SUPER GT 2016 第7戦 タイ 決勝を振り返る

SUPER GT,モータースポーツ

3年目のタイラウンドは波乱の連続でした。今回も画像で振り返っていきたいと思います。なお、文中の周回数表記は、すべてGT500トップのその時点における周回数となります

画像の出典: supergt.net


序盤戦

GT500

GT500スタート

ポールポジション(以下、PP)を獲得したのは#19 WedsSport ADVAN RC Fでした。チームにとっては2012年以来2度目の、関口雄飛選手にとってはGT500初のPPということもあってか、このチャンスを逃すまいと序盤からハイペースで飛ばしていきます。

一方、昨年のタイで優勝した#46 S Road CRAFTSPORTS GT-Rは、5番手スタートだったもののズルズルと後退。JSPORTSのコメンタリー陣は、タイヤが合っていないのではないかと推測していました。

逆に序盤から好調なのはNSX勢です。8番手スタートだった#64 EPSON NSX CONCEPT-GTは、4周目の段階で早くも5位に浮上。2位は#15 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT、4位は#8 ARTA NSX CONCEPT-GTと、ホンダ勢が上位に固まっている状況。ハンデウェイトの軽さを活かした格好です。

7周目、#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTはエンジン交換のペナルティの5秒ピットストップを消化します。

#12 CALSONIC IMPUL GT-Rは、#15がGT300に詰まった隙を突き2位に浮上。しかしトップ#19のペースは圧倒的で、1位と2位のギャップは広がる一方でした。

#12がアウトから一気に抜いた

9周目にはペースの上がらない#46を、#6 WAKO’S 4CR RC Fがオーバーテイクし7位に浮上。6番手スタートだった#6はスタート直後に順位を落としていましたが、ペース自体は問題ない模様です。

GT300

GT300スタート

PPを獲得した#25 VivaC 86 MCがホールショットを決めたものの、最初の周回を終える前に#3 B-MAX NDDP GT-Rに首位の座を明け渡してしまいました。

大外刈り!

5周目には#21 HITOTSUYAMA Audi R8がタイヤバーストでイレギュラーのピットイン。気温は30℃と酷暑というほどではないものの、やはりタイヤには厳しいようです。

抜かれたあとも#3に食らいついていた#25の土屋武士選手でしたが、8周目に#0 GAINER TANAX GT-Rアンドレ・クート選手にも抜かれてしまいます。しかしタイヤ無交換作戦を得意とする#25ですから、ペースを上げずにタイヤを労っている可能性も捨てきれません。

9周目と16周目には、#18 UPGARAGE BANDOH 86山田真之亮選手が大きくコースを外れるオーバーラン。気合が空回りしてしまっているようでした。

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中盤戦

GT500

24周目、#24 Forum Engineering ADVAN GT-Rがピットイン。コンドーレーシングお得意のタイヤ無交換作戦で送り出しますが、今回はペースが上がらず不発に終わりました。

27周目、4位争いをしていた#8と#64に、追い上げてきた#6が加わり、3つ巴に。ペースの良い#64は最終コーナーで#8に仕掛けますがややワイドに膨らんでしまいます。そのせいでアウト側に押しやられた#8にGT300の#0が追突してしまい、#0はフロントバンパーを大破してしまいました。

#8のインに飛び込む#64
#64のラインが膨らみ、#8は減速するしかない。
#0は避けきれず接触してしまう

このバトルで漁夫の利を得たのは#6です。ごちゃついた3台のイン側をすり抜け、一気に4位へと浮上。表彰台も狙える位置にまで這い上がってきました。

28周目には#8や#46がピットイン。そろそろルーティーンピットのタイミングです。しかしトップ#19のペースは一向に衰えず、これならば出来る限りピットインを遅らせた方が得なのは明らかでした。

しかし32周目、その#19の左リアタイヤがパンク!

ところがパンクしたのが最終コーナー手前のストレートだったため、すぐさまピットイン。スロー走行によるタイムロスが最小限で済んだのは、まさしく不幸中の幸いでした。

#19のピット作業時間は42.3秒とかなりの早さでした。また、交代した#19の国本雄資選手も、ピットアウト直後からハイペースで周回を重ねるなど、チームが一丸となってパンクのロスタイムを取り戻していきます。

#19と首位を争う#12は、37周目まで引っ張ってからピットイン。

J.P.デ・オリベイラが作業を手伝ったが、後にこれが裏目に……

しかし#12はピット作業に48秒もかかってしまい、#19と順位を入れ替えるどころか、逆に差を広げられてしまいました。

GT300

24周目、GT300トップの#3がピットインしますが、ピットロード入り口でエンジンストールのような症状が出てタイムロス。作業時間は42.9秒でした。

#3と順位を争う#25は、やはりタイヤ無交換!

