シボレー・BOLT EVは、1台当たり約103万円の赤字。

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海外メディアが絶賛するシボレー・BOLT EV(PHVのVOLTではない方)ですが、Bloomberg1台売るごとに$9,000(約103万円)の赤字だと報じています。

もしBOLTが1万台売れれば、赤字額は約103億円です。大企業であっても、決して無視できる金額ではありません。
にも関わらずシボレーは、なぜ赤字覚悟でBOLTを販売しているのでしょうか?

今回は赤字なのにBoltを売る理由と、同じくEVを販売するテスラの経営体質の検証、そしてドナルド・トランプ大統領誕生がEV販売に与える影響について考察します。

画像の出典: netcarshow.com


シボレーが赤字なのにEVを売る理由

実はシボレーのように損失覚悟でEVを売るメーカーは他にもあります。
500eを売るフィアットや、Soul EVを売るキアなどです。

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Kia Soul EV

画像の出典: netcarshow.com

フィアット・500eは1台売れるごとに$10,000(約114万円)の損失が発生していました。
つまりBoltよりも採算性が悪かったわけですが、それでもフィアットは売らざるを得なかったのです。

自動車メーカーに課せられた義務

アメリカで自動車を販売する場合、自動車メーカーは一定台数の無公害車(Zero Emission Vehicle, 通称ZEV)を販売しなければなりません

スバルやマツダ、ジャガー・ランドローバーのような販売台数が少ないメーカーならば、ZEV規制は緩いものになります。お目こぼしがあるわけです。

しかしシボレーやフィアット・クライスラーのような大メーカーには、厳しいZEV規制が課せられます。
大メーカーが一定台数のZEVを販売できない場合には、当局から罰金を取られるので、それならば赤字覚悟で販売した方がマシ、という判断を下すメーカーも出てくるわけです。

また、オバマ大統領がグリーンニューディール政策の一環として燃費水準の向上を法令で定めた(CAFEスタンダード)ために、自動車メーカー各社はそれを満たす必要に迫られています。

この燃費規制は、メーカーに一定の燃費水準を要求するものです。
2016年こそ15.1km/Lという水準でしたが、毎年段階的に引き上げられていくため、2025年には23.2km/Lとなります。
乗用車だけでなくライトトラック(SUV/ミニバン/ピックアップトラック)にも、この規制は適用されます。

米オバマ政権、2025年の新燃費規制を正式発表…23.2km/リットルへ | response.jp

手っ取り早く燃費規制をクリアするには、燃料を使わない自動車=EVを生産するのが一番です。
EVでもeMPGというガソリンエンジン自動車に換算した燃費が算定されますが、一定台数のEVを生産すれば、車種ラインナップ全体の燃費水準を確実に低くできます。

また、赤字でもEVを生産すれば技術やノウハウを蓄積できますし、販売台数が伸びてくれば量産効果で黒字化できるかもしれません。
座して死を待つよりも、どうせ死ぬなら前のめりという悲壮な覚悟で、大メーカーはEV販売に乗り出しているのです。

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テスラは大丈夫なのか?

テスラは小規模メーカーですし、もとよりEVのみを生産しているわけですから、ZEV規制や燃費規制とは無縁です。

しかしEVを生産していることには変わりありませんから、採算性には不安を抱えています。

テスラ直近の決算

2016年11月26日に、テスラの2016・Q3の決算が発表されました。
売上高は22.9億ドル(約2610億円)純利益2200万ドル(約25億円)と、純利益率は低いながらも、一応黒字だったようです。

ベンチャー企業は赤字でもガンガン投資するのが一般的(Amazonなんて黒字だったことの方が少ない)なので、テスラも収支トントンくらいで投資を活発化させていくつもりなのでしょう。
何にせよテスラの採算性に問題はなさそうです。

来年発売のテスラ・モデル3は、Boltとほぼ同じ価格で販売されますが、40万台もの予約を受け付けたわけですから、やはり利益を生み出せる自信があるのだと思います。
もしモデル3がBOLTと同等の採算性ならば、テスラは確実に倒産してしまいますしね。

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厳しさを増す燃費規制

アメリカのEV需要は、今後8年間拡大し続けると見られています。
その需要拡大の原動力はZEV規制と、燃費規制(CAFEスタンダード)です。
2018年からはハイブリッドカーがZEVとは認められなくなるため、日本の自動車メーカーもEV生産に乗り出さざるを得なくなります。
つまりEV需要が強制的に作り出されるのです。

窮地に立たされるビッグ3

でも燃費向上と排ガス浄化のコストを負担するのは、主に自動車メーカーです。
そのコストの総額(つまりアメリカで車を販売する全ての自動車メーカーの負担額合計)は、およそ4.6兆円に上ると推定されています。

燃費規制の強化で一番割りを食うのが、他ならぬアメリカのビッグ3です。
彼らの稼ぎ頭はピックアップトラックと大型SUVという大食い車種ですし、販売台数も多いですから、燃費規制の強化で多大なコスト負担を強いられる立場となります。

救世主? ドナルド・トランプ大統領

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画像の出典:By Ali Shaker/VOA (http://m.voanews.com/a/3430146.html) [Public domain], via Wikimedia Commons

そんなタイミングで現れたのが、「アメリカ・ファースト」を掲げるドナルド・トランプ大統領です。
シボレーやフォードは、トランプ大統領が燃費規制を以前の水準に戻してくれるのではないかと期待しています。

安倍晋三首相はトランプ大統領を「信頼できる」と言っていますが、一見して信頼できないとわかるような人物が、ビジネスマンとして成功することはないでしょう。
うかうかしていると、日本の自動車メーカーがアメリカ市場で不利な立場に立たされるかもしれません。
グローバルな自由競争の時代は終わったと見なして行動すべきです。

トランプ大統領に政策のアドバイスを行う「戦略政策フォーラム」のメンバーに、GMのCEOであるメアリー・バーラ氏が選ばれました。
「日本ではシボレーの車が走っていない」と事あるごとに日本車叩きを繰り返してきたトランプ氏ですから、アメリカにおける日本車の天下もこれまでかもしれません。
日本の自動車業界も、そろそろアメリカ頼みの収益構造から脱却すべきです。

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