ヤマハ・スポーツライドは2017年にデビュー!?
本気で4輪メーカーになるつもりのヤマハ
先の東京モーターショーで発表された「ヤマハ・スポーツライドコンセプト」は、マツダ「RX-VISION」に話題をさらわれてしまい、メディア側の反応もイマイチでした。トラディショナルなライトウェイトスポーツカーだから話題性に欠けると思われたのかもしれません。
しかしヤマハが100億円を投じ、シティコミューター「Motiv」の工場をヨーロッパに建設するとの噂も漏れ聞こえています。
Yamaha Will Build Gordon Murray’s Motiv City Car, Will Launch By 2019 – carscoops
ヤマハは本気で4輪事業に参入するつもりなのです。噂されるスポーツライドのスペックも、並みのスポーツカーのそれではありません。
1.5リッターターボで、車重は750kg!!
スポーツライドのサイズは、全長3900mm*全幅1720mm*全高1120mmと予想されています。
Yamaha Sports Ride Coupe Will Allegedly Use A 1.5-Liter Turbo, Debut In 2017
アルファ4Cよりも一回り小さく、ロータスエリーゼよりも全長が長い車になりそうです。
車重はアルファ4Cが1050kg、ロータスエリーゼ(1.6L)が900kgですが、スポーツライドはなんと750kg! ……もちろん現段階では予定でしかありませんが、もし実現すれば無敵のコーナリングマシンになることでしょう。
軽さの秘密は「iStream」
この軽さを実現するのが、ゴードン・マーレイ・デザイン社が開発した「iStream」というシャシー構造です。鋼管スペースフレームにカーボンの複合材を接合したシャシーは、軽量・高剛性であるだけでなく、生産コストの低減や、生産時のCO2排出量の削減にも寄与します。
エンジンは1.5リッターターボとのこと。パワーは不明ですが、仮にリッター当たり100ps程度、つまり150psであったとしても、車重が750kgならパワーウエイトレシオは5kg/psとなり、十分な加速性能を持つことになります。
ターボカーでリッターあたり100psを達成するのはさして難しくありませんから、実際の加速性能はさらに優れたものになるでしょう。どうやらスポーツライドは単なるライトウェイトスポーツではなく、本格的なピュアスポーツを目指しているようです。
ヤマハはなぜ今になって4輪に参入するのか
自動車産業の激変
世界のオートバイ需要は年率5~6%前後で伸び続けると予想されており、2輪生産の事業環境が悪化しているわけではありません。
にも関わらずヤマハが4輪参入を画策するのは、自動車産業においてパワーソースの多様化や自動運転車などの技術革新が相次いでおり、市場環境が激変しているからだと思います。
市場環境の変化は、新規参入には絶好の機会といえます。イノベーションのジレンマに悩まされるビッグネームたちを尻目に、新規参入企業は全く新しい技術やビジネスモデルでチャレンジできるからです。
自動運転時代の到来
ヤマハとしての本命は、シティコミューターの「Motiv」の方だと思われます。
自動運転の時代が到来すれば、車はUberのようなサービスを通じてレンタルするのが主流になり、走る場所に応じて車が使い分けられるようになります。長距離移動が不得手なシティコミューターは車を所有する時代には嫌厭されてきましたが、自動運転の時代にはコストの低さからむしろ好まれるはずです。
自動運転の時代に大きく成長するカテゴリーと睨んで、ヤマハはシティコミューターに狙いを定めたのではないでしょうか。
スポーツライドに秘められた役割
一方スポーツライドは、iStreamを実際に大規模生産するためのテストベッド的な役割を担っているものと筆者は推測します。iStreamの軽さを活かせるカテゴリーとして、スポーツカーが選ばれたのではないかと。
そう思う根拠は、Motivとスポーツライドの予想発売年です。Motivは2019年ごろ発売されると言われており、スポーツライドは2017年ごろの発売とされています。しかし発表されたのはMotivが2013年、スポーツライドコンセプトは2015年と、予想発売年と逆転しています。
先に発表されたMotivがあとから発売されるということは、開発が難航しているとしか考えられません。スポーツライドは、ゴードン・マーレイ得意のスポーツカーという素材で、iStreamの性能を実証するために計画されたのではないでしょうか。
もちろん全ては藪の中、筆者の推測に過ぎません。けれど新規参入する会社が、2つのプロジェクトを同時に進めるのはリスキーです。リスクテイクせざるを得ない状況に陥ったと考えるのが自然でしょう。
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