EVスタートアップの受難……テスラ以外は成功できない!?

テクノロジー・業界分析

フィスカー オーシャン

最近の自動車市場の話題はEV一色ですが、全てのメーカーがEV人気の恩恵を受けているわけではないようです。特に新興企業は苦戦しており、株価も下落しています。
今回はアメリカのEVスタートアップであるフィスカー、ルシード、リビアン、ニコラの決算から、低迷の原因を分析します。


EVスタートアップの低迷

フィスカー

フィスカー オーシャン

フィスカーはSUV「オーシャン」のデリバリーを開始したものの、第1四半期決算で今後の生産予測を下方修正しました。年間生産台数は32,000~36,000台を計画しています。

しかし投資家はこの下方修正を嫌気し、株価は14.1%も下落しました。手元資金も減り続けていますが、予約件数が65,000件もあるということだけは救いです。

ルシード

ルシード Air

ルシードの収益自体は伸びています。2023年第1四半期の売上高は159%増加し、1億4900万ドルになりました。

しかし販売台数はわずか1,406台しかなく、とても自動車メーカーとして独立してやっていけるレベルにはありません。
ルシードは今年10,000台を生産する計画ですが、主力車種であるAirの需要が冷え込んでいるため、計画を達成するのは難しいでしょう。業績を伸ばせるかは、今年後半に発表される新型SUV「グラビティ」にかかっています。

リビアン

リビアン R1T

リビアンは2023年第1四半期で、13億5000万ドルの損失を計上しました。前年同期比ではやや改善していますが、資金を失い続けている状況は変わっていません。

ただし生産は順調に推移しており、今年の生産目標(50,000台)も達成できそうだと同社は主張しています。とはいえ生産規模が50,000台では、相当な高級車ブランドでないとやっていけないでしょう。

ニコラ

ニコラはEVのトレーラートラックを生産しているメーカーです。同社の第1四半期決算で純損失1億6900万ドルを形状しました。ちなみに前年同期にも1億5290万ドルの純損失を形状しています。

ニコラはBEVのトレーラー生産を中止することを発表しました。今後は受注生産のみになるようです。水素燃料電池搭載のトレーラーに切り替えるようですが、先行きはかなり不透明といえるでしょう。

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なぜEVスタートアップは苦戦しているのか?

テスラは大成功しているのに、なぜテスラ以外のEVスタートアップは苦戦しているのでしょうか? 理由を考えてみました。

既存の自動車メーカーとの競争激化

ポルシェ タイカン ターボS

テスラがEVを販売し始めた頃は、ガソリン車やディーゼル車が市場の大部分を占めており、EVはマイノリティでした。逆に言うと、EV市場(特にEVの高級車市場)におけるテスラのライバルはいなかったのです。

しかし現在は地球上のあらゆる自動車メーカーがEVに多額の投資を行っています。テスラが参入した頃はブルーオーシャンだったEV市場ですが、現在は赤く染まっているのです。

高級EV市場の飽和

BMW i7

EVスタートアップは販売台数の少なさを補うため、高級EVを販売するパターンが多いです。以前のテスラもそうでした。

しかし高級EV市場にポルシェやメルセデス・ベンツ、BMW、アウディといったライバルが雪崩を打って参入してきたため、テスラはさらに安価なモデル(モデル2)を投入し、既存モデルも値下げすることで対抗しようとしています。

EVはバッテリーにコストがかかるので、販売価格が高くなりがちです。そのためコストを価格に転嫁しやすい高級車からEVに変更される傾向にあります。猫も杓子も高級EVを投入してくるため、高級EV市場は特に激戦区なのです。

しかし高級車を買う人はそれほど多くありません。EVの黎明期に高級EV市場を制圧したテスラは、そこで得たノウハウと販売ボリュームを利用してコストダウンし、モデル3やモデルYといった中価格帯のEVを開発、成功しました。そして今後はさらに安いモデルを投入するわけです。
一方、現在苦戦しているEVスタートアップは、まずは高級EV市場でテスラやポルシェ、ベンツを打ち負かさなければなりません。かなり厳しい戦いになるでしょう。テスラ以外のEVスタートアップは遅きに失した感があります。

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