうち電動車は367万台で、ハイブリッド車が342万台と全体の9割以上を占めています。ハイブリッド車は前年比で35.0%増と大幅に伸びており、トヨタの好調に大きく貢献しました。

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まとめ: EVの販売不振は市場の変化であり、しばらく続く

EVの販売不振の原因は補助金打ち切りだけでなく、市場の変化が原因でしょう。高価で不便でも購入してくれたアーリーアダプター層の需要が一段落し、今後はアーリーマジョリティにEVを販売していかなければならない局面にさしかかっていると考えられます。

アーリーマジョリティは情報感度こそ高いものの、新しい製品の購入には慎重で、説得には合理的な説明が求められます。現状のEVは価格が高いだけでなく、充電や航続距離の面でハイブリッド車に対して優位性が無いため、EVメーカーはこの層を説得するには至っていないのでしょう。結局のところバッテリーや充電の問題を技術的に解決するより他なく、それにはまだまだ時間がかかりますから、EVの販売不振は今後2~3年は続くのではないかと思います。状況に変化があるとすれば、2025年です。EUの排出ガス基準が厳しくなるため、EVシフトが加速する可能性があります。

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出典・参考サイト

欧州の新車販売、昨年12月は1年5カ月ぶり減少-ドイツでEV売れず – bloomberg.co.jp

ドイツ政府が「EV購入補助金」を突然打ち切ったワケ 財源確保の意外な落とし穴とは – merkmal-biz.jp

米テスラ、10~12月期営業利益47%減 値下げが圧迫 – sankei.com

Ford’s EV Sales Drop 11% While Hybrids Surge 43% In January – carscoops.com

Despite the bad press, half of America is still considering an EV or hybrid car — they just want them to be cheaper – businessinsider.com

Gasoline households migrating to hybrid cars more than to EVs – spglobal.com

トヨタ世界販売台数、4年連続で世界一…過去最高の1123万台 – yomiuri.co.jp

イノベーター理論とは?5つのタイプと具体例を解説! – onemarketing.jp

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