ヒュンダイ・アイオニックにプリウスが勝っているのは燃費だけ→最終的には完全敗北で決着……
ヒュンダイ・アイオニックがイギリスで正式発表されました。市販バージョンの価格や性能、装備内容を、UK版プリウスと比較したいと思います。
更新情報
ヒュンダイ・アイオニックとプリウスの燃費比較(アメリカ版)を追加しました(2016/12/07)
価格比較
まずはアイオニックとプリウスのUK価格を比較してみましょう。
パワートレイン | グレード名 | 価格(£) |
---|---|---|
ハイブリッド | Hybrid SE 1.6 GDi | 19,995 |
Hybrid Premium 1.6 GDi | 21,795 | |
Hybrid Premium SE 1.6 GDi | 23,595 | |
電気 | Electric Premium | 28,940 |
Electric Premium SE | 30,795 |
パワートレイン | グレード名 | 価格(£) |
---|---|---|
ハイブリッド | Active | 23,295 |
Business Edition | 24,195 | |
Business Edition Plus | 25,995 | |
Excel | 27,450 |
アイオニックはプリウスの価格帯を避けている?
ハイブリッドの価格を比較すると、アイオニックの最上級グレードと、プリウスのエントリーグレードの価格がほぼ同じですね。つまり、両者の価格帯はほとんど被っていません。
UKでアイオニックと同価格帯なのは、実はオーリス・ハイブリッドなのです。
オーリス・ハイブリッドのUK価格
パワートレイン | グレード | 価格(£) |
---|---|---|
ハイブリッド | Active | 20,345 |
Icon | 21,395 | |
Business Edition | 22,195 | |
Design | 22,195 | |
Excel | 24,495 |
アイオニック・ハイブリッドの価格帯は£19,995〜23,595、オーリス・ハイブリッドの価格帯は£20,345〜24,495と、ほぼ同じ価格帯に属しているのがわかります。
性能比較
ハイブリッド3車種の性能を比較してみます。
車名 | 馬力(ps) | トルク(kgf・m) | 燃費(km/L) |
---|---|---|---|
アイオニック | 141+43.5 | 14.9+27.0 | 29.4 |
オーリス | 138 | 14.4 | 27.8 |
プリウス | 123+82 | 14.4+21.1 | 33.3 |
燃費ではプリウスが圧倒的ですが、馬力ではアイオニックが抜きん出ています。
価格帯がほぼ同じアイオニックとオーリスの比較では、アイオニックの完勝です。
走りの質感はまだわかりませんが、少なくともギアボックスに関してはアイオニックの方が評価されるでしょう。
アイオニックがDCTなのに対し、オーリスはCVTだからです。
ヨーロッパのユーザーは、ダイレクト感に乏しいCVTのフィーリングを嫌っています。
プリウスはECVTという特殊な変速機構(THS-Ⅱそのものとも言える)なので、走りに関してはアイオニックに対し不利はつかないと思います。
ヒュンダイ・アイオニックとプリウスの燃費比較(アメリカ版)
UK仕様の比較ではプリウスの燃費が上回っていましたが、アメリカのEPA燃費では、プリウスはアイオニックに負けてしまったようです。
ヒュンダイ・アイオニック・ハイブリッドブルーのEPA複合燃費(高速と街乗りの総合燃費)は58mpg(24.7km/L)。
対するプリウス・エコ(15インチタイヤでリチウムイオンバッテリー搭載の燃費スペシャルグレード)のEPA複合燃費は、56mpg(23.8km/L)でした。
ちなみにPHV同士で比較しても、アイオニックPHVが136mpg-e(57.8km/L)なのに対し、プリウス・プライム(日本名:プリウスPHV)は133mpg-e(56.5km/L)と、やはりアイオニックの方が低燃費です。
アイオニックがプリウスにEPA燃費で優った理由は、バッテリー容量、モーターのトルク差、DCTのいずれかしか考えられません。
まずバッテリー容量ですが、
プリウスが0.75kWhなのに対し、アイオニックは倍以上となる1.56kWhのバッテリーを搭載しています(ともにリチウムイオンバッテリー搭載車での比較)。
モーターのトルク差は、アイオニックが27.0kgf・mなのに対し、プリウスは21.1kgf・mと、結構な差がついています。
大きなバッテリーで高トルクのモーターを動かし、一気に加速させるのがアイオニックのやり方なのでしょう。
基本的にはDCTの方が伝達効率が良いことも、アイオニックの低燃費に貢献しているのかもしれません。
逆にいうとその3つくらいしか、両車の違いが無いんですよね。
