アルトが選ばれたRJCカー・オブ・ザ・イヤーに違和感

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スズキ・アルトが選ばれた理由に納得がいかない

スズキ・アルト_外観

画像の出典: suzuki.co.jp


今年のRJCカー・オブ・ザ・イヤー(以下、RJC・COTY)が発表され、アルトが最優秀賞に輝きました。

RJCカーオブザイヤー、スズキ アルト が最優秀賞…インポートは MINI クラブマン – response

たしかにアルトはよく出来た車だと思います。軽量・高剛性な車体によって低燃費と優れたハンドリングが両立されていますし、最小回転半径4.2mという取り回しの良さも魅力です。


アルトには斬新さが足りない

けれどアルトのコンセプトは、ダイハツ・ミライースのそれを真似たものです。言うなればパクリでしかありません。ミライースが発売されたのは2011年9月。アルトの発売日は2014年末。両車の差は、約3年3か月間の技術開発の差でしかなく、根本的な発想に変化は見られません。

むしろRJCは、3年3か月の月日が経過しているにも関わらず、同じ発想の車を出してきたスズキを批判すべきでしょう。

RJCがアルトを選んだ理由は「新設計プラットフォームによる軽量化で操縦性の向上や低燃費性能などが高く評価された」とのことですが、そんなのはどのメーカーもやってるわけで、殊更スズキだけが評価されるのは腑に落ちません。

何を基準にして選んでいるのか?

過去のRJC・COTY受賞車を列挙してみます。

  • スズキ・ハスラー
  • マツダ・アテンザ
  • 日産・ノート
  • 日産・リーフ
  • スズキ・スイフト
  • ホンダ・インサイト
  • スズキ・ワゴンR
  • マツダ・デミオ
  • 三菱・i
  • スズキ・スイフト
  • 日産・フーガ
  • マツダ・RX-8

まず目につくのは、スズキ車の受賞回数の多さです。ちなみにライバルのダイハツは、2007年にムーブが特別賞を受賞していますが、RJC・COTYの受賞はありません。

車種はコンパクトカーが多いですが、スイフトやフーガ、RX-8が選ばれていることからすると、燃費や環境性能だけを重視しているわけでもなさそうです。

RJCは、日本COTYに反発したいだけ?

RJCの成り立ちについて、wikipediaから引用します。

COTYに選ばれた車が「偏った選考だ」という反発から始まる。「偏り」は「選考者へのメーカーの接待漬け」ということもあるが、「選考者の自動車に対する思想の違い」とも言える。COTYは、レーサー出身の自動車評論家が多く、運動性能に偏重した選考が多い。一方、RJCは、より高学歴者や学識経験者、自動車メーカーなどの技術畑出身の選考者が多く、技術や独創性を重視することが多い。

wikipediaにはこう書かれていますが、現在のRJCの会員名簿を見るかぎり、9割以上がジャーナリストとフリーランスライターであり、技術者や学識経験者はわずかしかいません。

RJC会員情報

wikipediaだけ見ると、RJCは運動性能より環境性能や経済性を重視しているように思えますが、今年のアルトも操縦性が評価されての受賞ですし、過去の受賞車リストを見ても明確な基準はなさそうです。RJC・COTYは、日本COTYに選ばれなかった車にスポットライトを当てるだけの賞なのかもしれません。

受賞基準の明確化を

受賞基準が明確化されていない賞で「これがベスト!」と言われても、一般消費者は賞の何を参考にしたらよいかわかりません。「トータルバランスがー」と言われても、ニーズに合致しない車はただの鉄くずなのです。

消費者の嗜好が多様化した現代社会においてCOTYは、ターゲットとなる消費者層を定めて、その人たちのニーズにマッチする最良の車に賞を与えるべきです。

燃費や価格の安さを基準にした賞なら、アルトの受賞にも納得です。しかし操縦性ならロードスターの方が上ですし、革新性ならトヨタ・ミライが圧倒的でなければおかしい。その中でアルトを選んだのは、比べられないものを比べようとしたために、「総合力」や「トータルバランス」という言葉でお茶を濁した結果でしょう。