VWのディフィートデバイスはアウディが作った
不正の発端は20年前
VWは排ガス不正対象車を買い取る方向で、アメリカ当局と大筋合意しました。VWは最大50万台を買い取る方針です。しかし買い取りの対象車種は2リッターディーゼルだけとされており、問題すべてが解決したわけではありません。
排ガス不正対象車のオーナーに賠償を行う基金の設立にも、VWは合意したと報じられています。基金の総額は10億ドル以上になりそうです。
賠償への動きが加速する中、VWが不正を行った経緯も明らかになってきました。
目次
20年前から不正を模索
20年ほど前、VWの内部では排ガス不正の兆候がすでにあったそうです。
そして1999年になると、その動きは具体的な成果となって表れました。アウディがエンジンの特定の機能をシャットダウンするシステムを作り上げ、排ガス試験のすり抜けが可能になったのです。
そして2005年から昨年にいたるまで、VWは環境基準値を大幅に上回る排ガスを社会に撒き散らしてきました。
なぜ不正をする必要があったのか?
筆者はVWはディーゼル排出ガス規制をクリアできなかった、あるいはクリアしたとしてもコスト競争力がなかったのではないか?と推測しています。
排出ガス規制の強化と、不正デバイスの開発・使用の時期がほぼ一致していることがその根拠です。
ヨーロッパの排出ガス規制がEURO2になったのが96年、EURO3は00年、EURO4は05年。一方、排ガス不正は96年ごろには内部で動き始めていて、99年に不正デバイス完成、使用開始は05年と、動きのあったタイミングがほぼ重なっています。
排出ガス規制 | NOx(g/km) | PM(g/km) |
---|---|---|
EURO 2(’96~) | 0.9※1 | 0.1 |
EURO 3(’00~) | 0.5 | 0.05 |
EURO 4(’05~) | 0.25 | 0.025 |
※1 NOx+HCの数値で規制されていたようだ。
VWが支払う賠償金額
市場関係者は、排ガス不正にまつわるすべてのコスト、つまり修理や賠償等々のコストすべてをひっくるめて、およそ230億ドル($1=¥110換算で約2.52兆円)と予想しているようです。
しかしVWを訴えている米国司法省は、460億ドル(5.06兆円)の制裁金を課そうとしています。
さらには消費者やVWのディーラー、株主などからも、VWは訴訟を起こされています。彼らにも相当額の賠償金を支払わなければならないでしょう。
VWが支払う賠償金は、上手くいけば230億ドルで済むかもしれませんが、最悪の場合には、460億ドルを大幅に上回る金額を支払う羽目になると思われます。
いまだ売上回復せず
原油安を受け、欧米の自動車販売は好調を維持していますが、イメージが地に落ちたVWの売上はいまだに回復していません。
VWの2016年第1四半期のグローバル販売台数は、前年比−1.3%でした。意外と健闘しているように見えますが、地域別の販売台数を見ると、これまでになかった変化が生じています。
お膝元のドイツでも……
1-3月期のVWの販売台数が前年比でプラスとなったのは、中・東欧(+2.1%)、アジア・パシフィック(+4.8%)だけでした。
しかし台数的には中・東欧の増加はわずか(前年比+1,100台)で、増加分の大半は中国(+6.5%)です。中国では前年比で+44,800台を記録しています。
ところが中国以外では、VW車の売れ行きは惨憺たるものです。アメリカでは−12.5%、南米では−31.3%と、大幅な減少に見舞われています。
そしてVWの母国ドイツでも−3.8%と減少に転じました。排ガス不正発覚直後は買い支える動きすらあったドイツの消費者からも、VWは見放されつつあるのかもしれません。今後VWは、ますます中国頼みになっていくはずです。
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