一番軽いグレード同士で比較しても、プリウスよりアイオニックの方が60kgも重いので、多分バッテリー容量+モーターのトルク差が燃費の差になったんじゃないかなと思います。
モーターアシストを使える時間が長くないと、重いのに燃費が良いことの説明がつきませんから。
また、ヨーロッパのNEDC(New European Driving Cycle)燃費よりも、EPA(Environmental Protection Agency, 合衆国環境保護庁)燃費の方が実燃費に近い数字が出るため、おそらく一般ユーザーが走らせてもアイオニックの方が実燃費が良いと思われます。
UK仕様の比較では、燃費だけがプリウスの取り柄だと書いたのですが、米国仕様では燃費すら負けてしまい、プリウスの完全敗北となってしまいました。
同価格帯グレードの装備内容を比較
すべてのグレードの装備を比較するのは骨が折れるので、価格がほぼ同じグレード同士を比較します。まずはアイオニックとオーリス・ハイブリッドのエントリーグレードの装備を比較してみましょう。
アイオニック Hybrid SE 1.6 GDiの装備
- 15インチ・アロイホイール
- Digital Audio Radio with Bluetooth
- クルーズコントロール(アダプティブではない)
- リア・パーキングセンサー
- リアビューカメラ
- プリクラッシュブレーキ
- レーンキープアシスト
オーリス・ハイブリッド Activeの装備
- 15インチ・アロイホイール
- シャークフィンアンテナ
- Follow-Me-Home Headlights
- オートマチックエアコン
- フロントパワーウィンドウ
- ラジオ and CDプレーヤー with WMA and MP3(USB付き)
- Bluetoothハンズフリーシステム
- デイタイムランニングライト(LED)
オーリス・ハイブリッド Activeの方がアイオニック Hybrid SEより£350高いのですが、先進的な安全装備が何一つ備わっていません。オーリスの装備は、かなり見劣りする内容です。
次はアイオニックの最上級グレード「Hybrid Premium SE 1.6 GDi」と、プリウスのエントリーグレードである「Active」を比較してみます。こちらの比較では、アイオニックの方が£300高いです。
アイオニック Hybrid Premium SE 1.6 GDiの装備
- キセノンヘッドライト
- キーレススタート
- デジタル・インストゥルメント・クラスター
- 7インチディスプレイナビ+Apple CarPlay
- スマートフォンワイヤレスチャージャー
- レザーパワーシート(ベンチレーション付き)
- 前席・後席シートヒーター
- ステアリングヒーター
- アダプティブ・クルーズコントロール
- ブラインドスポットアシスト
- パーキングアシスト
「デジタル・インストゥルメント・クラスター」は、おそらくアウディ・バーチャルコクピットのようなものだと思います。ディスプレイに有機ELが使われているかどうかは不明ですが、アナログメーターは廃止されているようです。
もちろん上記の装備に加え、エントリーグレードのプリクラッシュブレーキや、レーンキープアシストも備わります。
プリウス Activeの装備
- 15インチ・アロイホイール
- LEDヘッドランプ/テールランプ(ライトガイド付き)
- オートライト
- フロントフォグランプ
- ヒーテッドドアミラー(ボディ同色・電動格納)
- プッシュボタンスタート
- 4.2インチマルチインフォメーションディスプレイ
- リアビューカメラ
- ロードサイン・アシスト
- アダプティブ・クルーズコントロール
- レーン・ディパーチャー・アラート(ステアリングアシスト付き)
ハッキリ言って、プリウスの装備は貧弱です。いくらプリウスの方が燃費が良くても、日常の使い勝手を考えたらアイオニックを選ぶ人が多いと思います。
アイオニックEVの競争力
アイオニックはハイブリッドと電気自動車(EV)の2本立てなので、EVにも少し触れておきましょう。
EV仕様は28kWhのバッテリーパックを搭載しており、ヒュンダイは航続距離280kmを主張しています。
価格は£28,940〜30,795です。
ちなみに日産リーフ・30kWh(UK仕様)は航続距離248kmで、価格は£25,230〜27,230となっています。
リーフにはアダプティブ・クルーズコントロールやプリクラッシュブレーキ等が付いていませんが、£1,710〜5,565もの価格差があるので仕方がないのでしょう。両者の差は価格相応のようです。
逆にいうとアイオニックEVは新型なのに、飛び抜けた性能や装備がありません。
ハイブリッドとプラットフォームを共有しているものの、価格が圧倒的に安いというわけでもなさそうです。
少なくともテスラ・モデル3のような、エポック・メイキングなEVとは言えないと思います。
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