SKYACTIV-Xが欧州で好調! マツダのV字回復はあるか!?

テクノロジー・業界分析

Mazda 3 Sedan 2019

販売不振に悩まされていたマツダですが、SKYACTIV-Xの投入により、どうやら潮目が変わり始めたようです。
Automotive News Europeの報道によると、欧州ではSKYACTIV-X搭載車の需要が高まっているのだとか。
マツダ3だけでなくCX-30にも搭載される予定のSKYACTIV-Xですから、この勢いが持続すれば、マツダ復活の起爆剤になるかもしれません。

今回はマツダの販売不振の原因と、V字回復の可能性を検証します。


マツダのV字回復はあるのか?

マツダが販売不振に陥った理由

Mazda 3 Fastback 2019
マツダ 3 ファストバック(2019年モデル)

近年のマツダ車は、デザインや走行性能、インテリアの質感など、車としての評価はかなり高いです。
売れていないと批判されているマツダ3も、中国やタイなど各国で次々とカー・オブ・ザ・イヤーを獲得しています。
にも関わらず、なぜ販売不振に陥っているのでしょうか?
考えられる理由をまとめてみます。

理由その1 ディーゼル規制が予想以上に厳しくなったこと

ハイブリッド技術で出遅れたマツダは、低圧縮ディーゼルの「SKYACTIV-D」に社運を託しました。
高価なNOx処理装置(白金触媒や尿素SCRなど)を使わず、シンプルな仕組み(可変バルブリフトの活用による低圧縮比)により、当時のディーゼル規制をクリアしたSKYACTIV-Dは、優れた経済性と動力性能が評価され、大成功を収めました。

SKYACTIV-D diesel engine
SKYACTIV-D

しかしフォルクスワーゲンの「ディーゼルゲート」により、排ガス規制は想定以上の早さで強化されていき、ディーゼルエンジンの開発にかかるコストはうなぎのぼりに。
環境対策の主流は、BEV(バッテリーEV)やPHEV(プラグインハイブリッド)などの電動車両に取って代わられ、ディーゼルは脇役に追いやられてしまったのです。

NOx規制が厳しいアメリカなどの地域において、SKYACTIV-DはNOx吸蔵触媒や尿素SCRの追加を強いられる状況となっています。
他地域でもディーゼル規制は強化される一方なので、SKYACTIV-Dが持っていた経済性という強みは、永久に失われたと言わざるを得ません。

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理由その2 プレミアムブランドに移行する過渡期であること

Mazda 6 2018
マツダ 6(2018年モデル)

トヨタやホンダのような大メーカーと比較すると、マツダの世界販売台数はわずかです。
2018年のマツダの世界販売は161万台で過去最高でしたが、トヨタ(1,059万台)やホンダ(535万台)とは大きな開きがあります。

少ない販売台数で大きな利益を得るためには、1台あたりの利益を増やすしかありません。
そこでマツダはプレミアムブランド化に舵を切ったわけですが、これまでのマツダユーザーには割高に感じられてしまったようで、現時点では上手くいっていないようです。

ブランドイメージが大きく変化した場合、これまでのユーザーがそのまま乗り換えてくれるわけではありません。
よって、新規顧客を獲得し、ユーザーを入れ替える必要があるのです。

モデルラインナップの更新に時間がかかるのもネックとなります。
新型車の開発には3年ほどかかるといわれているので、ブランドの方針が変わったからといって、全ての車種をすぐに刷新することはできません。
そのため新しいブランドイメージを反映した商品を揃えるのに時間がかかるのです。

また、プレミアムブランドにも強力なライバルメーカーが存在します。
ライバルと戦いながら、マツダにとって新しい市場を開拓するわけですから、ブランドイメージの転換は容易ではないのです。

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マツダV字回復の可能性

SKYACTIV-Xがマツダ車の弱点を補う

SKYACTIV-X engine
SKYACTIV-X

SKYACTIV-Dが競争優位をもたらさなくなったマツダにとって、エンジンはブランドの弱点となっていました。

SKYACTIV-Gは、他の自然吸気ガソリンエンジンと比較すると燃費やトルクの面で優れていますが、決してパワフルとはいえません。
ハイブリッドやダウンサイジングターボが主流となっている現在では尚更です。

しかしSKYACTIV-Xは、その状況を変える可能性があります。
SKYACTIV-Xはフラットなトルク特性と優れた燃費性能を持ちながらも、SKYACTIV-Gに比べてハイパワーです。

問題はSKYACTIV-X搭載車が高価なことですが、マツダ・ヨーロッパの青山裕大CEOによると、欧州におけるマツダ3の注文のうち、60%がSKYACTIV-Xを選んでいるのだとか。
つまり欧州の顧客は、SKYACTIV-Xに価格なりの価値があると考えているようです。
ちなみにCX-30でも、45%の顧客がSKYACTIV-Xを選択しています。
これだけSKYACTIV-Xを選ぶ顧客が多いと、マツダ3のこれまでの販売不振は、単に「SKYACTIV-X待ち」だった可能性すら出てきます。

はっきり言って、SKYACTIV-Gとの価格差の元を取るのは、SKYACTIV-Xの燃費性能ではかなり難しいです。
SKYACTIV-XはSKYACTIV-Gに対して10%ほど燃費が改善していますが、欧州でも価格差が3,500ユーロ(約42万円)あるため、かなりの走行距離を走らないと元は取れません。
しかしそれでも欧州でSKYACTIV-Xが選ばれているのは、欧州の顧客がSKYACTIV-Xに、燃費性能以外の魅力を見出しているからに他なりません。
そして「高くても売れる」というのは、マツダがプレミアムブランドとして認知され始めている証拠だと思います。

CX-30が持つポテンシャル

Mazda CX-30 2020
マツダ CX-30(2020年モデル)

CX-30は、CX-3の弱点(=後席の狭さ)を補うために投入されたモデルですが、購入した顧客の下取り車などを見ていくと、なかなか興味深い売れ方をしています。

まず、CX-30が初めてのSUVだという顧客が多いのだそうです。
日本国内市場において、初めてSUVを購入する顧客というのは、モデル平均で8%程度しかいないそうですが、CX-30のそれは23%と突出しています。
SUVとハッチバックではSUVの方が利益率が高いと言われているので、SUVの販売比率が増えることは、マツダにとって福音となるでしょう。

また、CX-30で初めてマツダ車に乗るという顧客も多いのだとか。
プレミアムブランド化に伴うユーザー層の移り変わりから、新たな顧客層を開拓していかなければならないマツダにとって、これも好材料です。

優れたエンジンと魅力的な新モデルの投入により、マツダの業績がV字回復する準備は整ったように見受けられます。
トヨタとの提携によりストロングハイブリッドやPHEVの技術も得られるでしょうし、SKYACTIV-Xとそれらの技術を組み合わせることも可能です。
マツダの悪材料はもう出尽くしたように思えるのですが、果たしてどうなるでしょうか。

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出典・参考サイト

Mazda Skyactiv-X engine in high demand – europe.autonews.com

マツダ CX-30 佐賀主査「SKYACTIV-Xの比率は1-2割を」…シリーズの受注は好調な立ち上がり – carview.yahoo.co.jp

マツダがついに北米にディーゼルを! NOx吸蔵触媒と尿素SCRを採用 – driver-box.yaesu-net.co.jp

日本の多彩な次世代自動車技術 – sc-abeam.com

まもなく発売! 世界初のエンジン「SKYACTIV-X」搭載のMAZDA3に試乗 – kakakumag.com

クルマの作り方 徹底解明 新車「開発はどうやって進められる!? – bestcarweb.jp

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