ジェネシス G70がMotorTrendカー・オブ・ザ・イヤーを獲得! 韓国車が米国で日本車以上に評価されている……
ヒュンダイの高級車ブランドであるジェネシスの中型セダン「G70」が、米国の自動車メディア「MotorTrend」のカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。
MotorTrendの選評の冒頭には、このように書かれています。
ジェネシス G70は、なぜこれほどの高評価を得ることに成功したのでしょうか? 今回はG70の長所と短所を分析していきます。
ジェネシス G70はなぜ高評価なのか?
BMW 3シリーズを手本にしなかった
MotorTrendはG70が成功した要因について、BMW 3シリーズを、ベンチマークにしなかっただと述べています。
ラグジュアリー・セグメントの中型セダンをこれまで牽引してきたのは、間違いなくBMW 3シリーズです。
しかし、3シリーズの優位性は、ここ10年ほどの間にかなり疑わしいものとなっていました。
米国の販売台数でも、メルセデス・ベンツ Cクラスに追い抜かれてしまいました。
にもかかわらず、世界中の自動車メーカーは3シリーズをベンチマークにして開発を行い、3シリーズの乗り味にどれだけ似せたかを競ってきました。
多様な人材が開発に参画
しかしG70の開発には、BMWから移籍してきたスタッフが関わっています。
現在、ヒュンダイの研究開発部門にてトップを努めるAlbert Biermannは、元々はBMW Mのトップだった人物ですし、ジェネシスのアーキテクチャ開発を指揮したFayez Abdul Rahmanも同様です。
デザインには元ベントレーのLuc Donckerwolkeや、ブガッティ シロンをデザインしたAlexander’Sasha’Selipanovが関わっていますし、カラー&トリムスペリャリストであるBozhena Lalovaは、以前はメルセデスに所属していました。
そしてジェネシスのブランド戦略とマーケティングを指揮するのは、ランボルギーニの売り上げを10倍にしたというManfred Fitzgeraldです。
つまりG70は、多様なバックグラウンドを持つ人材が開発した結果として、3シリーズの劣化コピーではなく、「バリュー満載のスポーツセダン」が出来上がったのです。
キア スティンガーの問題点を解消した
ジェネシス G70は、キア スティンガーがベースとなっています。
スティンガーは、デザインやエンジンの評価こそ高かったものの、インテリアがあまりにも普通だったこと、そしてサスペンションがスポーツセダンにふさわしいものではなかったことなど、いくつかの問題を抱えていました。
しかしG70では、それらの問題点が見事に解消されたようです。
G70は、滑らかで、静かで、速く、高級で、軽快で、見栄えがよく、そして大きなバリューがある。ほとんど全てのことがとても得意だ。
インテリアは非常に高級で、ほとんどメルセデスのようなものだ。
出典: Chris Theodore(クライスラーやフォードの元副社長)
旗頭はBMW 3シリーズだったが、この車は最初から良い。インフィニティ G35よりもラグジュアリーで進化しているし、メルセデス・ベンツ Cクラスには欠けているエッジがあるし、アウディ A4よりも活発さに満ちている。
出典: Chris Walton(MotorTrendのロードテストエディター)
一部のメーカーが夢見るような、(インテリアの)手触りと仕上げを持っている。
出典: Michael Cantu(MotorTrendのオンラインエディター)
パワフルなエンジン
G70のエンジンとしては、2.0リッター直4ターボと、3.3リッターV6ツインターボの2つが用意されていますが、称賛されているのは後者の方です。
3.3リッターツインターボは、370psを発生します。
0-100km/h加速はRWD車で4.7秒、AWD車で4.8秒です。
AMG C43 4MATIC(4.7秒)と肩を並べています。
「基本的にはロケットシップだ。エンジンが無限の彼方へと引っ張っていってくれる」
出典: Chris Theodore(クライスラーやフォードの元副社長)
「目を覚ますには最高の方法だ。3.3リッターツインターボV6はモンスターだ。私はこのエンジンを絶対的に好む」
「この3.3リッターをブン回せば、簡単に好きになれる。BMW、アウディ、レクサス、アキュラ、そしてインフィニティは、彼らの手に本当の問題を抱えている」
出典: Ed Loh(MotorTrend編集長)
リーズナブルな価格
引用したMotorTrendのレビューの中にも、何度か「バリュー」という言葉が使われているように、G70はライバルと比較して安価です。
2.0リッターモデル同士で比較すると、G70が34,900ドルなのに対し、BMW 3シリーズ(G20)は42,250ドル、メルセデス・ベンツ C300セダン(W205)は41,400ドル、アウディ A4セダンは37,400ドル、そしてレクサス ISは38,310ドルとなっています。
ジェネシス G70の短所
G70は、もちろん完璧な車ではありません。
ここからはG70の弱点を挙げていきます。
後席の狭さ
G70の後席は、足元が明らかに狭いです。
この点はMotorTrendだけでなく、CAR AND DRIVERやedmunds.comのレビューでも指摘されています。
ラゲッジスペースの容量不足
MotorTrendはなぜか指摘してないのですが、G70最大の弱点は、ラゲッジスペース容量が297リッターしかないことです。
例えばレクサスISのラゲッジスペースは、480リッター(ハイブリッドは450リッター)もの容量があります。
Cクラス(W205)は455リッター、3シリーズ(G20)は480リッターが確保されています。
G70のラゲッジスペースは、クラス最小と言っても過言ではありません。
インフォテイメントがキア車と同じ
最近の高級車は、大画面タッチスクリーンを装備するのが常です。
しかしG70のモニタはやや小ぶりに見えます。
これはキア・スティンガーなどと同じインフォテイメントを装着しているためです。
この部分は明らかにライバルに見劣りします。
非力な2.0リッターエンジン
3.3リッターエンジンは評価されているものの、2.0リッターは車格に対してパワー不足だと指摘されています。
2.0リッター・直4ターボは256ps・353Nmを発生するエンジンですが、BMW 330i(G20, 255ps・400Nm)や、メルセデス・ベンツ C300(W205, 244ps, 370Nm)と比較すると、トルク不足は明らかです。
総評
欠点もあるG70ですが、MotorTrendの選評は、他の自動車メディアのレビュー内容とほぼ一致しているので、G70が優れたラグジュアリー・セダンであることは間違いないでしょう。
2.0リッターはともかく、3.3リッターモデルは、ドイツのライバルたちを凌ぐパフォーマンスを有しています。
それでいて安いのですから、日本のラグジュアリーブランドだけでなく、ドイツの御三家もうかうかしていられないでしょう。
ジェネシスが短期間にこれほど品質を上げることができたのは、やはり他社の優秀な人材を引き抜いたためだと思われます。
日本の自動車メーカーは、海外法人であっても長く勤めている人が出世する傾向があるようで、大物のヘッドハンティングはあまり見受けられません。
日産は引き抜きに積極的な印象がありましたが、カルロス・ゴーンの逮捕でそれもどうなるかわからなくなりました。
会社を渡り歩くような人材は、上昇志向でアグレッシブな人(いわゆるジョブ・ホッパー)が多く、組織の秩序を重んじる日本企業からは毛嫌いされるのでしょう。
しかしそういう人材が少ない集団は、保守的な選択をしがちです。
新しい血を入れていかないと、日本のラグジュアリーブランドはジェネシスにシェアを奪われてしまうと思います。
出典・参考サイト
GENESIS G70 IS THE 2019 MOTORTREND CAR OF THE YEAR – motortrend.com
Genesis G70 – caranddriver.com
2019 Genesis G70 – edmunds.com
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