SUPER GT 2016 第6戦 鈴鹿1000km 決勝レポート 前半
予選では#15 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTがポールポジションを獲得した2016年の鈴鹿1000km。一方、前戦富士の汚名返上をかけて望んだレクサス勢は、またもや予選で低迷。#19 WedsSport ADVAN RC F以外は、Q2に進出することすら叶いませんでした。
しかし#36 au TOM’S RC Fと#37 KeePer TOM’S RC Fの2台を指揮するトムスチームは、決勝での走りに自信がある様子。はたしてGT-Rの5連勝を阻むのはどちらのメーカーになるのでしょうか?
鈴鹿1000km 決勝 序盤戦1
スタート時の路面はいわゆるチョイ濡れの状態。とはいえウェットタイヤが必要なほどではなく、ライン上はすでに乾き始めていました。
にもかかわらず、GT300予選2位の#31 TOYOTA PRIUS apr GTは、ウェットタイヤスタートを選択します。
そして大方の予想どおり#31はスタート直後からズルズルと順位を落とし、3周目に早くもピットインする羽目に。何がしたかったのでしょうか。
GT500
GT500はスタート直後に関口雄飛選手の駆る#19が芝生に片輪を落としたものの、大きな混乱もなく車列は1コーナーをクリア。その後は#15の武藤英紀選手と#46 S Road CRAFTSPORTS GT-Rの本山哲選手が接近戦を展開しますが、2周目に入ると両者の距離は若干広がりました。
公式練習から好調を維持する#15がこのまま後続を引き離すかに思えましたが、意外な伏兵が猛烈な追い上げをすでに始めていました。#38 ZENT CERUMO RC Fの立川祐路選手です。
予選Q2のアタック中、スプーンの立ち上がりでオーバーランしてしまった立川選手は「順位が決まる最後のアタックで、こういったミスをしたのは初めて」とショックを隠しきれない様子でしたが、決勝では予選でのミスを払拭する鬼神のごとき走りをスタート直後から披露。8番手スタートだったにもかかわらず、2周目には5位、5周目には#8 ARTA NSX CONCEPT-GTを抜き4位に浮上します。
そして12周目には#12 CALSONIC IMPUL GT-Rを1コーナーでアウトからぶち抜き3位に。
15周目には#46を1コーナーでまたもやアウトから豪快にオーバーテイクし2位に。
そして22周目にはシケインで#15のインを突き、ついにトップに立ったのです。
GT300
19歳の牧野任祐選手の活躍で3番手という好位置からスタートした#2 シンティアム・アップル・ロータスでしたが、フロントタイヤの温まりが悪いミッドシップマシンの弱点を露呈し、スタートドライバーの加藤寛規選手は順位を落としてしまいます。
トップはポールポジションスタートの#18 UP GARAGE BANDOH 86の中山友貴選手、2位には前2台が後退したことで労せずしてその座を手に入れた#61 SUBARU BRZ R&D SPORTの山内英輝選手がつけました。2台は同じくらいのペースで周回を重ねていましたが、先にピットストップしたのは#61の方でした。
ところがピットアウトした#61の井口卓人選手が、不運に見舞われてしまいます。S字の立ち上がりで#0 GAINER TANAX GT-Rの冨田竜一郎選手に押され、スピンしてしまったのです。#0にはピットスルーペナルティが課されました。
ライバルの脱落によって、#18は大きなマージンを築くことに成功します。交代した山田真之亮選手もハイペースで走行し、後続をさらに引き離していったのです。
鈴鹿1000km 決勝 序盤戦2
GT500
上位陣の全車がピットストップを終えた30周目の順位は、#46-#38-#12-#19の順。#46は#38とのバトルでタイヤを痛めて早めにピットインしたため、再び#38に先行する形となっていました。
しかしペースで上回る#38の石浦宏明選手は、1〜2コーナーでクロスラインを仕掛け#46の高星明誠選手をオーバーテイクします。
#38に続けとばかりに#12のJ.P.デ・オリベイラ選手も、ヘアピンで#46を抜き去りました。
ここで上位に進出してきたのが#36です。伊藤大輔選手は32周目のシケインで#15にオーバーテイクを仕掛けます。このときは止まりきれなかったものの、35周目には成功させ、5位に順位を上げます。
40周目には2位の#46に#19と#36が追いついてしまい、3つ巴の展開となります。3台のうち最もペースが良いのはやはり#36です。45周目のヘアピンで#19の国本雄資選手がミスしたの突き4位に上がると、
その周のシケインでは#46まで料理し、2位に浮上。レクサス1-2体制を構築しました。
