アメリカはディーゼルにとって修羅の国
VWがディーゼル排気の不正に手を染めた原因のひとつとして、アメリカの厳しい排ガス規制が上げられています。日本やヨーロッパと一体何が違うのでしょうか?
アメリカのディーゼルエンジン事情
日欧の排ガス規制は、使用する燃料によって規制値・規制項目が異なります。つまりガソリンとディーゼルでは異なる基準が適用されるわけです。
しかしアメリカの排ガス規制では使用燃料ごとの基準の違いは認められず、一律の規制値・規制項目が適用されます。ディーゼルだからといって特別扱いはされず、合衆国への忠誠を誓わない汚物は消毒されるマッチョな世界観……それがアメリカなのです。
さらには排ガスの測定値を5万マイル・12万マイル走行時の性能で計るために、触媒など排ガス浄化装置が劣化すると、規制をクリアできないこともあります。
しかもアメリカの軽油は硫黄分が多く、触媒やDPFを容赦なく痛めつけてきます。アメリカはディーゼルエンジンにとって、情け容赦のない修羅の国なのです。
とあるドイツメーカーの超ディーゼルエンジン
そんなアメリカに世紀末救世主として乗り込んだのが、メルセデス・ベンツでした。彼らは2007年に、E320ブルーテックを2.4万マイルまでの制限つきでリース販売しました。それ以上の距離となると、Tier2 bin5と呼ばれる規制をクリア出来なかったようです。

出典: www.caranddriver.com
ブルーテックの名が付けられていますが、この車にはSCRは搭載されていても、「尿素」SCRは搭載されていませんでした。尿素SCRを搭載したのはその次のW212型になってからです。
尿素SCRのシステムは重量がかさみますし、2.5万kmごとに尿素水を補充しなければなりません。猛毒のアンモニアを外部に放出するわけにはいかないので、複雑な制御も強いられます。そのような三重苦を背負っているため、メルセデスとしてはできれば使わずに済ませたかったのでしょう。
実はホンダや日産も尿素SCRを使わずに米国のTier2 Bin5規制をクリアしようと、開発していた経緯があります。
四輪製品ニュース 2006年9月25日 NOx触媒を採用した新世代ディーゼルエンジンを開発
HC・NOxトラップ触媒
しかし2015年9月末現在、両社がアメリカ市場で販売しているディーゼル乗用車はありません。結局走行距離を重ねると、NOx規制値をオーバーしてしまうのだと思います。12万マイル走行後のディーゼルエンジンでアメリカの規制値をクリアするには、やはり尿素SCRを搭載するしかないようです。
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