【12/11更新】EV戦線異状あり! 自動車メーカー各社のEV戦略まとめ

テクノロジー・業界分析,批評

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自動車メーカー各社のEV投資が活発化しています。
カリフォルニア州などが推進するZEV(Zero Emission Vehicle)規制や、ディーゼル車の需要低迷などを受け、自動車メーカーの尻に火がついたのかもしれません。
最近の主だった動きをまとめてみました。

更新情報

「EV市場の将来性」ポルシェのEV戦略BMWのEV戦略の項目をそれぞれ追加しました。(2016/12/11)


EV市場の将来性

ロンドンのコンサルティング会社IHS Markitが作成した「車輪の再発明」と題する報告書によると、2010年から2016年の間に、EV市場は1000%成長したそうです。
しかしそれでも自動車市場全体からすれば、EVのシェアはわずか1%にすぎません。

ですがEVのアップトレンドは今後も継続し、2040年には、EVのシェアは自動車市場全体の15〜40%に上ると推測されています
ちなみにこれは商用車も含めての数字で、乗用車に限ると2040年のEVシェアは50%を越えるようです。

EVの成長を後押しするのは、「政府の環境規制」と「バッテリー技術の進歩」だと、報告書はまとめています。

加速するインフラ投資

フォルクスワーゲン・アウディ・グループ(VAG)、ダイムラー・ベンツ、BMW、フォードの4社は、共同で合弁会社を設立し、ヨーロッパの主要幹線道路に充電インフラを整えていくことで合意しました。

この合弁会社が設置する充電ステーションは、350kWという高出力の直流(DC)充電設備で、コネクターはCombo規格(普通充電と急速充電のコネクターが一緒になっているタイプ。コンバインド・チャージング・システム。通称ComBo)であるため、日本で普及しているCHAdeMO規格とは異なります。
まあ、地域ごとに普及しているコネクターに対応させてEVを販売するでしょうから、どの規格が欧州で普及しようと、日本の自動車メーカーにとって大した障害にはならないと思いますが。

インフラ整備計画によると、初年度(2017年)に400ヶ所、2020年までに数千ヶ所に直流高速充電ステーションを設置するとのことです。
数値だけ見るとものすごい数に思えますが、日本国内の急速充電スタンドは既に7000ヶ所近くあるので、ヨーロッパ大陸の広さからすれば、実は大した数字ではありません。

この合弁会社の真の狙いは、ヨーロッパ各国政府に充電スタンドを整備させることにあるのだと思います。
そのためには自動車メーカー各社が、自力でEVをある程度普及させ、EVユーザーから「充電スタンドが少なくて不便」だと声を上げさせる必要があるわけです。
充電スタンドが少なすぎれば「ある程度の普及」すら困難ですから、お金を出し合って充電インフラを整備することになったのでしょう。

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トヨタのEV戦略

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iQ EV(2013)

ハイブリッドカーの先駆者であり、燃料電池自動車(FCV)の旗振り役でもあるトヨタでしたが、先日EV開発の社内ベンチャーを立ち上げると発表しました。
トヨタのプレスリリースから引用します。

環境車に関して、トヨタはかねてより、適時・適地・適車の考えのもと、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(以下、FCV)、EVなど全方位で開発を進めてきた。特にFCVは、航続距離、水素充填時間などの面で、従来のガソリン車と同等に使い勝手がよく、トヨタでは「究極のエコカー」と捉え重点的に開発を進めてきた。

しかしながら、国や地域ごとにエネルギー課題やインフラ整備状況が異なる上、ゼロエミッション車普及に向けた規制強化が各国で急速に進み、多様なインフラに対応する品揃えが必要になってきている現状を踏まえ、FCVとともにゼロエミッション達成の選択肢となるEVについても、早期に商品投入が可能となる体制を整えていくことにした。

