F1 モータースポーツ

F1のボス、バーニー・エクレストン解雇。その理由とは?

2017/01/27

長きに渡ってF1に君臨してきたバーニー・エクレストンが、F1の新オーナーであるリバティ・メディアによって解雇されました。

今回は「なぜバーニーが解雇されたか」について検証・考察します。

画像の出典: By Ryan Bayona (Flickr: Bernie Ecclestone) [CC BY 2.0], via Wikimedia Commons

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リバティ・メディアの思惑

CVCキャピタルパートナーズからF1の興行権を取得したリバティ・メディア(以下、リバティ)は、F1のいびつな収益構造を問題視していました。
リバティのCEOであるグレッグ・マフェイ氏は、forbesのインタビューに対し次のように述べています。

もしあなたがフェラーリだとしたら、あなたは巨額のスポンサーマネーを直接手にすることができる。
それは素晴らしいレースをすることで、さらに良い影響を受けるだろう。

だからフェラーリもチーム間の支払いのバランスを考えて、もう少しバランスのとれた公平なものにしなければならない。
事実、優れたプラットフォームを作ることはスポンサー収入の増加にも役立つ。(支払いのバランスを取ることは)ギブ・アンド・テイクなんだ。

リバティ側はF1の極端すぎる分配金の構造を修正し、チーム間の戦力を均衡させ、競り合いの多いスペクタクルなレースを視聴者に提供したいと考えているようです。

しかしF1界においてリバティのような考え方が提案されたのは、今回が初めてではありません。
分配金の取り扱いについて定めた「コンコルド協定」の契約期限(5年ごとに改定)を迎える度に、バーニーと自動車メーカーは激しく対立してきましたし、カスタマーシャシー(マシンの販売制度)の導入バジェットキャップ(予算制限)などの弱小チーム救済案も提示されましたが、何ひとつ実現しませんでした。

でも、なぜF1では戦力均衡策が上手くいかないのでしょう?

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F1において戦力均衡策が失敗する理由

たとえばSUPER GTでは、ポイントに応じてハンデウェイトを課すという、戦力均衡策が取られています。
ドイツツーリングカー選手権(DTM)ブリティッシュツーリングカー選手権(BTCC)においても、サクセスバラストという同様の制度があり、ハコ車のレースでは珍しい制度ではありません。

NASCARにはハンデウェイトこそ無いものの、車体の形状はテンプレートで厳しく管理され、独自に改良するのはほとんど不可能になっています。
車体の共通化を徹底することで、戦力均衡を図っているわけですね。

フォーミュラカーレースの場合

ところがフォーミュラカーの場合だと、戦力均衡策を導入しているシリーズはほとんどありません。

ジュニアまたはミドルフォーミュラの場合は、ドライバー育成のためのシリーズなので完全なワンメイク(1社独占供給)になっていますが、トップフォーミュラだと完全なワンメイクはほぼ無いと言ってよいでしょう。

スーパーフォーミュラのエンジンはトヨタとホンダの2メーカーが供給しています。
インディカーの場合もそうです。
そしてF1は……言うまでもありませんね。

シャシーのワンメイク化以外で、何らかの戦力均衡策を導入しているフォーミュラカーシリーズというのも、おそらく無いと思います。

つまり戦力均衡策が導入できないのはF1だけの問題ではなく、フォーミュラカーレース全体の問題だと考えられるのです。

なぜフォーミュラカーレースには戦力均衡策が導入されないのか?

単刀直入に言えば、「自動車メーカーがフォーミュラカーレースをやる積極的な意義なんてないから」です。

ハイパワーなエンジンを作ることが技術力の証明になった時代ならばともかく、現代においては何のアピールにもなりません。
むしろ「ガソリンをムダにしやがって」と、消費者から反感を買う恐れすらあります。

だからF1では少しでも自動車メーカーの興味・関心を引こうと、エネルギー回生システムを導入したり、エンジンのダウンサイジングをしたりしてきたわけです。

しかし燃費技術のアピールは、フォーミュラカーでなければできないわけではないので、「自動車メーカーがフォーミュラカーレースをやる積極的な意義」は、やはり無いのです。

ではなぜフォーミュラカーレースをやるのか? スーパーフォーミュラの場合は商業的に見てもやる価値がないので、しがらみと惰性でやってるだけでしょう。
インディカーでも、インディ500以外は価値がありません。

でもF1はバーニーが早くから国際化を推し進めてきたおかげで桁外れに視聴者数が多く、シリーズの知名度も高い
なのでメーカーが名前を売るプラットフォームとしては、F1は今もなお有益といえます。
宣伝プラットフォームとしてのF1を上手く利用した例としては、マールボロやJTといったタバコメーカーや、ベネトン、ブリヂストン、レッドブルなどが挙げられるでしょう。

しかしF1のテクノロジーは市販車からかけ離れており、自動車メーカーが積極的にやる意味はありません。

宣伝としても、走ってる車は市販車とは似ても似つかない代物ですから、勝って話題を呼び、パブリシティ※1を高める以外に宣伝方法がない。そして勝ちまくるためには、戦力均衡策なんて邪魔です。

一方、ツーリングカーレースの場合は、走っている車がそもそも市販車の形をしているので、参加しているだけで宣伝になります。
車種が豊富で競り合いが多い方がレースの人気も高まりますから、自動車メーカー間で協力関係が成り立ちやすく、結果として戦力均衡策が導入されやすいのです。

※1 パブリシティとは、取材を受けたりプレスリリースを発行するなどして、企業活動をメディアに取り上げてもらうことを指す。F1のように話題性のある活動を行うと、必然的にメディアの報道が増え、結果として広告料金を払わずに広告宣伝をしたような効果を得ることができる。レッドブルが好例。

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バーニーが解雇された理由を考察する

フォーミュラカーレースに参戦する自動車メーカーは、勝たなければ意味がない。それはすなわち、勝てなければ撤退するということを意味します。

ツーリングカーレースだと事情が異なりますし、コストも抑えられているため、自動車メーカーからすると「とりあえず参加しておいた方が得」となるわけです。
世界中の自動車メーカーが参入しているFIA-GT3なんて、その典型例ですよね。

このように両者は、自動車メーカーにとっては対照的なカテゴリーなのです。
言い換えるとフォーミュラカーレースは、自動車メーカーからのコミットメントが弱いカテゴリーなわけですね。

バーニーはF1から撤退する自動車メーカーを数多く見てきましたから、戦力均衡策に反対したのだと思います。
分配金の傾斜配分をある程度容認して上手く勝たせてやらないと、自動車メーカーはF1からすぐに居なくなるということを熟知していたのでしょう。

リバティはアメリカの企業ですから、NASCARやNFL、NBAなどを参考に、「F1でも戦力均衡策を!」と考えているのかもしれませんが、自動車メーカーはドライです。戦力均衡策で勝ち星が分散するようなことになれば、自動車メーカーは続々と撤退し始めるでしょう。

戦力均衡策の導入を巡りリバティとバーニーは対立し、バーニーはF1から追い出されたのではないでしょうか。

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最後まで読んでいただきありがとうございます。以下の関連記事もぜひご覧ください。

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Category: F1, モータースポーツ
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