SUPER GT 2016 岡山決勝 レースの怖さと難しさ
レースに勝つには総合力
2016年開幕戦の決勝は、予選で速い車が勝つわけではないという、レースの鉄則を教えてくれた好レースでした。
トップ画像の出典: supergt.net
目次
序盤は淡々とした展開
GT500・GT300のどちらもが予選順位通りにスタート直後の1コーナーを通過し、SUPER GTらしからぬ静かな立ち上がりとなりました。
レース序盤、GT500はポールポジションからスタートした#37 KeePer TOM’S RC Fが、2番手以降を引き離していく展開。GT300は#25 ViVaC 86MCと#65 LEON CVSTOS AMG GTの一騎打ちです。
関口が大暴れ
早々に膠着状態となったレースをかき回してくれたのが、#19 WedsSport ADVAN RC Fの関口雄飛選手でした。同じレクサス勢の#38 ZENT CERUMO RC F、#39 DENSO KOBELCO SARD RC Fを、前が詰まった隙を突いて立て続けにオーバーテイク。観客を沸かせます。
本命はやっぱりこの車?
25周目前後から、2位#6 WAKO’S 4CR RC Fと3位#1 MOTUL AUTECH GT-Rのギャップがほとんど無くなり、テールトゥノーズ状態になりました。
#6のアンドレア・カルダレッリ選手と#1のロニー・クインタレッリ選手のイタリア人対決はクインタレッリ選手に軍配が上がり、#1は勢いそのままに#37との差を詰め始めます。
35周目終わりに#37がピットイン。ピットロードを進む#37を、コース上の#1がかわしてトップ交代となりました。
アンダーカットして#1とのギャップを広げようとした#37でしたが、ピット作業に48秒も費やしてしまい作戦失敗。しかもコースに復帰した#37のペースも上がらず、コースレコードを持つ平川亮選手の腕をもってしても1分24秒台がやっとでした。
一方の#1は23〜24秒台で周回し続け、ピットイン前の周には22秒台を叩き出し、39周目にピットインします。そしてピット作業をわずか40.8秒で終え、松田次生選手を盤石の体制で送り出します。
平川選手も22秒台にタイムを上げ応戦しますが、松田選手もピットアウト直後から同等のハイペースで周回し、#37に付け入る隙を与えませんでした。
優勝争いに関しては、この時点で勝負ありでした。ピット作業の速さ、路面温度が上昇しても機能し続けたミシュランタイヤ、そして着実に任務をこなす2人のドライバーというレースパッケージの総合力で、#1は勝利をもぎ取ったのです。
AMG GTの完成度
スタートから一騎打ちを続けてきた#25と#65は、GT500トップが34周目の時点で、先に#65がピットイン。給油と左側2本のみのタイヤ交換で、ピット作業時間を42.7秒にまで短縮します。
#25も翌周にピットインし、やはり左側2本のみタイヤ交換します。給油も含めてかかった作業時間はわずか32秒。#65より10秒も速いタイムです。
これで#25が圧倒的優位と思ったのもつかの間、ピットアウトした#25の後ろには#65の姿が。ピットストップで#25が築いた10秒のマージンは、黒澤治樹選手からバトンを受け取った#65蒲生尚弥選手の驚異的なインラップの速さのために、すでに失われていたのです。
GT500トップが38周目のアトウッドカーブで、#25は#65に首位を明け渡します。優勝候補だった#25はその後ズルズルと順位を落としていき、最終的には6位でゴールしました。
忍者のように順位をあげた#4
#4 グッドスマイル 初音ミク AMGも、総合力で順位を上げた車です。
8番手スタートだった#4は、片岡龍也選手が担当した第1スティントで、ペースの上がらない#51 ARTA BMW M6や#61 SUBARU BRZを確実にオーバーテイク。GT500トップが39周目に差し掛かったところで、前を行く#7 Studie BMW M6と同時ピットインすると、ピット作業で順位を#7の前に出ます。
交代した#4 谷口信輝選手は、タイムの上がらない#25 ViVaC 86MCを抜き去ると、そのまま2位でゴール。幸先良く開幕戦で表彰台をゲットしただけでなく、メルセデスにAMG GTの1-2フィニッシュをプレゼントしました。
日曜朝のフリー走行まではイマイチ調子の上がらなかった#4ですが、失速したライバルたちを尻目に、ペースを守って着実に順位を上げていったのは見事でした。
スバルの憂鬱
期待されていた#61 SUBARU BRZ R&D SPORTは、タイヤが厳しいのか最初のピットインまでに徐々に順位を下げてしまいました。
しかし同じダンロップタイヤを履く17位スタートの#0 GAINER TANAX GT-Rは、ピットイン直前には10位まで順位を上げていましたから、ダンロップタイヤ自体には問題は無かったと考えられます。
開幕戦ですから、セットアップが上手く行かなかったり、マシントラブルが起こるのは仕方ない面もあります。しかしイレギュラーな2度目のピットストップでなぜか給油するなど、チーム運営がチグハグだった印象は否めません。今後の巻き返しに期待したいところです。
GT500ルーキーの大暴れ
レース終盤のヒーローは#46 S Road CRAFTSPORTS GT-Rの千代勝正選手でした。本山哲選手からマシンを引き継いだ彼は、目の覚めるようなスピードを発揮。#6 WAKO’S 4CR RC Fとのギャップを瞬く間に縮めていき、45周目にその背後を捉えます。
レクサス vs 日産 絶対に負けられない戦い
両車のペースに大きな差があったため、すぐに決着がつくかと思われましたが、#6を操る大嶋和也選手は、巧みなブロックで千代選手を寄せ付けません。
50周目のヘアピンでは千代選手がインに飛び込み、リボルバーコーナーでサイドバイサイドに持ち込むものの、大嶋選手は次のパイパーコーナーでアウトからかぶせて順位をキープ。互いに一歩も譲りません。
しかし52周目のアトウッドカーブ(バックストレート前のコーナー)で、大嶋選手はGT300に詰まり万事休す。バックストレートでサイドバイサイドに持ち込んだ千代選手は、ヘアピンの飛び込みで#6をオーバーテイクしました。
岡山のキング vs GT-Rのキング
7周におよんだバトルに決着をつけた#46は、2位を走る#37 KeePer TOM’S RC Fの追撃に移ります。そして69周目にテールトゥノーズに持ち込んだ千代選手は、今度は#37の平川亮選手を相手に、インからアウトから揺さぶりをかけ始めました。
しかしハイペースで走行を続けてきた#46は、コーナーの進入ではフロントタイヤが滑り、立ち上がりではリアタイヤが滑るという状況。ですが千代選手はアクセルを緩めず、GT-Rを4輪ドリフトさせながら、#37に追いすがります。
コースレコードを持つ「岡山のキング」平川選手と、世界を舞台にGT-Rで戦いつづけてきた「GT-Rのキング」である千代選手の戦いはファイナルラップまで続きましたが、結局そのままの順位でゴールとなりました。
オーバーテイクにこそ至らなかったものの、2人のバトルは素晴らしかったです。両名は今後もSUPER GTを大いに沸かせてくれることでしょう。
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