トヨタ自動車、EV開発を担う社内ベンチャーを発足

要約すると、

  • べ、別にEV開発してなかったわけじゃないからねっ!
  • (FCV用のインフラが)ないです。

という2点にまとめられます。
排ガス規制の厳格化が予想以上に早く、FCVの普及(低コスト化&インフラ整備)は間に合わないと認めた格好です。

まあ、トヨタは長年ハイブリッドカーの開発をしてきましたから、バッテリーとモーターのノウハウをしこたま持っているはずです。
よってEVも素早くキャッチアップできると思います。

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日産のEV戦略

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ノートe-POWER

リーフの投入で先陣を切った日産自動車でしたが、これまでのEV累計販売台数は23万台と、計画していた150万台からは程遠い結果に終わっています。

そこで日産がとった起死回生の一手が「ノートe-POWER」です。
日産側のコメントを引用します。

新型ノート(筆者注: e-POWERのこと)のモーターとインバーターはリーフと共通なので量産効果が期待でき、ノートのような普及モデルでEV化を進めることで、消費者にもまずはEVの走りの良さを味わってもらうことができる。

矢島和男・日産EV・HEV技術開発本部アライアンス グローバル ダイレクター

ノートe-POWERはシリーズハイブリッドですが、パワートレインはEVのリーフと共通なので、量産効果によってコスト削減が見込めるわけです。
EVの問題点は航続距離と高価格ですから、e-POWERが成功すれば、問題点の一つを改善することができます。
ミニバンのセレナにもe-POWERが設定されるとの噂ですし、日産は一気にパワートレインの電動化を進めてくるでしょう。

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ホンダのEV戦略

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クラリティ・フューエルセル

フィットEVなど実験的なモデルをリリースした実績はあるものの、次世代の環境対応車はトヨタと同じくFCVがメインで、EVは脇役という感があったホンダですが、八郷社長の体制に代わってからは、EV・PHV・FCVの3本立てで開発を進めていく方向にシフトしたようです。

方針転換の理由は、やはり排ガス規制にあります。
2018年から厳格化されるZEV規制に対応するには、コストとインフラの面からはPHVが最有力。
その後PHVとパワートレインの共有化が可能なEVへ移行し、FCVが普及するまでの時間(ホンダは2020年以降を想定)を稼ぐ作戦のようです。
トヨタはホンダのこの戦略を真似たものと思われます。

ホンダはFCVの「クラリティ・フューエルセル」をEVにコンバートした「クラリティ・エレクトリック」を2017年に発売する予定です。
しかし2020年時点でのEV・PHV・FCVの合計販売台数を5〜10万台と見積もっているので、ホンダのEV戦略は漸進的なものになるはずです。

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スバルのEV戦略

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XVハイブリッド

新プラットフォームSGP(Subaru Global Platform)を採用した新型インプレッサの販売が好調なスバルは、2018年にプラグインハイブリッド(PHV)、2019年には新開発のダウンサイジングターボ、そして2021年にはEVを市場に投入する予定です。

先日のLAオートショーで発表されたVIZIV-7は2018年登場予定ですから、もしかするとPHVがグレードのひとつとして加わるかもしれませんね。

SGPはもともとEVにも対応できるように設計されていますし、いざとなれば資本関係のあるトヨタの協力も得られるでしょうから、スバルのEV開発は比較的スムーズに進むと思います。

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フォルクスワーゲン(VW)のEV戦略

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ゴルフ7.5 GTE

排ガス不正のイメージを一刻も早く払拭したいVWは、2025年までに「EVの年間販売100万台」という目標を達成すると強気です。
しかしこのVWの目標に、経済誌forbesは疑問を呈しています。

電気自動車の販売について世界全体での目標を掲げることは、骨折り損に終わるとみられる。
VWの経営陣は、意味のない販売目標を設定することで苦しめられてきたはずなのにと思った人もいるだろう。

