視聴率低迷&ファン高齢化のNASCARにモンスターが投資する理由
エナジードリンクメーカーのモンスター・ビバレッジ社が、NASCARとシリーズタイトルスポンサー契約を結びました。
しかし近年のNASCARは視聴率の低下やファンの高齢化に悩まされています。
知名度バツグンで若者に人気のモンスター・エナジーが、NASCARのスポンサーになる意味が果たしてあるのでしょうか?
今回はモンスター・ビバレッジの狙いについて検証してみました。
画像の出典: carscoops.com
苦境に陥るNASCAR
かつては「性能均衡による接戦の演出」「コストの低さ」「テレビ放映権料ビジネス」「ファンサービス」などの優等生として、理想的なモータースポーツシリーズであると見られていたNASCARですが、ここ数年の視聴率は右肩下がりです。
視聴率が下がった理由としては様々な理由が考えられますが、最大の理由は「バトルの減少」だと思います。
とくに「Car of Tomorrow(CoT)」という第5世代マシン(GEN-5)導入以降は、空力的に敏感なマシンとなり、接近戦が明らかに減少してしまいました。
この傾向は現在のGEN-6マシンでも変わっていません。
ショートトラックと呼ばれる全長1マイル以下のコースを除けば、オーバルコースのレースは平均速度が非常に高速(200km/hオーバー)です。
よって空力の影響が非常に大きいのですが、NASCARは接近戦を演出できる空力レギュレーションを策定できずに苦しんでいます。
10年で44億ドル(5185億円)というFOXとの巨額放映権料契約も、このままでは次の更新で減額されるのは確実です。
しかし幸いにも契約期間は2024年まであるので、NASCARにはレースを改革する時間的猶予があります。
モンスタービバレッジの狙い
そんなNASCARの救世主として颯爽と登場したのが、エナジードリンクメーカーのモンスタービバレッジです。
スプリント・ネクステルが抜けて空席となったシリーズタイトルスポンサーの座に収まりました。
しかしモンスタービバレッジの契約額は、前任のスプリントよりも少額だと見られています。
NASCARは足元を見られた格好です。
スプリントよりは安く契約できたといっても、モンスタービバレッジがNASCARに投資する意味はあるのでしょうか? その理由についてモンスタービバレッジはこのようにコメントしています。
つまりモンスタービバレッジは、若者に広めるためでなく、中高年層にモンスター・エナジーを認知してもらうためにNASCARへと投資するということです。
若者には十分な知名度がありますから、未開拓の中高年層にアピールする狙いがあるのでしょう。
なぜNASCARなのか?
単純に中高年層だけが見ているような競技に広告を出しても、モンスター・エナジーのブランドイメージがオヤジ臭くなってしまいます。
そこでNASCARに白羽の矢が立ったのでしょう。
NASCARファン層の中心世代は、35〜64歳です。特に多いのは45〜54歳となっています。
少ないのは18〜34歳の年齢層です。
つまりモンスター・エナジーの主要顧客層は、NASCARファン層においては少数派ということになります。
やはりモンスタービバレッジの狙いは、中高年層のユーザー獲得にあるのです。
しかしNASCARは中高年層だけが見ているわけではありません。
全米の世代別人口とNASCARファン層を比較しても、極端に低いのは18〜24歳のファン層(全米の18〜24歳人口を100としたとき、同世代のNASCARファンは83と乖離している)だけです。
よってオヤジ臭いというイメージは避けつつ、中高年層のユーザーにアプローチできます。
NASCARへの投資は、モンスタービバレッジにとって願ったり叶ったりなわけです。
モンスターが新たな顧客層の開拓に乗り出す理由
世界のエナジードリンク市場のシェアは、レッドブルとモンスタービバレッジの2社が寡占しており、他社は雀の涙ほどのシェアしか持っていません。
レッドブルは非公開企業なので決算内容は不明ですが、モンスタービバレッジはNYSEに上場しており、業績が公開されています。
上場以後の売上高と営業利益は以下のとおりです。
右肩上がりに業績を伸ばしてきたモンスタービバレッジですが、アメリカのエナジードリンク市場はそろそろ飽和化しつつあるとの見方も出始めています。
その対策としてモンスタービバレッジは、未開拓だった中高年層の獲得に乗り出したのでしょう。
ちなみにモンスタービバレッジは、粗利益率は50〜60%、売上高営業利益率は20〜30%という超優良企業です。
高利益率の理由は、エナジードリンクが儲けやすいビジネスであること、そして大きな市場シェアを握っていることが要因でしょう。
独占・寡占こそが利益の源泉ですからね。
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