自動車メーカーの2015年決算 売上高・純利益まとめ
2016年にはまた不況になる?
アベノミクスの効果かどうかはともかくとして、日本の自動車メーカーは円安と原油安の恩恵を受け、ここ3年ほどでリーマン・ショック前の水準を上回るレベルにまで業績を回復しました。
しかし昨年末ごろから原油安のデメリットが顕著になり始め、アメリカの実体経済が勢いを失いつつあります。世界最大の自動車市場である中国も、景気の後退局面に入って久しいです。
日銀はマイナス金利を導入しましたが、現状では円高が進行中です。原油安・FRBの利上げ・新興国の通貨安など、世界経済のリスクを回避するために円が買われているとの見方が大勢を占めています。
2015年1月〜12月の自動車メーカーの業績は概ね好調でした。しかし2016年にこの好調を維持するのは難しいと思います。
目次
日本の自動車メーカー
メーカー名 | ①売上高(億円) | ①前年比(%) | ②純利益(億円) | ②前年比(%) |
---|---|---|---|---|
トヨタ | 280507 | +3.1 | 23325 | +15.2 |
ホンダ | 142969 | +15.3 | 6623 | +3.0 |
日産 | 121597 | +7.6 | 5715 | +25.9 |
マツダ | 33881 | +15.0 | 1507 | -20.5 |
スバル | 32358 | +24.3 | 4093 | +90.0 |
スズキ | 32280 | +9.8 | 1192 | +13.6 |
三菱 | 22541 | +4.2 | 963 | -16.1 |
表のキャプションにもあるように、表の数字は2015年の1月〜12月の売上高と純利益です。2015年度ではないことに注意してください。欧米の通期決算にあわせるためこのようにしました。
トヨタと日産は安定成長していますね。
ホンダは大幅に増加した売上に対し、純利益は微増にとどまっています。ホンダは利益率の低さをどうにかしたいところです。
好調を伝えられているマツダですが、純利益ベースだとマイナス成長なのが意外です。
スバルの純利益は+90%とトンデモナイ伸び方をしていますが、昨年後半以降はさすがに伸び率が鈍化しているようです。今年はインプレッサがフルモデルチェンジするので、また勢いづくかもしれませんね。
スズキはインドが好調なおかげで伸びてますが、国内軽自動車販売の不振をなんとかしないと、やがてボディブローのように効いてくると思います。
三菱は新興国が主戦場になりつつあるのに、PHEVを戦略の中心に据えるというチグハグさです。会社の規模からいっても、小型車とPHEVのどちらかに狙いを絞るべきでしょう。
ダイハツはトヨタに合併されたので省略しました。
アメリカの自動車メーカー
メーカー名 | ①売上高(億円) | ①前年比(%) | ②純利益(億円) | ②前年比(%) |
---|---|---|---|---|
GM | 175260 | -2.2 | 11155 | +246.0 |
フォード | 172040 | +3.8 | 8479 | +20.0 |
GM・フォードともに大幅に業績を伸ばしました。その要因は、やはりアメリカの新車販売が記録的な水準だったためでしょう。回復傾向のヨーロッパ市場も、両社の業績を押し上げました。フォードは4年ぶりにヨーロッパ市場が黒字化したそうです。
クライスラーはフィアットに買収されたので、イタリアの項目に記載しました。
ドイツの自動車メーカー
メーカー名 | ①売上高(億円) | ①前年比(%) | ②純利益(億円) | ②前年比(%) |
---|---|---|---|---|
ダイムラー | 194307 | +15.0 | 11616 | +23.0 |
VW・アウディグループが決算発表を延期したため、ちょっと寂しい表になっています。BMWは毎年3月頭の発表なのでそのときに追加します。
ダイムラーは絶好調ですね。表の売上高や純利益は乗用車部門だけのものではありませんが、米国BIG3を上回る売上高には驚きました。
イタリアの自動車メーカー
メーカー名 | ①売上高(億円) | ①前年比(%) | ②純利益(億円) | ②前年比(%) |
---|---|---|---|---|
FCA | 143773 | +18.1 | 2220 | +121.2 |
フェラーリ | 3710 | +3.3 | 377 | +9.4 |
フィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)の数字には、フェラーリの収益は含まれていません。
FCAもアメリカの好調な新車販売の恩恵を受けた会社です。純利益は前年比で+121%(2.2倍)の伸びを記録しました。売上高純利益率は1.5%と低いままですが、長年の苦境から脱する好機が到来したと言えるのではないでしょうか。
フェラーリは生産台数を絞っているのに、純利益は2桁近い伸びを見せています。今振り返ってみるとNYSEに上場したタイミングも最高(アメリカが好景気に沸いていた時期)でしたし、あとはF1でタイトルを奪還するだけですね。
韓国の自動車メーカー
メーカー名 | ①売上高(億円) | ①前年比(%) | ②純利益(億円) | ②前年比(%) |
---|---|---|---|---|
ヒュンダイ | 88281 | +3.0 | 6249 | -14.9 |
キア | 47540 | +5.1 | 2525 | -12.1 |
ヒュンダイ・キアともに、純利益が10%以上の減少となりました。
韓国勢の苦境の要因はウォン高です。韓国か「新興国」として扱われているときには、当局による露骨なウォン売り介入も問題視されませんでした。
しかし「先進国」として扱われている今となっては、ウォン安誘導による輸出ブーストを、国際社会が見過ごすはずがありません。
頼みの綱の中国市場も減速傾向ですし、中国国内に数多く作った工場群も、人件費の高騰でお荷物になりつつあります。韓国自動車メーカーの苦境はまだ続きそうです。
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