NextEV NIO EP9 驚異の中国製EVスーパーカー
中国の自動車メーカー、NextEVが、電気自動車(EV)のスーパーカー「NIO EP9」の詳細を発表しました。
発表内容のすべてが事実ならば、これまでの常識を覆す車として、スーパーカー史に名を残すことになりそうです。
NextEVとは?
ヨーロッパ・フォード元社長で、マツダの常務だったこともあるマーティン・リーチ氏と、ウィリアム・リー氏(オンライン自動車販売「BitAuto」の創業者)が創業したEVベンチャーです。
日本とも関わりが深いマーティン・リーチ氏
Dr.マーティン・リーチ氏は、ロータリーエンジン(RE)の開発を続行させた人物として知られています。
RE搭載の試作車(たしかロードスターにREを載せたやつだったはず)をテストドライブしたリーチ氏は、そのドライブフィールを非常に気に入り、RE開発を打ち切る方針だったフォード本社に掛け合って、REの命脈を保ったのです。
また、リーチ氏の設立した自動車関連のコンサルティング会社「マグマ・グループ」は、元アロウズのファクトリーを所有する企業を買収したために、ファクトリーを借りていたスーパーアグリF1とも関わっていた時期があります。
そんなリーチ氏ですが、つい先日癌でお亡くなりになられました。まだ59歳だったそうです。5歳で自動車に興味を持ち、12歳からレーシングカートに乗り、死の間際までNextEVの行く末を気にしていたというリーチ氏。どうか安らかにお眠りください。
NextEVの本拠地
リーチ氏はイギリス出身ですが、NextEVは中国・上海とアメリカ・カリフォルニア州サンノゼ(つまりシリコンバレー)を本拠地としています。
他にドイツ・ミュンヘンにデザインセンター、イギリス・ロンドンにフォーミュラEの拠点を構え、5000人の従業員を雇用しています。
また、中国の投資会社ヒルハウス・キャピタル・グループなど、NextEVには中国系の資本が多く入っているそうです。
フォーミュラEでの活動
NextEVはFormula Eに参戦しており、名前だけは聞いたことがあるという人も多いでしょう。
今シーズンはネルソン・ピケJrとオリバー・ターベイのラインナップでエントリーしています。
成績的には中堅チームといったポジションですが、今後の活躍に期待したいところです。
NIO EP9はNextEV初の市販車
しかし同社が市販車を販売した実績はまだありません。
まだ海の物とも山の物ともつかないNextEVが初めて発表した車が、EVスーパーカーの「NIO EP9」なのです。
NIO EP9のデザイン
NIO EP9のスペック
EP9の最高出力は、なんと<1360馬力です。
よってメガ・カーに該当します。
出力1メガワット(1359.62馬力)オーバーの車という意味ですね。
とてつもないパワーを有するNIO EP9は4WDなのですが、0-100km/h加速は2.7秒と、テスラ・モデルS P100Dよりも0.1秒しか速くありません。
最高速も310.4km/hと、パワーの割りには伸びがイマイチです。
しかしモデルS P100Dの車重は確実に2トンオーバー(P90Dですら2.2トン)ですから、NIO EP9の車重(1735kg)は原因ではなさそうです。
また、公道走行可能なEVの世界最速記録はGenovation Carsが改造したシボレー・コルベットのEVですが、680psのパワーで最高速330km/hを叩き出しています。
つまりNIO EP9の加速力や最高速がパワーに見合わないのは、EVゆえの限界、というわけではないのです。
F1の約2倍のダウンフォース
NIO EP9の加速力と最高速が、1メガワットのパワーに見合うだけパフォーマンスでないのは、巨大なダウンフォースが原因です。
そのダウンフォース量はF1マシンの2倍だと、NextEVは主張しています。
238km/h時に、24000ニュートン(2447.3kgf)のダウンフォースを発生しているというのです。
現在のF1マシンのダウンフォース量は、レギュレーションで12500ニュートン(1275kgf)以下に制限されています。
よってNIO EP9は、F1マシンの2倍弱のダウンフォースを発生しているわけです。NextEVの発表した数字が事実ならば、ですが。
ちなみにかつてのグループCカーは、2〜4トンもの強大なダウンフォースを発生していたと言われています。NIO EP9は、Cカーに匹敵するほどの空力マシンなのです。
ハイダウンフォースゆえの問題
基本的には、ダウンフォースが増えるほどドラッグ(空気抵抗)も増えます。
空力開発はダウンフォースとドラッグの比(揚抗比、L/D)を改善するのが目的ですが、それでもダウンフォースを増やすと、ドラッグもそれに比例するのは避けられません。
NIO EP9の加速力や最高速がパワーと釣り合わないように見えるのは、巨大すぎるダウンフォースのためである可能性が高いです。
可変ディフューザーでダウンフォースの調整ができるらしいのですが、それでも可変量には限界があるはずですから、直線加速ではドラッグが邪魔していると考えるのが妥当でしょう。
しかし24000ニュートンのダウンフォースは、コーナリング時にこそ真価を発揮します。
減速Gは3.3G、横Gは2.53Gにも達するというのです。
ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで7分5秒12(その後自己ベストを更新し、6分45秒90の市販車最速タイムを記録しました)を達成できたのも、優れたコーナリングパフォーマンスがあってこそでしょう。
航続距離と充電時間
45分間の充電で、424kmの走行が可能だそうです。おそらく直流(DC)急速充電器を使用した場合だと思われます。
EP9はバッテリーを簡単に交換できるように設計されているとか。
充電の手間を省くためなのか、それともバッテリーの劣化に対応するためのものなのかは不明ですが、交換しやすさ自体がデメリットになることは無いはずです。
価格と生産台数
価格は120万ドル($1=¥110換算で、およそ1.32億円)、生産台数はわずか6台だそうです。
もちろんたった6台では、開発費用をペイできないでしょう。
しかしNext EVとしては、2017年から大量生産を開始するEVに先行する形での技術力の実証を目的としており、採算性は重視していないようです。
今回発表されたNIO EP9のスペックが事実ならば、中国系自動車メーカーの技術力は侮れません。EV時代の到来とともに、チャイニーズ・カーの躍進が始まる予感がします。
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