ノーアタック、ノーチャンス。ノーチェンジならワンチャンス。

わずか21.7秒の作業時間で、交代した松井孝充選手を送り出します。#3をもってしても20秒以上のピット作業時間の差は覆せず、#25がGT300首位の座を奪い返しました。

前戦鈴鹿1000kmで優勝した#61 SUBARU BRZ R&D SPORTは、予選こそ11番手だったものの、決勝ではウェイトハンデに苦しみ18位前後を走行していました。山内英輝選手は順位を挽回しようとプッシュしましたが、39周目にクラッシュ。リタイアに追い込まれてしまいます。縁石に乗り上げコントロールを失ったようです。

この時点でのトップ3は、#25-#18-#3となっています。#25と#18のタイヤ無交換作戦組に、#3がしてやられた格好です。

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終盤戦

GT500

46周目、7位にまで順位をあげていた#36 au TOM’S RC Fでしたが、#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GT塚越広大選手の気迫あふれる走りに、その座を明け渡してしまいます。

コリン・マクレーばりの全開イズムで、芝生の上だろうとお構いなし。

タイヤ無交換でがんばっていた#24ですが、ヨコハマタイヤは最後までもたず46周目にバースト。踏んだり蹴ったりのタイラウンドとなってしまいました。

タイヤがマッチしなかったようだ。

51周目、2位走行中の#12にドライブスルーペナルティが出されてしまいます。

給油中にフロントウィンドウのティアオフシールドを剥がしたため、ピット作業違反を取られたのです。これで#15は労せずして2位に上がり、#12は6位に転落してしまいました。

55周目、3位を行く#39 DENSO KOBELCO SARD RC Fヘイキ・コバライネン選手は、4位#6のアンドレア・カルダレッリ選手からのプレッシャーに耐えきれず、最終コーナーで大きくコースアウト。表彰台の座を明け渡してしまいます。

チャンピオンシップで首位を独走する#1 MOTUL AUTECH GT-Rですが、やはり100kgのウェイトハンデはきついのか、8位前後から順位を上げられずにいました。

#1の直後には#8が迫っており、その後ろにはランキング2位の#38 ZENT CERUMO RC Fがいました。後方とのギャップを少しでも広げたい#1は、GT300で2位争いをしていた#18と#3に詰まるのを嫌がり、それら2台を一気にかわそうと試みましたが失敗。#18と接触しスピンしてしまいます。

災難だったのは#60 SYNTIUM LM Corsa RC F GT3と、#38です。スピンした#1に巻き込まれる形で接触してしまったのですから。

#60のマシンが浮き上がるほどのインパクト

このクラッシュで#1・#18・#38・#60の4台がリタイアに追い込まれてしまいました。

もうやめて! MOTULのライフはゼロよ!

#39はタイヤの状態が厳しいのか、#64に抜かれ5位に、

#12にも抜かれて6位に転落。

しかし抜いた#64もGT300に詰まり、#12の先行を許してしまいます。

その後#39は、#17にも抜かれてしまいました。

最後の最後でトップ#19に#15の牧野任祐選手が接近します。

しかし国本選手は差をコントロールしながら見事なトップチェッカー。チームはGT500昇格6年目にしてついに初優勝。関口選手にとってもGT500初勝利となりました。

最終的なトップ10は、#19-#15-#6-#12-#64-#17-#39-#8-#37-#100でした。

GT300

アクシデントで#18がいなくなったことで、前が開けた#3のヤン・マーデンボロー選手は猛プッシュを開始。ファステストラップを叩き出しながら、1.5秒も速いペースで#25を追いかけます。

しかし#25も、#3とのギャップが2秒を切ったあたりからペースアップ。#3も必死に追い上げるものの、コンマ1〜3秒ずつしか差が縮まらなくなってしまいました。

結局#25がそのまま逃げ切りチェッカー。PPは獲るものの勝てないという負の呪縛を断ち切った#25が今季初優勝を遂げ、チャンピオンシップでも首位に躍り出ました。

最終的なトップ10は、#25-#3-#55-#0-#31-#7-#33-#4-#11-#88でした。

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チャンピオンシップ展望

熊本地震の影響で第3戦のオートポリスが中止になったため、代替レースはもてぎで最終戦の前日に行われます。よってラスト2戦はもてぎでの連戦です。

GT500

GT500は相変わらず#1(56ポイント)が有利な状況ですが、タイで3位表彰台を獲得した#6(46ポイント)がランキング2位に浮上しました。差は10ポイントあるものの、#1に何かあればひっくり返る状況です。

レクサス勢の逆転タイトルを獲るには、エースマシンを明確に定める必要があると思います。#6・#38(45ポイント)・#39(45ポイント)と、タイトルを獲れそうな車が3台あるからです。

この3台が争えば漁夫の利を得るのは#1ですから、どの車を優遇するのか、少なくとも最終戦の決勝がスタートする前までには決めておく必要があります

となると大事なのは土曜日に行われる第3戦の振替レースです。ここで大きくポイントを稼いだチームが、レクサス勢のエースとして#1に挑戦する権利を獲得できると思います。

GT300

GT300は#25(54ポイント)が一歩抜け出しましたが、5ポイント差のランキング2位に#3(49ポイント)、6ポイント差のランキング3位に#55 ARTA BMW M6(48ポイント)がいるため、タイトルの行方はまったくわかりません。

もてぎではFIA-GT3勢やハイブリッドのプリウスなど、中低速からの加速に優れた車が速いので、#25は厳しい戦いを強いられると思います。とはいえ#25はストレートが遅いわけではないので、予選で前に出られれば逃げ切れるでしょう。

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