EVに収益性はあるのか? マセラティ・アルフィエーリから読み解く
マセラティの新型クーペアルフィエーリに、EVバージョンが追加されるかもしれません。フィアット・クライスラー・オートモビルズのセルジオ・マルキオンネCEOが、Bloomberg Televisionに語りました。「EVは儲からない」と嘆いていた彼ですが、考えを改めたのでしょうか?
トップ画像の出典: netcarshow.com
目次
- 1.マセラティ・アルフィエーリとは?
- 2.EVは本当に儲からないのか?
- 2-1.フィアット・クライスラーの憂鬱
- 2-2.テスラの決算から見えてくること
- 2-3.EVは高嶺の花か?
マセラティ・アルフィエーリとは?
2+2レイアウトのスポーツクーペです。マセラティの創業100周年となる2014年に発表されました。しかし開発が遅れており、いまだに市販化されていません。
マセラティのスポーツクーペというとグラントゥーリズモがありますが、アルフィエーリは回頭性を重視し、ホイールベースがグラントゥーリズモより240mmも短くされています。
エンジンは当初フェラーリ製の4.7L・V8自然吸気が搭載される予定でしたが、フェラーリのV8が、フェラーリ・488GTBから3.9L・V8ターボに変更されてしまったため、市販バージョンはV6になる可能性が高いです。
アルフィエーリのV6エンジンには3つの仕様があり、それぞれ416ps、456ps、527psとなります。456psと527psのモデルは4WDになる予定です。
アルフィエーリはギブリやクアトロポルテ、レヴァンテなどとプラットフォームを共有しますが、アルミニウムの多用で軽量化し、俊敏なスポーツカーにするべく開発が進められています。仮想的はポルシェ・911だそうです。
EVは本当に儲からないのか?
セルジオ・マルキオンネCEOは、筋金入りの「EV懐疑論者」として知られています。ただしEVそのものを否定しているわけではありません。EVで利益が上がらないという事実を根拠に、EVを過剰に称賛する風潮を批判しているだけなのです。
フィアット・クライスラーの憂鬱
フィアット・クライスラーは、「500e」というEVを販売しています。
しかし500eを1台販売するごとに、$14,000もの損失が発生しているとマルキオンネCEOは語っています。
じゃあなぜEVを作っているのかというと、カリフォルニア州のZero Emission Vehicle(ZEV)規制をクリアするためだけに作っているのだそうです。だからできれば500eを買わないで欲しいと、マルキオンネCEOは消費者に呼びかけています。
テスラの決算から見えてくること
2010年6月30日、ニューヨーク証券取引所にテスラ・モーターズが上場しました。それから6年が経過しようとしていますが、テスラは一度も営業利益を計上したことがありません。
もちろん絶賛事業拡大中の同社ですから、まずは売上増を第一とし、営業利益は二の次なのでしょう。しかしEPS(一株当たり利益)に改善の気配が無いことが気にかかります。
そのような状況であるにもかかわらず、テスラ社のイーロン・マスクCEOは、比較的安価なモデル3の発表に踏み切りました。販売価格の低下による利益率の圧迫よりも、量産効果によるコスト低減の方が大きいと見込んだのでしょう。
EVは高嶺の花か?
EVをできれば作りたくないというセルジオ・マルキオンネ氏と、EVをたくさん作りたいというイーロン・マスク氏は、好対照をなしています。
それぞれが大メーカーと小規模なベンチャー企業の代表であることを考えれば、2人の主張は逆であってもおかしくはありません。フィアットクライスラーがイノベーションのジレンマに陥っているのか、それともイーロン・マスク氏が稀代の詐欺師なのか。モデル3が発売後のテスラ社の決算が、その疑問に答えてくれるはずです。
高級車ならEVでも儲かる?
フィアットクライスラーがマセラティ・アルフィエーリにEVを設定しようとしているのは、高級車ならばEVでも元を取れると考えているからでしょう。
以前マルキオンネ氏は「法外とも言える価格で販売しているテスラは別として、EVで儲けているメーカーはない」と発言しており、法外な価格──マセラティに付けられているような──ならば儲かるだろうと主張しています。
けれどその法外な価格をつけているテスラですら、利益を計上できていないのです。アルフィエーリEVの登場はマルキオンネCEOが退任後の2019年以降になりそうですが、「出来る限りEVを売らない」という彼の経営判断は、意外と上手くいきそうな気がします。
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