ホンダがイギリス・スウィンドン工場の閉鎖を計画。その理由とは?

テクノロジー・業界分析,批評

ホンダのイギリスにおける生産拠点であるスウィンドン工場が閉鎖されるようです。
Sky Newsが報じています。

イギリス・ウィルトシャー州にあるスウィンドン工場は、2008年には年産23万台もの自動車を生産していましたが、アコードやCR-V、フィットなどの生産が他の工場に移管されてからは、生産台数が年産16万台に落ち込んでいました。
現在はシビックを生産しており、約3,500人の労働者が働いています。
それでもイギリスにある自動車工場としては、4番目に大きいそうです。

なぜホンダはスウィンドン工場を閉鎖するのでしょうか?
今回は考えられる理由についてまとめてみました。


ホンダUK・スウィンドン工場閉鎖の理由

アメリカの自動車輸入関税に対する懸念

アメリカのドナルド・トランプ大統領は、ヨーロッパ製の自動車に対して、輸入関税をかけようとしています。
2018年7月に一度は棚上げとなった関税問題ですが、ここに来て再び検討され始めています。

ドナルド・トランプ
画像の出典: Michael Vadon [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

関税発動が決定された場合でも、日本やEUはしばらく免除される見通しです。
通商交渉中は関税をかけないという約束を、各国首脳がトランプ氏との会談で取り付けています。

しかしシビックの主な市場はアメリカです。
よって関税発動が決定されれば、いずれは手を打たなければならなくなります。

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ブレグジットの不確実性

イギリスがEUから離脱することは、自動車メーカーにとって大きなマイナスです。

自動車メーカーは欧州全体にサプライチェーンを構築しているため、イギリスがEUから離脱した場合には、部品をイギリスに輸入する際に、通関検査(2~3日から最大で10日ほどかかる)が必要となります。
これによる生産効率の低下は避けられません。

また、こちらでもやはり関税も問題となります。
イギリスとEU間の自動車の輸出入に関税が復活すると、イギリスに生産拠点を置いておくメリットがありません。
ポルシェはドイツからイギリスに自動車を輸出していますが、ブレグジット後の値上げを既に通告しています。

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日本とEU間で結ばれたEPA(経済連携協定)

日EU EPA署名
画像の出典: 内閣官房内閣広報室 [CC BY 4.0], via Wikimedia Commons

日EU・EPA署名により、自動車分野の関税撤廃が決定しました。
自動車に関しては、撤廃までに7年の期間が設けられたものの、自動車部品の92.1%については、即座に関税が撤廃されます。

これにより日本からの輸出によって、EU内の需要を賄うことが可能となるわけですから、イギリスに工場を置くメリットはありません。
イギリスとEU間で自動車関税が復活するなら、なおのことです。

スウィンドン工場があるノース・スウィンドン選出のジャスティン・トムリンソン英下院議員は、「欧州市場の全ての生産は、2021年に日本に集約される」とコメントしており、シビックも日本での生産に切り替わると思われます。

スウィンドン工場の雇用削減や生産計画の変更は、2021年まで無いということなので、しばらくは生産が継続されるでしょう。
とはいえ1985年に設立された歴史ある工場の閉鎖は、もはや避けられない見込みです。

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出典・参考サイト

Honda could announce Swindon factory closure tomorrow – autocar.co.uk

ホンダ、英国内の工場閉鎖を計画-EU離脱に揺れる業界に新たな打撃 – bloomberg.co.jp

トランプ氏、車関税の是非判断へ 日本メーカー警戒 – nikkei.com

ポルシェ、英でEU離脱後に値上げも 追加関税を上乗せ – bbc.com

ブレグジット交渉・合意なき離脱のリスクシナリオ – dir.co.jp

Brexit(ブレグジット)に関するよくある質問(FAQ)- pwc.com

来年3月日本EU間EPA発効 関税撤廃へ、工業製品輸出の追い風に – news.aperza.jp

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