RX-VISIONコンセプト発表! しかし肝心の新型ロータリーエンジンは発表されず
ロータリー復活への道は遠い……
東京モーターショー15】マツダ「RX-VISION」画像ギャラリー ─ 復活ロータリーへのビジョンを体現 – clicccar
ロータリーエンジン搭載の新しいマツダのスポーツカーが、ついに公開されました。
しかし肝心の新型ロータリーエンジンに関しては、その名称が「SKYACTIV-R」であること、そして現在鋭意開発中であり、今後も「飽くなき挑戦」を続けるとアナウンスされただけで、モックアップの発表すらありませんでした。
目次
- 1.永遠に発売されないかも?
- 1-1.現実的ではないサイズ
- 2.フェラーリやランボルギーニと競合するのは愚策
- 2-1.簡単には参入できない「エキゾチックカー」市場
- 2-2.ロータリーエンジンだけではストーリーが弱い
- 3.「ロータリーエンジン非搭載」の「GTカー」という選択肢は?
- 3-1.RXシリーズはいつからスーパーカーになったのか?
永遠に発売されないかも?
現在、マツダの車種ラインナップにあるスポーツカーは、ライトウェイトオープン2シーターのロードスターだけです。つまりフラッグシップとなるスポーツカーがありません。
なのでマツダのブランド戦略上、新型ロータリー・スポーツは近い将来必ず発売されるだろう……と筆者はたかをくくっていました。しかし発表されたデータを見ると、どうも雲行きが怪しくなってきたように思えてなりません。
現実的ではないサイズ
今回発表された主要諸元を見ると、RX-VISIONは、フェラーリ488GTBやジャガーF-TYPEより一回り小さいサイズであることがわかります。上記のリンクから以下に引用します。
Mazda RX-VISION 主要諸元
乗車定員 2名
全長×全幅×全高 4,389mm×1,925mm×1,160mm
ホイールベース 2,700mm
エンジン SKYACTIV-R
駆動方式 FR
タイヤ 前:245/40R20 / 後:285/35R20
リム 前:9.5J / 後:11J
RX-VISIONの低すぎる全高
フェラーリ488GTBと比較すると、全長が179mm短く、ホイールベースが50mm長く、全高は53mm低いです。RX-VISIONの全長が短いのは、ロータリーエンジンの搭載を想定しているためでしょう。エンジンルームが小さくても良いので、ホイールベースを拡大できるという理屈もわかります
しかし1160mmの全高というのは、488GTBより50mmも低く、ランボルギーニ・ウラカンすらも5mm下回るほどです。RX-VISIONより全高が低い車となると、ランボルギーニ・アヴェンタドール(全高は1136mm)くらいしか見当たりません。
フェラーリやランボルギーニと競合するのは愚策
フェラーリやランボルギーニのような「エキゾチックカー」市場は、年間2000台も売れれば大ヒットといわれる世界。だから目ん玉飛び出るような新車価格になるわけです。
RX-VISIONの全高では、利便性やコンフォート性はおそらく皆無でしょう。なので必然的に、フェラーリやランボルギーニと競合することになります。
簡単には参入できない「エキゾチックカー」市場
2013年に復活した「SRTバイパー」も、やはり利便性・コンフォート性を無視したスーパースポーツでした。しかし販売不振で3か月間も工場を操業停止するなど、苦戦を強いられています。性能面では申し分ないバイパーですが、セレブたちの心を動かすには至らなかったようです。
ロータリーエンジンだけではストーリーが弱い
スピードとカッコ良さだけを追求したスーパースポーツを売るには、「伝統」や「歴史」といった「ストーリー」が必要です。そしてそれは、一朝一夕に手に入るものではありません。
十分すぎるほどのブランドストーリーを持つポルシェですら、「使い勝手の良い快適なスポーツカー」を提案し、台数を伸ばすことに躍起になっています。そんな時代にRX-VISIONのような前衛的なデザインの車を、マツダが市場に投入するとは到底思えません。やったとしても自殺行為にしかならないでしょう。
ロータリーエンジンは問題だらけ
ロータリーエンジンの問題点に関して、今回何らかの具体的なソリューションが提示されるかと期待していたのですが、マツダ側からのアナウンスは「開発を継続する」ということだけでした。
ロータリーエンジンが抱える数々の問題に関しては、以下のエントリをご覧ください。
ロータリーエンジン、東京モーターショーで復活!? - 車知楽
「ロータリーエンジン非搭載」の「GTカー」という選択肢は?
マツダの「飽くなき挑戦」を応援したい気持ちはありますが、いつまでもフラッグシップ・スポーツカーを欠けたままにしておくのは、ブランド戦略上得策ではないでしょう。ロータリーエンジン非搭載であっても、マツダはハイパワーなスポーツカーを復活させるべきだと思います。
RXシリーズはいつからスーパーカーになったのか?
RX-VISIONには、スーパーカーやエキゾチックカーと呼ばれるような車を意識したデザインが施されています。しかしサバンナ(RX-3)はファミリアロータリークーペの後継車種でしたし、RX-7は「プアマンズポルシェ」でした。
なぜこんなスーパーカー路線に変更したのかわかりません。確かにSA22C・サバンナRX-7はスーパーカーライクなデザインでしたが、それは当時の日本がスーパーカーブームに沸いていたからで、性能面でポルシェやフェラーリに太刀打ちできるような代物ではありませんでした。
マツダがやるべきことか?
現在の市場で必要とされているのは、果たしてスーパーカーなのでしょうか? 中国経済が減速し、ヨーロッパには難民が押し寄せ、原油価格が低迷し中東のオイル成金たちが悲鳴を上げている時代に、新しいスーパーカーが必要なのでしょうか? 筆者にはそうは思えません。
アメリカでは長らく「新型スープラ待望論」が語られてきました。比較的手頃な価格で、改造するとものすごくパワーの出る本格的なスポーツカーが、今の市場に無いからです。
マツダにはGTカーを再発明してほしい
新しいRXシリーズは、かつてのFC3SのようなGTスポーツにすべきです。エンジンはロータリーでなくても構いません。ノーマルでは大したことなくても、ポテンシャルのあるエンジンさえ積まれていれば、市場は受け入れてくれます。
ブーストアップするとドカンとパワーが出ることは、ロータリーエンジンの魅力の1つでした。そしてパワーを出しやすいエンジンを作るだけならば、レシプロでも可能なのです。
かつてRX-7は「プアマンズポルシェ」と呼ばれていました。けれどそれはお金持ちでなくても買えるポルシェという、褒め言葉でもあったのです。
歴史と伝統を不要にする「革新」
消費者が「自分でも買えるかも」と、車に対する憧れを現実にする可能性を見出したときこそ、消費者の口から多くのストーリーが語られるようになります。そして可能性を示したブランドにとっては、「伝統」も「歴史」も不要になります。消費者と共に歩む「未来」が示されているからです。
かつてマツダは、オープン2シーターのライトウェイトスポーツカーを「再発明」しました。スポーツカー=パワーの時代にマツダが投入したのは、実用車のエンジンを搭載した「速くない」スポーツカーでした。しかし信頼性の高さと素直なハンドリングで、世界中に熱狂的なファンを生み出しました。
ロードスターの登場は、人々の価値観を変える「イノベーション」でした。マツダにはぜひGTカーにもイノベーションを起こしてもらいたいものです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。以下の記事もぜひご覧ください。