LMDhとLMHは何が違う? トヨタやフェラーリはLMH、ポルシェやBMWはLMDhで参戦

ル・マンなど耐久レース

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BMWLMDhマシンでIMSAに復帰します。
ル・マン24時間レースWEC(世界耐久選手権)への参戦は名言していませんが、その可能性は十分にあるはずです。

FIA(世界自動車連盟)やACO(フランス西部自動車クラブ。ル・マン24時間の主催者)、そしてIMSA(国際モータースポーツ協会)は、LMH(ル・マンハイパーカー)LMDh(ル・マン・デイトナ・h)という新たなレギュレーションを導入し、自動車メーカーを惹き付けようと苦心しています。
その甲斐あって数多くの自動車メーカーが、スポーツプロトタイプの耐久レースへの復帰を決めました。

しかし、LMHとLMDhは何が違うのでしょう?
今回は両者の違いと、LMHまたはLMDhでの参戦を既に決定している自動車メーカーをまとめてみました。


LMHまたはLMDhでの参戦を決定している自動車メーカー一覧

LMH(ル・マンハイパーカー)

  • トヨタ
  • アルピーヌ(2022年まで)
  • グリッケンハウス
  • プジョー(2022年から)
  • フェラーリ(2023年から)
  • バイコレス(2023年から)

アルピーヌは2021年のLMHクラスに参戦していますが、特例措置で旧LMP1マシンを使用しています。そのためハイブリッドではありませんし、市販ロードカーも存在していません。

LMDh(ル・マン・デイトナ・h)

  • ポルシェ(2023年から)
  • アウディ(2023年から)
  • アルピーヌ(2024年から)
  • アキュラ(不明)
  • BMW(2023年から)
  • ランボルギーニ(2024年から)

「LMDh」の「h」が何を意味するのかは不明です。ハイブリッドとも、ハイパーカーとも言われています。
アウディは参戦予定でしたが、F1参戦に計画を変更したのでキャンセルされました。その代わりランボルギーニが参戦する予定です。

アルピーヌは、将来的にはLMDhで参戦すると言われています。LMHクラスに参戦するのは2022年までになりました。

上記のメーカーは参戦を公言していますが、マクラーレンやランボルギーニ、キャデラック、ヒュンダイといったブランドも、LMDhに関心を示しています。
今後さらに多くのメーカーが参戦してくるかもしれません。

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LMHとLMDhの違いについて

エアロダイナミクス

LMH・LMDhともに、ダウンフォースとドラッグ(抗力)の割合が4:1に制限されています。

ボディサイズ

最大寸法 LMH LMDh
全長(mm) 5,000 5,100
全幅(mm) 2,000
全高(mm) 1,150
ホイールベース(MM) 3,150
最低重量(kg) 1,030

最大寸法で違うのは全長くらいで、他は共通です。

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シャシー

LMHはシャシーを独自に設計できますが、LMDhはダラーラ、オレカ、リジェ、マルチマチックの4社から購入する必要があります。

LMDhのシャシーは、次世代のLMP2シャシーがベースとなっていますが、ボディワークを比較的自由にデザインできるため、自動車メーカーのデザインアイデンティティをLMDhマシンに反映させることが可能です。

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パワートレイン

内燃機関

LMH・LMDhともに、エンジン形式に関しては自由です。
しかしディーゼル燃料を使うことはできません。

ハイブリッドシステム

ハイブリッドシステムに関しては、LMHは搭載してもしなくても参戦できます。
一方、LMDhは共通のハイブリッドシステムを搭載しなければなりません。

LMHのハイブリッドシステムは、各メーカーが独自に設計できます。
一方、LMDhはウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング製のバッテリー、ボッシュ製の電気モーター、xtrac製ギアボックスの組み合わせが義務付けられています。

駆動方式

LMHのハイブリッドシステムはフロントアクスルに搭載され、一定条件下で前輪を駆動するAWD(全輪駆動)です。
LMDhが搭載する電気モーターはギアボックスと統合され、リアアクスルに搭載されています。よってエンジンもモーターも後輪を駆動するRWD(後輪駆動)です。

LMHがAWDを使える条件

LMDhとの性能均衡を実現するために、LMHがフロントモーターで前輪を駆動するには、一定の条件が定められています。
「120ルール」と呼ばれるもので、ドライ路面・スリックタイヤ装着時には、120km/h以上の速度域でしかフロントモーターを使用できないというものです。

同様に、ウェット路面・レインタイヤ装着時には140~160km/h、120km/h未満で走行時にはそれを維持したままピットに到着するまで、フロントモーターを使用できます。

最高出力

LMH・LMDhともに、エンジンとモーターを組み合わせたシステムの最高出力は500kW(680ps)に制限されています。
しかしLMHはエンジン単体で680psを発生できるのに対し、LMDhは630psに制限されています。

電気モーターの最高出力は、LMHが200kW(272ps)、LMDhが50kW(68ps)です。
回生能力に関しては、どちらのクラスも最大200kWとなっています。

パフォーマンス

LMH・LMDhともに、ル・マン24時間レースが開催されるサルト・サーキットを3分30秒程度で周回できるよう調整されます。
現在のレコードタイムが3分14秒791なので、かなり遅くなる計算です。

性能調整には、LM-GTEクラスで実績のあるアルゴリズムが採用されます。
人間ではなくコンピューターが性能調整を行うことで、特定メーカーが有利になるような政治的駆け引きを排除できます。

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コスト

LMDhのシャシーは345,000ユーロ以下に制限されています。
ハイブリッドシステムは300,000ユーロ以下です。
これらには自動車メーカーが独自にデザインするボディワークやエンジンは含まれていません。
エンジンを除くコストは1,000,000ユーロと想定されています。

LMHのコストは、LMDhよりもかなり高額になると推測されます。
ちなみにポルシェが2014~2017年にLMP1クラス参戦していたときの予算は、年間2億ドルと言われていました。

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最後まで読んでいただきありがとうございます。以下の関連記事もぜひご覧ください。

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