三菱自動車が欧州撤退
三菱自動車が欧州向けの新車開発を凍結すると発表しました。
今後は現行車の販売とアフターサービスに特化するということなので、いずれ撤退するものと思われます。
排ガス規制は年々厳しくなるので、新型車を開発しない限り販売できなくなるからです。
今回は三菱自動車がなぜ欧州から撤退するのかを検証します。
三菱自動車はなぜ欧州から撤退するのか?
三菱自動車の経営状況
2020年3月期(2019年4月~2020年3月)の連結決算
グローバル販売台数は112.7万台で、前年同期比で9.4%の減少でした。
売上高は同9.7%減の2兆2703億円、最終損益も258億円の赤字に転落してしまいました。
2021年3月期(2020年4月~2021年3月)の連結業績予想
三菱自動車の2021年3月期の連結最終損益は、3,600億円の赤字になる見込みだそうです。
このうち2,200億円は、工場閉鎖や人員削減を含む構造改革のための費用で、特別損失として計上されます。
売上高は前期比で35%減、販売台数も25%減の84.5万台と悲惨。
19年3月期には販売台数が124万台あったのに、2年で40万台も失うことになりそうです。
ちなみにリコール問題で業績が悪化した際の赤字額は、4,747億円でした。
現在はそれに次ぐ厳しい状況に置かれていると言えます。
頼みの綱は東南アジア
20年3月期の地域別営業損益を見ると、三菱自動車は東南アジア以外の全ての市場で赤字です。
三菱自動車は東南アジア以外での競争力を失いつつあります。
そこで欧州向け新型車の開発を凍結し、経営資源を東南アジアに集中させることで、業績を回復しようとしているわけです。
三菱グループに属する三菱商事との連携も強化し、東南アジア4ヶ国でのシェアを現在の10.6%から、今後3年間で11.4%に増やす計画を立てています。
また、南米や中東など他の新興国にも、東南アジア向け商品を展開していく予定だそうです。
果たして成功するのか?
確かに東南アジアで強い三菱自動車ですが、計画が成功する確率はそれほど高くないと思います。
東南アジアも景気後退
東南アジアも新型コロナウイルスのせいで、経済に悪影響が出始めています。
アジア開発銀行は、東南アジアでもGDP比で7.2%の経済損失(2,529億ドル)が発生すると試算しています。
この数値は欧米に比べると幾分マシですが、それでも大幅な景気後退は避けられないでしょう。
レッドオーシャン化する新興国
また、三菱自動車が東南アジアで強いと言っても、シェアで圧倒しているわけではありません。
タイ、インドネシア、マレーシアの4ヶ国でシェアトップなのはトヨタであり、マレーシアではダイハツと現地資本の合弁企業であるプロドゥアです。
結局東南アジアでもトヨタグループが強く、三菱自動車のシェアはどの国でも3・4番手にとどまっています。
新型コロナウイルスの影響で、あらゆる自動車メーカーが苦境に陥っています。
当然各国市場で必死の生き残りを図るわけで、東南アジアはいわばレッドオーシャンと化すでしょう。
そのような環境で強いのはシェアトップのトヨタ(ダイハツ)であって、三菱自動車ではないと思います。
モデルラインナップの偏り
三菱自動車が展開している車種の偏りも気がかりです。
アウトランダーやエクリプスクロス、RVR、そして東南アジア向けのエキスパンダーやトライトンなど、現在のモデルラインナップは中・大型車に偏っています。
日本国内では軽自動車もありますが、東南アジアでは販売していないはずなので、小型車だとミラージュくらいしかありません。
不景気なときに中・大型車が売れるとも思えませんし、ましてやi-MiEVやアウトランダーPHEVが販売を牽引することもないでしょう。
東南アジアに注力するといっても、このモデルラインナップでシェアをどうやって伸ばしていくのか疑問です。
エキスパンダー(全長4,475mm)よりも一回り小さいSUV、例えばヤリスクロス(全長4,180mm)とかヴェゼル(全長4,330mm)くらいで、価格もお手頃な車種があれば、三菱自動車にとって大きな強みになると思うのですが。
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