ノルウェーが「テスラ税」!? EV先進国で一体何が起こっているのか?
ノルウェー政府が、電気自動車(BEV, Battery EVの略)に対する優遇税制の見直しを検討しています。
この見直しによって主にテスラ車の価格が押し上げられることから、この変更は「テスラ税」と呼ばれているようです。
ノルウェーといえば、BEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)に対する手厚い優遇税制があり、ヨーロッパで最もBEVやPHEVが売れている国です。
また、2025年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止しようとしている国でもあります。
そんなノルウェーが、なぜ今になってBEVの優遇税制を見直そうとしているのでしょうか?
EV大国ノルウェー
ノルウェーは新車販売の実に半分近くがBEVまたはPHEVで占められているという、ゼロ・エミッション・ヴィークル(ZEV)先進国です。
昨年の段階では、新車販売に占めるZEVの割合は29%だったのですが、今年9月には48.4%を占めるに至っています。
つまりZEVの販売台数は伸び続けているのです。
テスラの王国
今年9月の新車販売シェアとしては、BEVが28.6%、PHEVが19.8%となっており、BEVの売れ行きがPHEVを上回っています。
一方、ディーゼル車の新車販売シェアは18%まで落ち込んでおり、ZEVとの立場は完全に逆転してしまいました。
ノルウェーで一番売れているBEVは、テスラです。
9月には実に2003台ものテスラ車が、新たに販売されました。
内訳は、モデルSとモデルXがほぼ半々です。
ノルウェーにおける9月のBEV販売台数が3850台ですから、テスラのシェアは51.9%となり、ノルウェーのBEV市場の半分以上を抑えていることになります。
ノルウェーでは、テスラが圧倒的な存在なのです。
「テスラ税」の中身
ノルウェーで圧倒的な人気を誇るテスラ車を狙い撃ちにするように、ノルウェー政府はBEVの優遇税制を見直そうとしています。
Reutersによると、ノルウェー政府の草案では、主に車重2トン以上のBEVに影響があるようです。
テスラのモデルSやモデルXには、車重2トンオーバーのヘビー級グレードがほとんどですが、ルノーや日産のBEVは軽量級なので、実質的に「テスラ税」となるわけですね。
具体的には、2トン以上のBEVに対する自動車登録税の免除がなくなり、カンパニーカーに対する課税割合も増やされるようです。
付加価値税(日本で言うところの消費税)の免除は継続されるものの、それでもテスラ・モデルXの価格は、7万ノルウェークローネも引き上げられると見られています。
1ノルウェークローネは現在のレートだと14.17円ほどなので、約99.2万円も高くなる計算です。
なぜEV優遇をやめるのか?
ノルウェー政府がBEV優遇をやめる理由は、それが富裕層の援助になってしまっていたからです。
元々ノルウェーのBEV優遇税制は、低炭素社会の実現と、国内で生産された小型車を優遇するために作られたものでした。
しかし現在売れているのは、テスラの高級なBEVが過半数を占めているわけです。
庶民から税金を取り、金持ちが高級BEVを購入する補助金(優遇税制)にしているわけですから、これでは国民の支持は得られません。
そこで車重2トン以上のBEVに限定して優遇税制を見直し、より小型なEVを普及させようと考えたわけですね。
ノルウェー政府はBEVをあきらめたわけではなく、より多くの一般庶民に、BEVを普及させようとしているのです。
ちなみにアメリカではZEVが金持ちのものだと見なされており、そのため大多数の国民は、ZEVにまったく興味を示していません。
アメリカの状況を鑑みると、ノルウェー政府の判断は正しいと思います。
参考サイト
Norway seeks to trim lavish electric car subsidies | reuters.com
Norway Wants To Cut Generous Electric Car Incentives And Impose A “Tesla Tax” | carscoops.com
Norway Nears 50% EV Market Share In September, Tesla Nets 2,000 Deliveries
| insideevs.com
「2025年までにガソリン車を全廃」ノルウェーの政党間で合意へ イーロン・マスク氏も歓迎 | huffingtonpost.jp
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