ハンデウェイト100kgの#1 MOTUL AUTECH GT-Rは、46周目のシケインで#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GTをアウトから抜き去って8位に浮上。じわじわと順位を上げてきています。
#19はブレーキング時にタイヤがロックするのが目立ち始め、ペースが上がりません。そこに追いついてきたのが#6 WAKO’S 4CR RC Fの大嶋和也選手です。
2台は接触やオーバーランをしながら丁々発止のやり取りを展開していましたが、デグナーの1つめの侵入で#6がアウトから並びかけると、#19がイン側の縁石で跳ね、あわやコースオフという形になって決着がつきました。
この後#19は、スプーンの立ち上がりで#15にも抜かれてしまいます。国本選手にとっては散々なスティントとなってしまいました。
GT300
GT500のトップが43周目にさしかかった時点でも、GT300のトップは#18のままです。
しかし2位は#4 グッドスマイル 初音ミク AMGが、3位には#11 GAINER TANAX AMG GT3と、トップを追いかけるメンツはガラリと様変わりしていました。
ですが1回目のピットストップが早めだった#11はピットストップで後退、#4も#18ほどのスピードはなく、ただでさえ大きな差をさらに広げられていきます。
このように盤石に思えた#18ですが、突然の雨で事態が一変。
みるみるうちに#4が追いついてしまったのです。
#18はマザーシャシーの86ですから、ABSやトラクションコントロールはついていません。一方FIA-GT3マシンの#4には、それらが2つとも装着されています。しかも#4のドライバーは「チョイ濡れスリックの谷口」こと谷口信輝選手。この状況では速くて当然のパッケージングと言えます。
そしてホームストレートで#4が#18をオーバーテイク! GT300ではこの日初のリードチェンジとなりました。
が、雨はすぐに止んでしまいました。#4と#18が2回目のピットストップを済ませると、順位は再び逆転していたのです。
鈴鹿1000km 決勝 中盤戦1
GT500
GT500は雨の降り始めと2回目のピットストップタイミングが重なり、チーム側は難しい判断を迫られましたが、幸いにも雨がすぐに止んだためタイヤがらみの混乱は起こりませんでした。
60周目にピットインした#12も、スリックタイヤを付け替えてピットアウトします。ところがコース復帰直後に車内から火の手が上がり、リタイアに追い込まれてしまったのです。ピットイン時に注ぎ足したオイルが漏れたことが原因のようでした。
GT-R勢に不運が続きます。追い上げていた#46本山選手は黄旗区間での追い越しをとられ、70周目終わりに10秒ストップペナルティを消化。5位で復帰しましたが、優勝戦線からは遠ざかってしまいました。
ちなみに#24 フォーラム・エンジニアリング ADVAN GT-Rは、17周目に#6と接触しグラベルに捕まり、大幅な遅れを喫しています。
このため日産勢でノートラブルなのは、皮肉なことに100kgハンデの#1だけなのです。ディフェンディング・チャンピオンは堅実な走りで着実に順位を上げ、86周目には驚くべきことに4位に浮上しています。
予選では好調だったNSX勢も決勝では苦戦しており、ホンダ勢最上位を走っていたポールシッターの#15も、エンジントラブルでガレージに入ってしまいました。
絶好調なのはレクサス勢です。#38-#36-#6の1-2-3体制でレースを優位に進めています。これなら首位が"I have no power!"な状況に陥っても安心です。
GT300
雨が止み2位(実質首位)の#18がスピードを取り戻すと、今度は#4と#61の4位争いが勃発しました。この時点における見かけ上の1位は#0、3位は#11ですが、いずれもピットタイミングが異なります。
#61はシケインでアウトから並びかけますが、敵もさるもの、#61の立ち上がりのラインをうまく潰した#4は、4位の座を譲りません。
なんとかして順位を上げようともがく#61でしたが、スプーンでコースアウトし後退してしまいます。
すると3位の#11がS字の途中で止まってしまい、#0もピットに入ったので、#18が首位に、#4が2位へと順位を戻しました。#61も自力でポジションを回復し、再び3位に上がっています。
GT500トップが86周目にさしかかった頃、#22 RQ’s SLS AMG GT3のガルウィングドアが走行中に開き、ひやりとする場面がありました。予選でもドアが開くトラブルが起こっていたのに、対策が不十分だったようです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。後半のレポートもぜひご覧ください。