911ターボは、いつからか特別な車ではなくなってしまった

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ライバルたちの中に埋没する911ターボ

2017年にフェイスリフトされる991型ポルシェターボは、来年1月のデトロイトモーターショーでワールドプレミアされるようです。

ポルシェ911ターボ_外観

画像の出典: carscoops.com


水平対向6気筒ターボエンジンには改良が施され、「911ターボ」は540ps、「911ターボS」は580psと、それぞれ20psほど引き上げられるようです。

0-100km/h加速はターボが3.0秒、ターボSが2.9秒とかなりの高性能ですが、ハイパフォーマンスカーのパワーがハイパーインフレを起こしている現状では、やや物足りなさを感じるのも事実です。


ライバルとの比較

馬力、1馬力あたり価格、0-100km/hタイムを、ライバルと比べてみましょう。新型911ターボSは既に予約受注が開始されているため、その価格を用いています。

ポルシェ、新型「911ターボ」「911ターボS」の予約受注を開始 – CarWatch

車名 馬力(ps) 1馬力あたり価格(万円) 0-100km/hタイム(秒)
新911ターボS 580 4.37 2.9
488GTB 670 4.58 3.0
ウラカン 610 4.87 2.8
コルベット(C7) 659 2.09 2.9
GT-R NISMO 600 2.50 2.9

最近のハイパフォーマンスカーは、600psオーバーが当たり前になりつつあります。488GTBはダウンサイジングしたにも関わらず、670psという高出力です。そんなライバルたちの中では、911ターボSのパワーがやや見劣りすることは否めません。

かといって911ターボSが、馬力あたりのコストパフォーマンスに特別優れているわけではありません。コンフォート性においては優れているのかもしれませんが……。

0-100km/hの数値は五十歩百歩ですね。4WDで軽量なウラカンがわずかに速いだけです。

911の黄昏

アイデンティティの喪失

997ターボおよびターボSの上にはGT2というグレードがありました。

991においても設定される可能性がありますが、さらに高価なモデルになることが予想されます。よって488GTBやウラカンに対し、価格面での優位性は無くなるでしょう。

911カレラがターボ化されたことで、911唯一のターボモデルというアイデンティティが失われてしまった以上、911ターボおよびターボSは、コンフォートな方向に振るしかないのかもしれません。

911カレラにも同じことが言えます。スポーツカーとしての素性の良さでは、ケイマンの方が上だからです。

しかし911はパッケージングの不利を承知でスポーツカーであることを貫いてきた車であることを考えると、コンフォート化は911という車のポリシーを自ら破壊する行為であるように思えます。

勝てなくなった911

レースにおいても、911は戦闘力を失いつつあります。リアエンドにエンジンを搭載する都合上、床下の空力を最適化できないためです。

ポルシェは911GT3Rをワイドトレッド化することでコーナリング性能を高め、空力面での不利をカバーしようとしましたが、幅広になったボディのせいで直線のスピードが低下してしまいました。

一昔前のGTレースでは、エントリーの大半がポルシェということが珍しくありませんでした。しかし現在では、911を走らせるチームは少数派になってしまいました。

RRの限界

RRを採用するメリットの1つは、4シーターにできるということでした。しかしパナメーラの登場で、そのメリットも希薄になってしまいました。

ハイパフォーマンスの象徴だったポルシェ911ターボが個性豊かなライバルたちの中に埋没しているのを見ると、911というモデル自体が役目を終えつつあるように感じます。

RRというレイアウトが911を911足らしめてきましたし、不利なレイアウトの車でレースに勝つことがポルシェ社の技術力の証明とされてきましたが、そろそろ限界を迎えつつあると思います。

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