ポルシェ918スパイダーが28人の観客を巻き込む事故

不正・不祥事,批評

ポルシェ918スパイダー
参考画像: ポルシェ918スパイダー

画像の出典: news.mynavi.jp


繰り返される悲劇

ポルシェ 918スパイダー、観客席に突っ込む…28名が負傷[動画] -response

石原軍団のTVRが事故ったときのことを思い出しました。

どちらの事故も、運営側の安全意識が低い。

ポルシェの事故の方は、直線だし広いから安全だと考えていたフシがあります。そうでなければコースのすぐ側まで観客を入れないでしょうし、プラスチック製のバリアを置くだけの手抜き安全対策などしなかったはずです。

石原軍団の方は、低速だから安全だと考えていたのでしょう。けれどハイパワーFRの場合は、発進加速時がもっともホイールスピンしやすい。スタートでふらついた後上手く立て直せず側壁に激突するのは、ドラッグレースでよく見かける光景です。それほどスピードが出てない=安全というわけではないのです。

アマでもプロでも、事故は起こる。

石原軍団の事故は、たしか俳優さんが運転していた際に起こった事故だったと思います。アマチュアドライバーで、しかも車がトラクションコントロールの付いていないTVR・タスカンでしたから、起こるべくして起こった事故と言えます。

ポルシェの事故はモーターショーのイベントで発生したとのことなので、ドライバーはおそらくプロなはず。しかし映像の最初で右後輪をダートに落とし、コントロール不能に陥っています。

モーターショーの運営者は、プロでもミスをするという前提で安全対策を行うべきでした。

どこまで自己責任に問えるか?

派手なカーアクションを見世物にしている運営側が十分な安全対策を取らないのは、「観客が事故に巻き込まれても自己責任」という原則に甘えて、利益を優先しているからです。

ヨーロッパの地方ラリーでは、観客が亡くなる事故が今年立て続けに起きています。ニュルでも宙を舞ったGT-Rが観客席に飛び込み、やはり犠牲者を出してしまっています。双方に共通するのは、「経済的な苦境」です。

経済的な苦境が、利益至上主義を生み出す。

地方ラリーでは予算不足で警備のための人員が不足していました。そのため観客の誘導ができず、危険な観戦ポイントに多数の観客が押し寄せてしまいました。

ニュルブルクリンクは破産し、事故当時は経営再建の真っ最中でした。ニュル24時間で古くて遅い車のエントリーを受け付けなくなったのは、FIA-GT3マシンの台数を増やすためだったといいます。FIA-GT3のワークス対決が、多くの観客を惹きつけていたからです。ニュル北コースにとってFIA-GT3マシンが速すぎるのは、誰の目にも明らかでした。しかしサーキット側には、コースを改修する経済的な余裕が無かったのです。

観客が多い方が利益は出ます。安全対策をケチればさらに利益が出ます。そこで「自己責任」という悪魔の声に運営側が負けてしまうと、安全対策はなおざりにされたまま、観客動員ばかりを追求する「利益至上主義」が正当化されてしまいます。運良く事故が起こらないまま時間が経過すると、危険な状態が常態化し、疑問を持つことすらしなくなるのです。

自己責任に問えるのは、一般常識で対応できる範囲だけ。

一般的に知られていない知識を必要とする事柄に関しては、自己責任で片付けるべきではないと考えます。正しい知識を広め啓蒙する運動そのものが、消費者の健全なコミュニティを生み出すと思われるからです。

消費者のコミュニティだけが、運営側の暴走を阻止できる。

運営側の利益至上主義に歯止めをかけられるのは、消費者だけです。お金を払うのは消費者ですから、消費者自身が運営側の利益至上主義にNOを突きつければ、運営側も対応せざるを得ません。消費者が声を上げない資本主義社会は、発展途上国の開発独裁体制と何ら変わりません。消費者はお客様ではなく、資本主義社会におけるアクターの一人なのです。