SUVの次はピックアップトラックブームが到来?
アメリカだけで売れているわけではない
販売好調なSUVに続き、大型車が人気を博しています。AutoEXPRESSによると、イギリス国内でもピックアップトラックの販売が伸びているそうです。
ピックアップトラックの売上は各国で急成長しています。日本では馴染みの薄いピックアップトラックが、グローバルな人気を獲得しつつあるのはなぜなのでしょうか?
トップ画像の出典: netcarshow.com
目次
大型車ブームの要因
最大の理由は原油安です。1バレルあたり100ドルを超えていた時代には、ともかくガソリンを節約することがユーザーの念頭にありました。しかし1バレルあたり40ドル程度にまで低下した現在では、燃費の優先順位は下がっています。
もう一つの理由として、パッケージングのしやすさがあります。
最近の自動車は高い衝突安全性能を求められているために、クラッシャブルゾーン(潰れて衝撃を吸収する部分)を確保しなければなりませんし、室内空間の広さも求められていますから、小型車だとどうしてもスペース的に厳しくなりがちです。
しかし大型車ならばデザイン上の苦労を軽減できます。十分なスペースの中に、消費者の要求する全ての要素を詰め込めるのです。
市場におけるピックアップトラックの存在感
ピックアップトラックの本場といえばアメリカです。アメリカの自動車市場では日本車が席巻していると思われがちですが、日本車が強いのは「乗用車」のみで、SUVとピックアップトラックで構成される「ライトトラック」では、BIG3に遅れを取っています。
全米の自動車販売台数におけるライトトラックの比率はおよそ6割な上、乗用車より利益率が高いため、SUVやピックアップトラックはBIG3の金城湯池と化しています。
昨年全米でもっとも売れた自動車は、フォードのFシリーズと呼ばれるピックアップトラックでした。
アメリカでピックアップトラックが売れているのは、実用性はもちろんですが、それ以上に税制によるところが大きいです。州によっては無税となるため、ピックアップトラックは大型車の割にお得な車として認識されています。
ピックアップトラックの優遇税制は、国民の経済活動を下支えする目的で導入されました。商用にも乗用にもつかえるピックアップトラックは、モータリゼーションを推進する上で最適な車種だったわけです。
タイにもアメリカと同様の、ピックアップトラック優遇税制があります。ただし環境面の問題から、2016年以降は1kmあたりのCO2排出量が200gを越えると、税率が2〜3%上がる仕組みに変更されるそうです。※1 よってタイのピックアップトラック人気が今後も続くかはどうかはわかりません。
※1 タイ発戦略車ピックアップトラック、再び激戦 | 日本経済新聞
ピックアップトラックは今後もシェアを伸ばす
たとえ優遇税制が無くなっても、ピックアップトラックは今後もシェアを伸ばしていくでしょう。現に優遇税制の無いイギリスでも、ピックアップトラックは5年間で68%の販売増となっています。ピックアップトラックの「快適性」と「経済性」が大幅に向上した結果、所有したいという人が増えたためです。
大柄なボディと快適な内装を兼ね備えたピックアップトラックは、贅沢なイメージを有しています。トルクフルなエンジンの力強さは、走りにこだわる人を満足させるのに十分です。燃費もかなり改善されましたし、実用的な荷台もあります。
このようにピックアップトラックは、広範囲のユーザーに訴求できるポテンシャルを備えているのです。
自動車メーカー側としても、利益率の高いピックアップトラックの販売拡大は望むところでしょう。しかもピックアップトラックはグローバルに通用する商品(特に積載量1トンクラス)なので、費用対効果が高い商品でもあります。
自動車メーカー側の思惑と、消費者側のニーズが合致しているわけですから、市場シェアが拡大しないはずがありません。原油安が続く限りは、ピックアップトラックはシェアを伸ばし続けるはずです。
日本でもブームになる?
残念ながら日本でピックアップトラックがブームになることはありません。積載量1トン程度のピックアップトラックでも全長が5m程度ありますから、日本で日常的に使うには大きすぎます。
ピックアップトラックは荷台があるために、全長を短くするには後席を省くしかありません。けれどそうすると2人乗りになってしまいますから、今度は利便性に問題が生じます。
コンパクトなボディが求められる日本市場では、コンパクト化しづらいピックアップトラックは中途半端な商品でしかありません。なので日本では今後も普及しないでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。以下の記事もぜひご覧ください。