日産ノートe-POWERの価格、燃費など概要
日産ノートe-POWERは、シリーズ・ハイブリッドという全く新しいシステムを搭載したモデルです。
エンジンは発電のみ、駆動はモーターのみと、きっちり役割分担されています。
したがって電気自動車(EV)のような加速力がありますし、燃費も普通のハイブリッドカー並みに優れているという、非常に面白い車です。
走りで選ぶならアクアやフィット・ハイブリッドよりも、ノートe-POWERを選ぶべきでしょう。
このページはノートe-POWERの価格、サイズ、燃費などの概要についてまとめてあります。
ノートe-POWERのグレードと価格
車種 | グレード | 価格(万円) |
---|---|---|
ノートe-POWER | S | 177.2 |
X | 195.9 | |
X モード・プレミア | 220.7 | |
Medalist | 224.4 | |
NISMO | 245.8 |
ライバルのアクアの価格帯が176〜210万円(G’s除く)ですから、合わせ込んできた感じですね。でもMedalistの値付けはかなり強気です。ノートは室内の広さでアクアを上回っているので、e-POWERを付ければ勝てると日産は考えているのでしょう。
日産は本気だ
ノートという車種自体の未来が危ぶまれているので、レンジエクステンダーの投入は窮余の策だと思っていたのですが、日産はノートの販売台数の半分をe-POWERに置き換えるつもりとのこと。どうやらかなり長期的な戦略に基づいているようです。
ただ、テスラがアメリカの高級大型セダン市場を制覇するなど、Battery EV(BEV)の販売は勢いづいています。よってレンジエクステンダーEVが今後販売を伸ばすのは、BEVがカバーできない低価格帯になるでしょう。
レンジエクステンダーEVの低コスト化が進めば、新興国でも売れる価格帯の車にできるはずですが、そのためには大量生産によるコストダウンが必要です。そして量産初期の高コストを吸収できるのは、先進国市場しかありません。11月から日本で販売されるノートe-POWERは、日産の今後を占う試金石になりそうです。
ノートe-POWERのスペック
エンジン | モーター | |
---|---|---|
最高出力(ps) | 79 | 109 |
最大トルク(kgf・m) | 10.5 | 25.9 |
バッテリー容量は1.47kWhしかないので、エンジンが発電した電気の一時保管場所と割り切っているのでしょう。マイナーチェンジで33kWhにバッテリー容量を拡大した、BMW i3の考え方とは対照的です。
エンジンはHR12DE、モーターはEM57です。どちらも散々使われてきたものですから、信頼性の問題はないと思われます。
モーターのトルクは「ノート NISMO S」のトルク(16.6kgf・m)を遥かに上回る25.9kgf・mです。しかもe-POWERの車重は1210kg(e-POWER X)と比較的軽量ですから、強烈な加速力が味わえます。
ノートe-POWERの実燃費
JC08モードではライバルのアクアに匹敵する数字を出してきたノートe-POWERですが、肝心要の実燃費は果たしてどのくらいなのでしょうか?
自動車評論家やモータージャーナリストが測定した実燃費や、ユーザーレビューなどの数値を総合すると、街乗り21〜25km/L、郊外・高速道路22〜24km/L程度のようです。
また、エコモードにしないと燃費が伸びないと言われています。
しかしエコモードだと加速が悪いとの声が多いので、走りの良さと燃費の両立は難しいかもしれません。
それでもエコモードを使えば、街乗りならアクアと同等の燃費を叩き出せます。
しかし「車体の大きさ」と「クルーズコントロールが無いこと」が災いし、高速道路ではアクアよりも3km/Lほど燃費が悪いようです。
ですがノートe-POWERはワンペダル・ドライブ(アクセルを離すと強烈に減速するので、アクセルペダルだけで加減速できる)が可能なので、アクアよりもドライバーの負担が少ないというメリットがあります。
街乗り主体ならばアクアに対し優位性があるでしょう。
ノートe-POWER NISMO
NISMO仕様といっても、エンジンやモーターのパワー・トルクに変更はありません。
しかし専用チューニングコンピューター(VCM)
や専用サスペンション、フロント強化スタビライザーや各部のボディ補強など、数々のファインチューンが施されているため、気持ちよく走れる仕様になっているようです。
カラーバリエーション
e-POWERにはグリル部分に青いラインが入っているため、グリルの青+エアロの赤+ボディカラーの3色構成になってしまい、少しガチャガチャした印象です。
なので赤のボディカラーが一番まとまっているように感じます。
インテリア
専用のスエード調スポーツシートや、本革/アルカンターラ巻きステアリング、アルミ製スポーツペダルなどが装着されます。
ノートe-POWERのスパイショット
日産ディーラーに輸送中の姿を捉えたスパイショットです。
C27セレナと同じく、バンパー中央上部がえぐられた形のVモーショングリルに変わっています。こちらの方が取ってつけた感が無くてかっこいいですね。
出始めの頃のVモーショングリルは違和感バリバリ(死語)で、日産デザインの迷走っぷりが如実に現れていたのですが、M/C後のエクストレイルや新型マーチなどを見ると、だいぶこなれてきた印象です。
レンジエクステンダーEVとシリーズハイブリッドの違いとは?
