トヨタだけじゃない! ポルシェ、BMW、ホンダも全固体電池を開発中!【12/23更新】
ポルシェが全固体電池の開発に乗り出そうとしています。
ポルシェによると911をEV(電気自動車)化するには、軽量でコンパクトな全固体電池が最適なのだそうです。
今回は全固体電池の特徴と、ポルシェが考えるEVバージョンの911についてお伝えします。
更新情報
BMWとホンダも全固体電池の開発に乗り出したようなので、それぞれの項目を追加しました。また、フィスカーが申請した全固体電池の特許についての記述も追加しました。(2017/12/23)
全固体電池とは?
電解質が固体の電池のことです。
これまでの電池は、電解質が液体でした。
バッテリーは電流を流すと発熱しますが、電解質が液体の場合は沸騰する危険性と隣合わせです。
リチウムイオン電池の電解質は可燃性の有機溶媒ですから、最悪の場合は爆発・発火する危険性がありました。
サムスンのスマホが爆発・発火する事故が頻発し、航空機への持ち込みが禁止されたニュースは、記憶に新しいところです。
爆発までいかなくても、膨らんだリチウムイオンポリマー電池を見たことがある方は多いでしょう。
あれは電解質がガス化し、バッテリー内部にたまるために起こる現象です。
全固体電池ならそのような問題も起こりません。
全固体電池は車載バッテリーとして理想的
全固体電池ならば液漏れの心配はなく、発火もしにくくなります。
また、液体電解質を利用する場合とは異なり、正極と負極を分離するセパレーターが破損する心配がない(固体電解質だとセパレーターが不要)ため、短絡(ショート)することもありません。
液漏れしないということは、それを防ぐための堅牢な筐体が不要になることを意味します。
また、電解質内部のリチウムイオンが意図しない電極に流れないため、セル設計の自由度が高く、積層電池を作ることができます。
よって、軽量・コンパクトにできるのです。
また、積層化により高電圧を取り出すこともできます。
さらには100℃以上の高温でも動作し、−30℃でも性能の低下が少ないという優れた温度特性も備えています。
リチウムイオン電池は70℃が限界だったので、車載するには温度管理の面で難しさがありました。
エネルギー密度(体積当たりの充放電可能なエネルギー量)や、出力密度(どれだけの電流量で充放電できるか)にも優れているため、
体積当たりの電池容量が大きく、しかも短時間で充電できるのです。
しかも全固体電池はリチウムイオンだけが電解質の中を移動するため、陰イオンは移動しません。
陰イオンは、バッテリー劣化させる副反応を起こします。
よって全固体電池は、原理的に劣化しづらい電池なのです。
全固体電池のメリットまとめ
- 安全性の高さ
- 軽量・コンパクト
- 動作温度域の広さ
- 充電時間が短い
- 体積当たりの電池容量が大きい
- 劣化しづらい
なぜこれまで使われてこなかったのか?
実は全固体電池のエネルギー密度や出力密度が液体電解質のリチウムイオン電池を上回ったのは、つい最近のことです。
トヨタと東京工業大学が開発した全固体電池は、エネルギー密度が一般的なリチウムイオン電池の2倍、出力密度は3倍以上という性能を達成しています。
製造時や充放電時に加圧が必要だったり、量産時に負極側の安定性が低くなってしまうなど、性能以外にも数々の問題がありました。
全固体電池を搭載するEV版ポルシェ911
上述のようなメリットがあり、実用化の目処もつき始めた全固体電池を、ポルシェはEVバージョンの911に搭載しようとしています。
ポルシェは電動スポーツカーのコンセプトをテストすべく、EV版ボクスターを試作したことがあるそうです。
このEV版ボクスターには、当然ながら液体電解質のリチウムイオン電池が搭載されていたのですが、重すぎる車重が航続距離やロードホールディングに悪影響を及ぼしたため、結局市販化はされませんでした。
EV版の911を試作したこともあるようですが、フロア下にバッテリーを敷き詰める方式では、ドライバーのヒップポイントや、車体の全高が高くなってしまいます。
この問題は後部座席の位置にバッテリーを搭載すると解決可能ですが、2+2を止めたら、それはもはや911ではありません。
しかし全固体電池なら、それらの問題を一挙に解決可能です。
軽くコンパクトな全固体電池は、フロア下に敷いても高さを抑えることができますし、車重も軽く仕上げることができます。
フィスカーが申請した全固体電池の特許
アメリカのEVベンチャーであるフィスカーは、全固体電池の特許を申請したと発表しました。
1回の充電で500マイル(800km)以上の走行が可能になるそうです。
フィスカーの全固体電池の特徴は、従来の薄い固体電極の25倍もの表面積を持つ3次元固体電極にあります。
表面積が大きいことで、低温下での充電速度が速く、充電時間はわずか1分ほどです。
BMWはアメリカ企業と提携
BMWはアメリカのスタートアップ企業であるSolid Power社と提携し、合弁事業を立ち上げました。
Solid Power社は、コロラド大学ボルダー校からスピンアウトした企業だそうで、2012年から全固体電池の研究を行っているのだとか。
Solid Power社への投資額はわかりませんが、BMWはミュンヘンの新しいバッテリー研究施設に2億ユーロを投資するなど、EVへの投資を加速させています。
全固体電池に対する投資額も、かなりの巨額になるはずです。
ホンダも全固体電池を開発中だと認める
ホンダの広報担当者が、同社も全固体電池を開発中だと認めました。
ただし共同通信が報じた「日産との共同開発」については明確に否定しています。
とはいえ、トヨタはバッテリー分野においてパナソニックとの幅広い提携に踏み切りましたから、ホンダも今後他社との提携に乗り出す可能性は十分にあると考えられます。
全固体電池の時代はもうすぐ
ポルシェの全固体電池はまだ開発中とのことで、いつ導入されるかは不明です。
トヨタは2022年に導入すると言われています。
全固体電池は充電時間が短いので、トラックやタクシーなどの商用車も、完全にEV化されるかもしれませんね。
そうなれば都市部の大気汚染も改善されるはずです。
また、家庭用の蓄電池なども徐々に全固体電池に置き換わっていくはずなので、ソーラーパネルで発電した電力を電池に蓄えるというやり方が一般的になるかもしれません。
スマホやノートPCのバッテリー切れもなくなるでしょう。
軽くコンパクトで容量の大きな電池は、ウェアラブル機器やロボットにイノベーションを起こす可能性が高いです。
全固体電池は、世界を一変させる技術になると思います。
参考サイト
EVの課題克服?リチウムイオン電池の後釜 | 日経ビジネスオンライン
次世代電池を牽引する、全固体電池開発 | nature energy
開発進む全固体リチウムイオン電池【日立造船/NEDO】| 新エネルギー新聞
現実に近づいた夢の次世代バッテリー「全固体電池」を見た! | 価格.com
Electric Porsche 911 and Boxster to use solid-state batteries | AUTOCAR
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