2016年スーパーフォーミュラ第3戦 富士 決勝を振り返る
雨がらみの予選では、中嶋一貴選手があやうくQ1で敗退しかけたり、ルーキーのストフェル・バンドーン選手がポールポジションを獲得するなど、かなり多くの見どころがありました。
しかしコーナーが速くストレートが遅いSF14というシャシーだと、前を行くマシンを抜きづらく、決勝レースは高速パレードラップになりがちです。ところが今回は違いました。いくつかの要素が絡み合い、数多くのバトルが展開されたのです。
目次
予選順位
雨はほとんど止んでいるものの、路面はフルウェットの状態で始まった予選は、徐々に乾いていく路面にどれだけ合わせ込めるかが鍵となりました。
バンドーン選手は一人だけ違うラインを走行するなど、圧巻の走りを見せつけ文句なしのポールポジション獲得。昨年のチャンピオンである石浦宏明選手は、ラストアタックでミスがあったとのことで惜しくも2番手に終わりました。ナカジマレーシングはベルトラン・バゲット選手が4番手となり、好調ぶりをアピールします。
しかしチーム力という点において今回の予選でもっとも充実していたのは、3・5番手につけたインパルです。路面がフルウェットだったQ1でも、乾き始めたQ2・Q3でも、インパルは常に2台とも上位につけていました。
決勝序盤
ポールポジションのバンドーン選手は好スタートを切りましたが、2番手グリッドの石浦選手はさらに良いスタートダッシュで、ブレーキングポイントまでにはバンドーン選手に並びかけていました。
石浦選手はイン側のグリッドでしたから、1コーナーのブレーキングから侵入のポジションでは有利です。当然のごとく彼はブレーキングを遅らせ、オーバーテイクを試みます。
大混乱の1コーナー
しかし石浦選手は止まりきれず、ラインがアウト側にはらみコースアウト。バンドーン選手もフロントタイヤをロックさせてしまい、1コーナーで大きく失速してしまいました。
間隙を突いてトップに浮上したのはJ-P.デ・オリベイラ選手。2位には6番手スタートの中嶋一貴選手がジャンプアップ。4番手スタートのバゲット選手は棚ボタの3位で、1周目のコントロールラインを通過します。フロントローの2人は、バンドーン選手が4位、石浦選手が6位と、大きく順位を落としてしまいました。
魔のセクター3
石浦選手はポジションを取り戻そうと必死の走りを見せますが、それが裏目に出てプリウスコーナーでコースオフ。8位に順位を落としてしまいます。
トップのオリベイラ選手も一貴選手を突き放そうとペースアップを試みたものの、失敗。最終コーナーでマシンを大きくテールスライドさせてしまい、首位を明け渡してしまいました。スタート直後のセクター3は挙動を乱すマシンが多く、滑りやすいコンディションだったようです。
決勝中盤
11周目には小暮卓史選手が早くもピットイン。次の周にはアンドレ・ロッテラー選手もピットに入ります。
ロッテラー選手は給油のみ・タイヤ無交換でピットアウト。スタートで順位を大きく落としていた彼は、集団の中で遅い車に引っかかっていました。そこで早めのピットインで単独走行する作戦に切り替えたわけです。
順位を落としたにもかかわらず、コース上にとどまった石浦選手のようなドライバーもいました。しかし塚越雄大選手を抜きあぐね、前に出ることができません。
ロッテラーと同じ作戦を取ったのが、国本雄資選手です。彼はスタート直後に小林可夢偉選手と接触し、最下位にまで順位を落としていました。
セーフティーカー
しかしその国本選手が、1コーナー立ち上がりで単独スピン。コース中央で車を止めてしまいます。国本選手のマシンはギアボックスを損傷していたためにスピンし、再スタートもできなかったのです。
国本選手のマシンを撤去すべく、16周目にセーフティーカーが導入されました。まだピットを済ませていなかったマシンは、この機会にピットへと雪崩れ込みます。中嶋一貴選手を始めとするほとんどのドライバーが、給油のみ・タイヤ無交換でピットアウトしたため、ピットでの大きな順位変動はありませんでした。