どちらも、モーター+バッテリーの他にエンジンも搭載しています。そしてどちらもエンジンと駆動系がつながっていません。駆動はモーターのみで行われます。
では何が両者を分けるのかと言うと──
- レンジエクステンダーEV……バッテリー容量が大きく、エンジンに依存する割合が低い。
- シリーズハイブリッド車……バッテリー容量が小さく、エンジンの発電能力に依存している。
──という違いしかありません。ノートe-POWERの場合、バッテリー容量が1.47kWhしかないので、シリーズハイブリッドに分類されます。
他社製ハイブリッドとの違い
トヨタのシリーズ・パラレル・ハイブリッドや、ホンダのパラレル・ハイブリッドは、エンジンと駆動系がつながっています。エンジンの不得意な低速域ではモーターが加速をアシストし、巡航に入ったとき、もしくは電力が切れたときにエンジンがかかる仕組みです。
あえてレンジエクステンダーやシリーズハイブリッドにする理由
テスラのようなEVだと、高価なバッテリーを大量に搭載しなければならず、コストが問題となります。
一方、トヨタやホンダのようなハイブリッドは、結局のところエンジンが主体です。カリフォルニア州などが定める「Zero Emission Vehicle(ZEV)規制」では、2018年からハイブリッド車も普通のガソリンエンジン自動車として扱われます。もはや環境に優しいクリーンな自動車と見なされなくなっているのです。
総販売台数の一定割合をZEVにしないと、罰金を取られてしまいます。なので各自動車メーカーは、EVや燃料電池車の開発に躍起なのです。
シリーズハイブリッドもハイブリッド車の一種ですから、ZEVとは見なされません。しかしエンジンからの動力伝達機構が無い分シンプルですし、バッテリー容量を増やせばレンジエクステンダーEVに変化させることも容易です。
シリーズハイブリッド車はレンジエクステンダーEVへの布石
ZEV規制においてレンジエクステンダーEVは、BEVxというカテゴリーに分類されます。そしてBEVxの販売台数は、普通のEV(Battery EV, BEVと言う)の販売台数の50%までならZEVとみなされるのです。
ZEV規制では「エンジンによる航続距離が、外部充電による航続距離以下でなければならない」との項目があるので、低価格帯にはバッテリー容量が少ないシリーズハイブリッド車(ZEVではない)を、中価格帯にはバッテリー容量が中程度のレンジエクステンダーEV(条件付きでZEV)を、そして高価格帯にはバッテリー容量が大きいEV(ZEV)をそれぞれ投入すれば、パーツの共有化でコストダウンが可能になる上、ZEVの販売台数も稼げます。
参考サイト
レンジエクステンダーEVは低炭素社会の大本命かもしれない | クルマときどきハル日和
ノートe-POWERのシステム
ノートe-POWERのモーターやエンジンがどのように機能するのか、走行状態ごとにまとめてみました。
通常発進・走行時
強電バッテリーの残量が充分な時
発電用のエンジンを停止したまま、強電バッテリーからの電力だけで静かに力強く発進できます。強電バッテリーからの電力のみでモーターを駆動し、エンジン音のない静かな発進が可能です。
アクセルの踏み始めから大きなトルクが発生するので、モータードライブならではの力強い加速を楽しめます。
強電バッテリー残量が少ない時
車速に応じて発電用エンジンを効率よく制御し、低燃費で静かな走りを実現します。エンジンで発電した電力を強電バッテリーに充電しながら走行するため、効率の良い回転数でエンジンを制御でき、結果的に燃費が改善するのです。
また、車速に応じてエンジン回転数を制御するので、エンジン音が気になりません。
急加速・登坂時
電力フル供給での走行(エンジンON)です。エンジンで発電した電力を駆動モーターへとダイレクトに供給するので、力強い走りを楽しめます。
強電バッテリーからの電力に加えて、エンジンで発電した電力も直接モーターに供給するため、モーターの出力を高めることが可能なのです。
減速・降坂時
モータードライブでの走行(エンジンOFF)です。モーターで回生発電した電力を強電バッテリーに充電するだけでなく、停車寸前まで回生を行い発電量を高める工夫もなされています。
減速時はエンジンを止め、さらに回生発電した電力を強電バッテリーに充電。停車寸前まで回生が行われるため、減速エネルギーを無駄にしません。
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