同社が2018年までに北米で100万を販売すると触れ込んでいたのは、いつのことだっただろうか?
それによって同社は、どのような結果を得ただろうか。
品質や企業統治の問題と切り離せない組織が目標を掲げることは、どのような結果をもたらすだろうか?

forbesjapan.com

過大な目標を達成しなければならないプレッシャーに負け、VWや三菱自動車は不正に手を染めてしまいました。
forbesは「また同じことになるんじゃないの?」と警告を発しているわけですね。

しかしVWは、すでにEVへのシフトを始めています。
30車種のEVラインナップを揃えると豪語する同社は、グループの再編に伴い30000人の従業員をリストラする予定です。
自社工場での電池生産なども考えているようで、かなり大掛かりな再編になると思われます。

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ポルシェのEV戦略

ポルシェによると、EVスポーツセダンのミッションEの販売目標は年間20,000台だそうです。
2万台というとパナメーラ並みの販売台数ですから、かなり強気な数字ですね。

ミッションEは最高出力600ps0-100km/h加速3.5秒というハイパフォーマンスを発揮しつつ、航続距離496kmを目標にしています。
全高1300mmと低く構えたプロポーションもスポーティーですし、スペックが実現できれば販売目標も達成できるかもしれません。

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メルセデス・ベンツのEV戦略

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ジェネレーションEQコンセプト

LAオートショーでEVのクロスオーバーSUV「ジェネレーションEQコンセプト」を発表したメルセデス・ベンツは、EV開発に100億ユーロ(およそ1.2兆円)もの投資を行うと発表しました。

メルセデスによると北米でのディーゼル車の需要は低迷しており、販売の停止も検討しているとのこと。
わざわざ排ガス浄化装置を追加してまで北米にSKYACTIV-Dを投入しようとしているマツダが心配になりますが、内燃機関自動車のパイオニアであるメルセデスは、すでにEVへと重心を移しています。

メルセデスは2025年までに10車種のEVを投入し、売上に占めるEVの割合を15〜25%にまで引き上げるそうです。

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BMWのEV戦略

これまでBMWは、電動パワートレインはiディヴィジョンに任せてきました。iディヴィジョンはこれまでに10万台ほどのEVを販売したようですが、大成功だったとは言えません。

そこでBMWはEVをiディヴィジョンに限定するのを止め、次期X3からは通常のBMW各モデルにEVをラインナップする戦略に切り替えるそうです。
また、MINIのEVも2019年に登場します。

さらにはハイパフォーマンスモデルを作ってきたMディヴィジョンも、iディヴィジョンの力を借りてパワートレインの電動化を推し進めていくことを明らかにしました。
基本的にはハイブリッドのようですが、EVも含まれると言われています。
つまり近い将来「MモデルのEV」が発売される可能性があるわけです。

おそらく最初にMモデルが追加されるのは「i3」や「i8」でしょう。
こちらはM社の副社長が「絶対にやる」と語っているので、ほぼ間違いないはずです。

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ジャガー・ランドローバー(JLR)のEV戦略

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I-PACEコンセプト

EVクロスオーバー・コンセプトのI-PACEを発表したジャガーは、EV開発を加速すべく、新たに10,000人の従業員を雇用するそうです。
新規雇用の従業員たちは英国ミッドランドにおいて、組み立てとバッテリー生産に従事すると見られています。

JLRは、今後5年以内に車種ラインナップの半分をEVとハイブリッドにする予定です。

行政の動きも、JLRのEVシフトを後押ししています。ミッドランドの地方政府は自動車メーカーのEV工場建設を後押しすべく、4億5000万ポンド(約635億円)のインフラ投資を行うと発表。
イギリス財務省もEVと自動運転技術に3億9000万ポンド(約550億円)を投資するとしています。

JLRは年産50万台規模の小さなメーカーですが、EVへのパラダイムシフトに乗じることができれば、飛躍的な発展も可能なはずです。
逆にEV開発で出遅れたメーカーは、一気にシェアを失うことでしょう。

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