フォルクスワーゲン、次世代エンジンが最後の内燃機関になると発表
フォルクスワーゲン(VW)は、次世代のガソリンおよびディーゼルエンジンが、同社が開発する最後の内燃機関になると発表しました。
内燃機関を徐々にフェードアウトさせる計画のようです。
今回はVWグループのパワートレイン戦略について見ていきます。
VWグループのパワートレイン戦略
電気自動車(EV)の導入開始
VWグループの一翼を担うポルシェは、2019年にタイカンを発売する予定です。
このタイカンが、VWグループにとって第1世代のEVとなります。
VWブランドにおいても、EVのI.D. Neoが、今後12ヶ月以内にドイツで生産を開始する上、その他のI.D.モデルも、2020年には中国で生産を開始する計画です。
VWグループは電動化や自動運転の導入を推し進めるべく、今後5年間で500億ドルもの投資を行います。
なぜEVの導入を急ぐのか?
次世代バッテリーの全固体電池が実用化されたわけでもないのに、なぜVWはEVの導入を急ぐのでしょうか?
その最大の理由は、規制当局からの圧力です。
CO2の排出削減目標は、環境技術開発の進捗状況に配慮して決定されているわけではなく、むしろ様々な政治的な要因で決められています。
ヨーロッパの主要国では、2025年から2040年までの期間に、プラグインハイブリッドを含む内燃機関自動車の販売を、禁止する方向に傾きつつあります。
それまでにEVのラインナップが揃っていないと、ビジネス自体がそもそも成り立たなくなる可能性すらあるのです。
VWは2030年までに、一部もしくは全部を電化した車のラインナップを300種類以上揃えるとしています。
これらには乗用車だけでなく、トラックやバン、オートバイ(おそらくドゥカティ)も含まれるそうです。
内燃機関はどうなる?
EVに転換すると言っても、内燃機関をいきなり無くすわけではありません。
VWが開発する最後のガソリンおよびディーゼルエンジンは、2026年に登場する予定です。
そのエンジンの改良を続けることで、2050年以降まで使い続けるのだとか。
内燃機関については、充電インフラが不十分な開発途上国向けになると考えているようです。
不安要素
保護主義の台頭
アメリカのドナルド・トランプ大統領は、自動車輸出大国を目の敵にしています。
仮に米国がドイツ製の自動車に多額の関税をかければ、EVの販売台数が、計画どおりに伸びないかもしれません。
これに対応すべく、VWはフォードと提携交渉を進めています。
アメリカ国内で生産する台数を増やすにはコストがかかりますが、フォードの生産設備を利用できれば、そのコストを大幅に削減することができます。
中国産EVの驚異
もうひとつの不安要素は、中国産のEVでしょう。
既に中国はEV大国です。
その数は世界で販売されているEVの、およそ4割に及びます。
しかも中国で販売されているEVの大半は、中国メーカーが生産している車種です。
つまり中国メーカーのEVには、かなりの競争力があるのです。
VWは早くから中国に進出し、その経済成長の恩恵を受けてきました。
しかしEVでは逆に、中国メーカーにヨーロッパ市場のシェアを取られる可能性があります。
スマホでは中国メーカーが躍進していますし、EVでもそれが起こらないとは言い切れないでしょう。
ドイツは中国経済にかなり依存しているので、トランプ大統領にように関税で対抗するのは難しいと思われます。
高級車はともかく、低価格帯のEVでは、中国メーカーにシェアを握られてしまうかもしれません。