先にピットを済ませていたロッテラー選手は、7位にまでポジションアップします。しかし同じトムスチームの一貴選手は、オリベイラ選手との間に築いたマージンを失ってしまいました。
リスタート
20周目にリスタートが切られると、ロッテラー選手がジェームズ・ロシター選手をオーバーテイク。Bコーナーでは関口雄飛選手に仕掛けますが、ここは関口選手が上手く抑えます。しかしこの2人のバトルは、これで終わりではありませんでした。
決勝終盤
30周目を過ぎると、1-2位の中嶋一貴 vs オリベイラ、3-4位のバゲット vs バンドーン、そして5-6位の関口 vs ロッテラー、さらには8-9-10位のナレイン・カーティケヤン vs 塚越 vs 石浦と、そこかしこで接近戦が発生し始めます。
40周目になると戦いはさらに激しさを増し、1-2位の差は1秒を切り、5-6位もサイドバイサイド、そしてバゲット選手のペースが落ち始めた3-4位争いには、5-6位争いの関口選手とロッテラー選手が追いついてしまい、4台が一団となってしまいました。
4台から7台の集団バトルへ
4台となった3位争いの集団は、46周目だというのに、まるでスタート直後のように混沌とした状況。その中でチャンスをものにしたのは関口選手でした。Bコーナーの飛び込みで、暴れるマシンをねじ伏せながらバンドーン選手をオーバーテイクしたのです。
ロッテラー選手も負けていません。関口選手に抜かれ失速したバンドーン選手に並びかけると、Bコーナーの切り返しでアウトから被せてオーバーテイク。その後は関口選手まで抜き去るような勢いで、セクター3の坂道を駆け上がって行きました。
このバトルの間に6位のロシター選手、7-8位争いを繰り広げていたカーティケヤン選手と石浦選手も追いついてきたため、3位争いの集団が7台に膨れ上がるという、近年稀に見る状況となったのです。
無念のベルギー人
48周目のBコーナーで関口選手に3位の座を譲り渡したバゲット選手は、リスタート直後から抱えていたキャンバーシムというパーツのトラブルが悪化し、ズルズルと順位を下げていきます。
バンドーン選手はペースの落ちたバゲット選手を一度はかわしたものの、48周目の最終コーナーを立ち上がった後、再びバゲット選手に抜き返されてしまいます。また、1コーナーのブレーキングポイント手前では、バゲット選手のスリップを使ったロシター選手にも並びかけられていました。
ですがブレーキング競争の前に、バンドーン選手のブレーキが音を上げてしまいました。彼のSF14・ホンダはなすすべもなくスピンし、1コーナーのグラベルに飲み込まれてしまったのです。
バゲット選手もその後リタイアを余儀なくされました。今回の富士で大活躍したベルギー人の2人は、チェッカーを受けることなくレースを終えたのです。
トムス vs インパル
トップ争いは抜き差しならない状態になっていましたが、1コーナーはバンドーンのマシン処理で黄旗が振られており、最大のオーバーテイクポイントが使えなくなっていました。
ですが51周目になって黄旗が解除された直後の1コーナーで、オリベイラ選手が中嶋一貴選手をオーバーテイク! 残り4周でついにトップが入れ替わります。
1〜4位までがインパル-トムス-インパル-トムスという状況になりましたが、ペースはインパルの2台の方が良く、トムス勢は徐々に離されてしまいます。
6位争いは最後の最後、チェッカー直前で石浦選手がカーティケヤン選手を逆転するという波乱が起こったものの、上位陣はそのままの順位でゴール。オリベイラ選手は今シーズン初優勝、関口選手はスーパーフォーミュラ初表彰台と、インパル陣営にとっては最高の結果となりました。
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